五章 飛び立つ鳥が引く枷
「青い鳥、ですね?」
蒼琳まで後少しと言う所で呼び止められる。
「…そうだけど。」
「これを。本部からの辞令書です。」
そう渡されたのは一通の文。青い鳥とは軍に置けるサキミヤの名前。 髪が紺色で主に派遣をしているのでそう呼ばれている。
「彼の場所にて奇怪を対処されたし… ?」
「今回は貴方一人に割り当てられている任務ですが協力者がいます。その者は蒼碧 にある宿に来る様に伝えてありますので詳しい話は協力者に聞いてください。」
「…わかったわ。」
そう返答すれば文を持って来た人物・・・蒼龍の軍人はさっさとその場と立ち去る。 単独の辞令書は稀だ。サキミヤの所属部署は諜報隊に属するが平部員なのでこういったものはもっと経験を積んだ者がする事が多い。 疑問に思う所が多過ぎてなんともいえないが、近辺に部員がいなかったのかもしれない。
「蒼碧か…あんまりいい話しを聞かない街だったような…。」
蒼碧の街は鉱脈がある街で賑わっているのはいるが、信憑性ない話が多いのである。
「始祖龍伝説とか興味ないから詳しくないんだよね。」
蒼碧に着いたサキミヤは指示された街の宿に向かう。 そこにいたのは漆黒の髪に切れ長の目をした落ちついた青年だった。
「君が蒼龍軍の者か ?」
「そういうあなたは協力者ってことね。私はサキミヤ・ツァクローよ。」
「私は他の者よりタク氏と呼ばれている。」
本名を名乗らないって…この人誰かに追われてるとか?怪しいけど軍が素性の分からない者を寄越すはずないし…まぁ、訳アリってことね。
「早速で悪いけど、案内頼めるかしら ?」
「そうだな。詳しい事は歩きながらでもしよう。」
宿に大きな荷物…といってもサキミヤもタク氏もないようなのでそのまま目的の場所へと向かう事にした。
「さて、どこから話そうか ?」
「そうね…この際最初からお願いするわ。」
「わかった。始めに事件が起こったのは十年も前から起こっていたようだが 気にする程度の物ではなかったから蒼碧の人も大事だとは思ってはいなかった。調査を行った者の話しによると人ではないモノが神珠の力を使用していると言う事が判明した。 最近になってから頻繁に起こっているようでつい先月犠牲者が出てしまった。」
「…。」
「こういった事例は少ない訳ではないが…未契約の神珠が動植物に作用するのは珍しい。次元を繋ぐ方法は人が創ったものとされるのが一般論だからな。 それに移動するケースも異例だ。元々は洞穴の奥にいたが周辺の森でも目撃されている。」
「え、動くの ?」
「あぁ。といっても街道に出る事は無いそうだ。 もう一つ、この辺りは双龍の伝説が有名だろう?だから余計に不審な輩も集まっていて対処に困っている、と言うのが現状だな。」
大体の話しを聞いてやる事は分かったがいまいち正体が掴みづらい。
「とりあえず、未契約の神珠を何とかすればいいってことよね ?」
「簡約に言えばそうなるが問題はそこより…」
「まだあるの ?」
「恐らくこの噂を聞きつけた者だと思うのだが近くで不審人物が目撃されている。」
「それってかなり問題じゃ… ?」
「いや、ないな。ただ同時に相手をするのは不利だなと思ってな。」
「大した自信…頼もしいかぎりね。」
事情を聞いている間に目的の洞窟にたどり着いた。
「…で、移動しちゃうってことはどこにいるか分かんないのよね ?」
「特定のパターンで行動しているようだから動いて探すより待ち伏せていた方が良さそうだ。」
パキリ。
「タク氏、この音… !」
「…音 ?」
どこかで何かが崩れる音が聞こえるがタク氏には聞こえていない様であった。
「結界が崩れる音、この近くよ !」
「貴女は神珠と契約を ?それに感知能力を持ってたのか。」
タク氏は素直に驚き、関心した。通常の生活をする上で神珠が必要かと問われればは、必要はない。また、武道に携わる者でも神珠は誰しもが持っている訳ではない。権力者、富豪、略奪者などそれは多岐に 渡るが決して神珠を手に入れるだけではその真価を見いだす事は出来ないのである。
神珠に宿る聖獣の眷属に認められてこそ適格者であり、その力を引き出す事が出来るのだ。 他にも条件があるのだがそれを含めても神珠を扱える人間は限られてくる。 だから同じ使い手として感心していたのだが今は思考を捕われている暇がないようだ。
前方にある暗い穴…洞窟の奥から唸る声がこだまし大気を震わす。
「噂をすれば影っていうか大当たりって所かしら ?」
「そのようだな…先ほど聞いたと言う音の正体はこの辺りに張ってあった拘束の結界が 耐えきれなくなったのか。」
「…出てくるわ。」
洞窟の中は光が入らない所為か唸る声の主は影になっておりよく見えない。 徐々に声の主は日に当たる場所へ動けばその姿が日に照らされ獣が何なのかが露になる。 神珠が憑いていたのは動物…熊であった。
「まさか本当に人以外に神珠が反応するのか。」
「これ…引きはがすのってどうすればいい ?」
この話を聞いた時から抱いていた疑問をタク氏に聞いてみた。
「人の様に自我があれば引き離す事は可能だろう。しかしこういったケースでは対象を沈黙させるのが得策だと思うが ?」
「…つまり殺すのね。」
「致し方が無いだろう…対象を見つけたんだ片付けるぞ。」
「分かったわ。わたしが前に出るからフォローよろしくっ。」
そう言うとサキミヤは駆け出しその獣の懐に入り勢いのまま打ち上げる。その衝撃で後ろに飛ばされるが体勢を整える間にタク氏が気術で追い打ちをかけ、獣は衝撃で倒れ込む。
「次で仕留める。アイツの足を止めていてくれ !」
先ほど放った雷撃より大きな術を使うのかすぐに集中するタク氏。
「手短にね !」
それを受けてサキミヤは倒れ込んだ獣が再び起きる前に今度は上段から剣を叩き込む。
唸る獣にサキミヤは闘っている最中だが気を取られる。
理由も無く、ただ殺す。 何もしていないのに?不運にもとり憑かれてしまっただけ…。 一瞬の迷いがサキミヤに隙が生み、振り払われた腕に弾かれ2、3m横に飛んでしまうが再度獣に向おうと顔を上げる。しかし後方で術を発動しようとしていたタク氏の目の前まで獣が迫っていた。彼は集中しているため獣に気付かない。
「避けっ… !」
回避をタク氏に促すサキミヤだったが間に合わない!そう思った。 しかしタク氏と獣の間に割って入る影。その影に見覚えのあるサキミヤはその名を呼ぶ。
「っ…ノゾミ ?!」
「おまえは…。」
一瞬ではあったが行動を共にした彼がそこに居た。
新キャラ登場。RPGでいえば最初のボスみたいな感じです。
各話のタイトルですが意図せずとも合ったものになったのでちょっと棚からぼた餅です。最初のプロットの段階では新キャラが一人で出てくる予定でした。
(別キャラ視点~ってな感じで。)そういえばタク氏の姿をきちんと描写してないですね・・・あれ?




