七章 見えぬ空
蒼碧を旅立った三人だったが蒼碧は蒼龍族管轄区の中でも主要街道から離れた場所にある。 目的の蒼琳院に行くためには主要街道に出なければならないがもう1つ問題もあった。
「ここって本当に辺鄙な所にあったのね。」
「鉱山で生計を立てている街だ。そうなればどうしても奥地になるのは仕方ない事だ。」
サキミヤは改めてそう感じた事を口にしたが、タク氏もそう思う所はあるものの 街の成り立ちを考えれば納得なので何も言わずにいる。
「…声が響く。喋るのならもう少し考えろ。」
「何よ、偉そ~に。…黙っとけばいいんでしょ !」
ノゾミがそう言うのには理由があるので文句を言いつつも喋るのを控える。
というのも、彼ががいる場所は蒼碧から主要街道に出るための道なのだがその道は洞窟の中。必然的に悪路で狭いし視界も悪い。それでもタク氏の気術の応用で暗がりを歩かずには済んでいたが もしも野党なんかに見つかった場合に立ち回りが厄介なので身を潜めて進んでいる訳である。
「しかし、あまり人が使っている形跡が少ない…何か他に理由があったりするのではないか ?」
「野党以外にってこと ?この辺はそんなに物騒だなんて聞いてないわよ ?」
またノゾミに怒られるのが面倒になったふたりは小声で話す。この道を教えてもらったのは蒼碧の人間だったのだが教えてくれる時に少々挙動がおかしかったので引っかかってはいたのだがあまりにも情報がないために野党以外の要素を思いつかなかったので結局は 時間が惜しかったためこの悪路を通る事にしたのである。
「人以外なら魔物だろ。」
と、小声に話していたのにしっかりとふたりの話を聞いていたノゾミがそう付け加えた。
「…また神珠絡みだったら面倒事どころか厄日よっ。」
軍に属する者ならば大なり小なり手柄を立てようとする傾向があったので神珠が集めれるのを厄介事と称した サキミヤはどちらかと言えば珍しい。
「手柄が増えるのではないか ?サキミヤとしては。」
「じょ、冗談はよして…私、一応は諜報部の所属だし戦闘向きじゃないの。」
なら何故その獲物が剣なのか ?と聞くのは踏み込み過ぎだろうとタク氏はこの話切ろうと考えていると、
「黙れ。」
一斉に三人は周囲を見渡す。先頭にいたノゾミが警戒するように先の暗闇に目を向けるが気配はない。
コツコツコツ……コツ…
「足音… ?いや、これは石が転げる時の音では…」
ないか ?と続けようとしたタク氏だったが言うより早く三人は異変を感じ2mほど後方に下がる。 砂埃ですこし視界を遮られたがすぐにそれもおさまり先ほどまでいた場所には岩が壁のように通路を塞いでいた。
「な、何この岩 ?」
「これでは先に進めないな。」
彼等の前に塞がる岩。
「…この中で黄龍に近いものはいるか ?」
「な、なんで黄龍 ?」
タク氏はこの中で黄龍族の者がいないか声をかけたがサキミヤは意味が分からず疑問を口にする。
「黄龍は天に位置し、天よりその大地を司せし者…だからだろ。」
「サキミヤ、こういうのは武芸者として基本なのだが…まぁそれは置いといてだ。 黄龍族が契約する神珠は大体地属性をベースに持っているからそれに関する事象に対して長けている事が多い。 つまりこの岩を何とかできるかもしれない…という事だ。」
実際はもう少し複雑なのだがかいつまんで話すと各部族によって得意な属性がある、という内容だったのだがサキミヤは関心している様子から知らなかった様だ。
「じゃあ…私が何とかできるってこと?」
「ん ?サキミヤは黄龍なのか?確か蒼龍軍に属していたのでは… ?」
部族と言うのは部族同士の繋がりを重んじる傾向があり軍となれば忠誠心や信頼で行動を共にする集団となれば尚更である。それに蒼龍と黄龍は同じ龍族だが その確執は遥か昔よりあると言われるほど深いとタク氏は聞いていたためサキミヤの部族は てっきり軍が属する蒼龍だと思っていたのだが…。
「それは、まぁ色々あって…それよりこの岩、何とかしなきゃ 先に行けないんでしょ?」
「話は後だ。岩を壊すのが先だ。」
ノゾミが先を急ぐ様に会話に割り込む。と言うのも洞窟の内部は基本的に空気の流れが少ない事が 多く、今通っている洞窟は出口と入り口の高低差があるため空気の流れがある方だったのだが岩に塞がれてしまってはその流れはないも同然。必然的に早々に来た道を戻るか岩を何とかする事の二択しかない。ここで長話をしている時間はないのだ。
「それもそうか…サキミヤ、では頼む。」
「頼む、って…どうすればいいの ?私、気術得意じゃないんだけど…。」
タク氏に頼まれたサキミヤだが自信なさげに答えたのを見てため息をついたノゾミが動く。
「…お前の神珠に力を借りればいいだけの事だ。」
「え ?久遠に ?…てぇ !?」
変な声をだすサキミヤの手を掴み通路を塞ぐ岩に押し付けノゾミは神珠に力を借りろと言った。 それを見てタク氏はノゾミの行動の意味を理解した。
「契約神珠作用か… !」
「サキミヤが気術使えなくとも神珠自体は力を使えるからな。」
相変わらず言葉が理解できていないサキミヤだったがノゾミが言った言葉でその意味は理解した…と言うよりも昔、兄に聞いた話を思い出した。
神珠が100%の力を持っていたとしても人がその力を利用しようとするとどうしても余計な動作や 思考が入ってしまい100%の力を出す事は不可能近いと言われている。しかし、そこに人が関与しなければ神珠は本来の力を発揮する事が出来る。
しかしそれはただの力の放出であって制御出来ない力である事が多いので頼らない方がいいとも言っていた。
「ちょ、それってあぶな… !」
思い出したサキミヤは危険な行動である事に気が付き声を上げたが既に遅く力は解放されてしまった。
「 ?! 」
しかし力を解放したと言うのに衝撃が来ない。衝撃に備えようと閉じていた目をゆっくり開ける。 サキミヤが見たのはさらさらと舞う砂。よく見れば足下にも砂で覆われていた。
「…あれ、岩が割れるんじゃなかったの ?」
「割れたと言うのは表現が違うな…砕かれたの方が正しいと思うのだが。」
いつも疑問にはすぐに答えていたタク氏も少々疑問が残っているようで推測な部分があるようだ。
「風化。…この神珠の名は時間に属する久遠。石の時間を早めただけだ。」
ノゾミがそう答えた。
「なるほど、いくら大岩といえど時間に対しての耐久は高くはない…とうことか。」
対象物に対しての関係において攻撃や温度など多様な接触の仕方があるがその中でも取り分けて別格なのが時間である。時を前にしてほとんどの物質は弱い。
「別に…前にこの神珠の名を知っていただけだ。」
「ともかく!これで進めるわけね ?」
なんだか小難しい事になりそうだったのでサキミヤは会話は終わりと言う意味を込めて 先に進める事を確認する。
「いくらか時間を取った事には変わりないのだから急ぐとしよう。」
タク氏がそう言えば三人は岩が塞いいでいた先へと進む。 洞窟を出る頃には日が傾き始めていたが運がいい事に蒼琳院まですぐの場所に 出口は繋がっていたのですぐに街に着く事ができたがその日は短時間で移動した事もありすぐに宿を取って一晩休むことにした。
サキミヤは蒼龍軍本部…街の中央にある本宮と呼ばれる場所へ向かう事になるが他の2人も詳しく蒼琳院に知らない為案内がてらついて行く事になった。
最後尾にいたタク氏が2人の事をジッと観察するように見ていたのは本人以外知らない。
一話あたりの容量を見てみると結構バラつきが・・・。




