―――デュランダル、混乱
―――デュランダルフォートレス艦内・艦橋
「エイジの心拍数、血圧共に上昇!興奮状態と判断!正常判断の欠如可能性大!暴走の危険性あり!ど、どうしちゃったの、エイジ……!」
複数のモニタを見ながら、クレハが焦ってそう告げた。艦橋内にはけたたましくサイレンの音が鳴り響き、乗員が皆慌てた様子で何やら機器を操作したりモニタを見たりしている。
「非常に危険な状態です!直ちにPGを活動停止にしますか、艦長!」
制御士の一人が、慌てた様子で俺にそう尋ねてきた。額からじっとりとした冷や汗が見える。
俺はこの状況に少なからず慌て驚きながら、しかしモニタなどを見て、首を振った。
「い、いや。活動停止にはするな。確かに危険だが、戦力であるPGを一台失うと、イバラが危ない。あいつがいくら強くても、この数相手に一人は厳しい。この状況でエイジを連れてイバラがこちらに帰還するのも厳しいからな……」
「じゃ、じゃあどうすればいいの?スバル……!」
クレハが焦燥に駆られた様子でそう尋ねてきた。俺はそう尋ねられて焦った様子で俯く。
……何か最善の方法があるはずだ。二人を傷つけることなく、この戦闘を有利に進める方法が……。いや、最低限二人の安全を確保し、今回は失敗に終わっても構わない。引き返すか。しかし、この状況から逃げ切れるか危ういぞ……。
その時、俺の脳裏にあるものが過ぎった。俺はそれにはっとして、焦った様子ながらも口元を綻ばせる。
そうだ、あれを使えば……!
「どうしますか、艦長!」
「スバル!」
制御士やクレハが焦った様子で懇願するように俺を見つめた。俺はそれを見て、口元をキッと引き締め、マントをバサリと靡かせながら声を発した。
「今から作戦を説明する!作戦内容は……」
乗員たちは真摯に耳を傾け、俺の言葉を咀嚼していく。しかし作戦を理解していくにつれて、乗員たちの顔が少しずつ強張るのが見えた。乗員たちの間に不安が漂い始める。
「……と、作戦は以上だ。これより決行に移る!時間がないぞ、早く持ち場につけ!」
「し、しかしそれでは、我々は……っ」
不安そうに口を開いた乗員が、俺に一歩詰め寄った。俺はそんな乗員の姿を見ると、周囲の乗員たちの同じように不安そうな顔を見ながら口を開いた。
「俺は、お前たち一人一人の力を信じている。だから、お前らも俺を信じろ!」
そう言うと、乗員たちの表情が和らいだのが見えた。そして直ぐ後、キッと表情が引きしまる。俺はそれを見ると、口を結び頷いた。
「よし、作戦決行だ!各員、持ち場につけ!」
「「はい!!」」
乗員たちが力強く声を上げた。
俺はそれを見届けると、自らも移動を始めながら、モニタを一瞥した。そこには怒りと憎しみを具現化したような顔つきをしたエイジと、不安そうに焦るイバラ、そしてその二人のPGを取り囲み始める討伐隊らしきものの姿がそれぞれ見える。
「エイジ……!」
俺はそう力強く呟くと、艦橋に背を向け走り出した。