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二章 永久なる者

街を照らしていた露店の明かりは消え、ほとんどの建物からは明かりを見る事は無い。人々は眠りにつく時刻になっていた。微かに残っていた薄い月も沈みただ、鈍い暗闇が広がる。その闇の中、先きほど出会った二人はある場所へと向かっている。

一人は、深い赤錆色の髪で特徴的な前髪をしていた。ノゾミと名乗った青年は二十歳前に見える。

その後ろを歩くのは同じ時年頃であろう女性は紺色の髪に飾りを付けており、耳元には金のピアスが光る。あまり飾らないシンプルな装飾と青い服に合わせたことから彼女、サキミヤの好みが伺える。

「ところで、心当たりがあるの ?」

少し歩くスピードを上げ、彼の隣へ寄る。こちらを振り返る事も無く、

「…一応は。」

「ふーん…。」

曖昧な返答。期待はしていなかったし、あの場所にいたのは理由が在るのは確かなので深く聞くのはやめる事にした。元々、私は他人には干渉しない主義だし。

と心の中で呟くサキミヤ。 それ以降会話もなく静かに歩む。倉庫として使われていた建物から街へ来るのにはさほど時間はかからなかった。

「問題はこれからね。」

街のメインストリートまでさしかかったとき会話が再開する。

「あの商人、表向きは外交商をしているがその裏で神珠(シンシュ)を密輸しているようだ。」

「え、調べてあるの ?」

彼に失礼なのだが意外な情報の調べに驚きを隠せない。その事に気を悪くしたのか進むスピードをあげ

「さっさと神珠を取りに行くぞ。」

「ちょ、と待ってよ。」

会って間もないが、あまり感情を出さない彼が少し不機嫌そうに言うとノゾミはそそくさと彼女を置いて先に行く。 普通の反応に親近感を感じたのか、微笑ましく思えて彼には悪いが心の中でクスリと密かに笑う。気がつけば彼とはかなり離れておりサキミヤは少し駆け足でその後を追った。





ノゾミが案内したのは宿屋のあった大道りから少し離れ、隠れた名店などといううたい文句が付きそうな場所にあり外交系の商店か貿易商と言った類いの店で表の方は既に明かりはなく、至って静かだった。

「ここが、あの商人の店だ。…入るぞ。」

着いて早々に踏み込もうとする彼を慌てて止めにノゾミの前に立った。

「あ、待って!いくら何でも、正面からじゃ無理よ !…せめて裏口とか、上から侵入できる箇所はないの ?」

勢いはあるものの刻限が遅い事もあり、サキミヤは小声で叫んだ。が、

「ない。」

即答で返された一言でその心配と苦労は無駄に終わる。最近、努力の割に報われていない…そんな愚痴をこぼしながら 彼女はノゾミの後に続いて正面扉から家宅侵入する事となった。

商店の扉には鍵がかかっていたが、ノゾミが少し鍵穴を調べると簡単な仕掛けらしく呆気無く開かれた。

見渡して見ると 至って普通な店で商品がショウケースに並び、カウンターが奥の方に配置されておりその近くに商談で使われているのか机と 椅子が二セットあるだけ。内装もシンプルなもので、何処が描かれているのかは分からないが所々に風景画が飾られていた。

「ここが表向(カモフラージュ)きの店なのね。」

「奥に行ける筈だ。」

率直な感想を言うサキミヤに対してノゾミは話がそれない内に本来の目的を探すように促した。特に返事もしないまま二人は各々別れて周囲をくまなく調べる。

「隠し扉とかそんな仕掛(トラップ)けでもあるのかしら… ?」

期待と好奇心に満ちた彼女の台詞に

「あっても困る。」

「…夢がない。退屈なんだからこのくらい遊んだっていいじゃない。」

「……。」

どうやら彼女にとって捜索作業は退屈や興味がない物の部類に入るらしいく、素っ気ない彼に真面目過ぎ!と思うサキミヤ。 実際問題としてこの場合無い方か好ましいという事は彼女も理解はしているが、地味な作業がかなり嫌いなのだ。さほど広くない店内を調べるのにも時間はかからなかったが、それらしいものは見つからない。

「次の部屋に期待をするか。」

そう言ってノゾミはカウンターの奥にある“関係者以外立ち入り禁止”と書かれたドアに手をかけた。

「…なんだここは。」

部屋に入るとその場所には家具や荷物といった人が生活する上で必要な道具が無く、そこは暗闇の静けさと空虚があるだけで。

「どうしたの ?何か…―――ぎゃ!」

サキミヤがノゾミの異変に気付いて駆け寄り部屋に入ると体勢を崩してしてしまい、前にいたノゾミにぶつかってしまう。

「う、…いきなり押すな…早く退け。」

サキミヤか覆いかぶさるように倒れた為、ノゾミは下敷きになった状態で少し苦しそうにしており慌てて彼から離れる。

「ご、ごんなさいっ !って今、背中を押された !!…誰か…いた ?」

「…気配はないな。」

悪徳商人に捕まる間抜けな奴だが何もない所でつまずく剣士など居ない。確証はないが直感的に感じたから間違いないだろう…この部屋も何か様子がおかしい。ノゾミはこれまでの事を整理して考えていたが答えが出てこない。

「何もなさすぎる。…お前はどう思う?」

「え?ん~…気配がない奴に、空っぽも部屋…。」

キーワードを並べて考えるが思いつかない。心当たりがない事を返事をしようと思った時、ある事を思い出す。

「一つだけ…普通なら可能性は低いけど…ある。」

「もしかすると…か ?」

「ええ、でもそうなると厄介だわ…クオン。」

誰とも分からない名を心配を含んだ声で紡ぐサキミヤは悲しいとも苦しいとも言えない表情を浮かべていた。彼女にとって今の状況は厳しい…今の私でもう一度向き合う事が出来るだろうか… ?自信が無いわけではないが不安に駆られる。

というのも、この異様な空間…虚無は未契約の神珠がある場合におこる現象だった。そして未契約になった神珠こそサキミヤが商人に盗られてしまったモノ。

彼女が剣を手に取った時神珠と契約をしたが今、破られ白紙の状態になっている。恐らくブローカー達は売り捌く為にどういった経緯でその術を得たのか不明だが契約の破棄が出来る術を知っているのだ。

「―――行く。元々、私のせいだし。」

決意をこめた言葉は彼女が前に進む事だけを考えているという事が伺えた。

「異論は無い。…〈言霊(コトダマ)〉はなんだ ?」

「〈言霊〉 ?」

慣れない単語に思わず聞き返してしまう。話の流れからおおよその見当はついていたが、ノゾミは不思議そうに尋ねてきた。

「…あれは〈言霊〉とは呼ばないのか?」

「ん~、私の部族では〈祝詞(ノリト)〉って呼んでたわよ ?神珠の獣…聖獣を呼び起こす呪文みたいなものだし、部族間で呼び方が違ってるみたいね。…信仰している聖獣が部族で違う事を考えたら必然なのかも。」

ま、神珠の契約なんて個人でする事が多いし人がいる前じゃしないもんよね~。と心の中で付け足しておく。

「さて、そろそろ行かないとヤバいかな ?」

そう言って、眼と閉じて精神を集中させると両手で〈印〉(イン)を組む。〈印〉は彼らの世界に一時的だが干渉する為の扉で、先の 〈言霊〉や〈祝詞〉は扉を開く為の鍵の役割を果たしている。 ただ、開くと言っても“彼ら”と“人”の時がほんの一瞬交わるだけであって、それ以上もそれ以下も出来ないのだが〈契約〉を交わすには十分。静かに息を整えて言葉を紡ぐ。

「〈永久(トワ)の汝に、刹那の我らと重なる時を。〉」

言い終わると同時に、ぐにゃりと周りの空間が歪み始め、一種の無重力感が襲い平衡感覚を狂わされる。そして辛うじて天と地が分かる何も無い世界に二人は立っていた。

「相変変わらず何も無い所ね。…彼の方から来てくれる筈よ。」

ここへは一度来た事があるサキミヤはこの殺風景さにもう一度ため息をつく。一方、ノゾミは多少興味があると言った感じで 周囲を観察しているようだった。確かに何も無い世界だが、ひとつだけ例外があった。

「これが本体か ?」

二人がいる場所からさほど離れていない所に二メートル程の淡く光を放つ琥珀色の岩を差しながらノゾミはサキミヤに聞いた。

「あ~…だと思うわ。…たぶん。前に〈契約〉しに来た時はそんな余裕が無かったし…。」

自信無く話す彼女にもう一つ疑問があったのかまたノゾミが口を開く。

蛍石(ホタルイシ)…お前、龍の眷属(ケンゾク)の者か ?」

「あ、うん。」

そこで会話は終わってしまい暫し静寂が流れた。


〈…貴女方か ?私の領域に介する“ヒト”。〉


空間全体から響く澄んだ声。しかし、冷たく鋭い声でもあった。サキミヤはぎこちなく彼の名を呼んだ。

「・・・クオン。」


〈私の名は久遠(クオン)。“龍”に属する者、何用か。〉


「再度…契約を申したい。」


〈……ならば証を。〉


それっきり声は聞こえなくなり、また何も無い世界に戻ってしまう。しかし、サキミヤは唯一ある蛍石の前に立ち目を閉じて 深呼吸をすると双剣を取り出すと胸の前に掲げて小さく呟く。

「わたしの証は―――〈我は、汝と共に生きる者。…(ツルギ)を証として捧げる。〉」

淡かった蛍石の光が強くなり世界自体を覆うほどに光以外のものが見えなくなる。光の中サキミヤはその紡いだ意味を確かめていた。〈劔〉、戦いに力を使うという事…これでいい。あの時も今もこの想いは変わっていないから。

再び目を開けると自分たちの世界に、商人の店の中にある部屋に戻っていた。

「じゃあな。」

戻ったとたんにノゾミはそう言うと部屋をようとするが、入り口に差し掛かった時その歩みを止める。不思議に思ったサキミヤは彼に歩み寄りながら嫌味を含みながら尋ねた。

「行くんじゃなかったの~ ?」

「…のつもりだった、が。」

いつも異常に歯切れが悪い言い方をするノゾミ。

「何 ?心変わり ?」

「ではないが、この人数は一人では厳しいかと。」

促されるまま商人の店先に目をやるとそこには数えるのも嫌になる人数が立ちはだかっていた。もちろん全てあの商人の護衛や雇われた傭兵なのだろう。

「うん。…初めて意見が合ったかも。」

素早く二人は構え、剣に手を添える。その気配を察知した同時に傭兵も構え、いつ終わるか分からない睨合い。

「薄い所は ?」

「左方。」


ノゾミの返答を合図にして二人は夜を駆けた。  

この話のイメージソングがあったり。アジカンの「旅立つ君へ」…最後の歌詞がサキミヤにぴったり^。^/

気がつけばこの話を立ち上げてから6年くらいたってたりします。放置期間長すぎワインでもあるまいに…。

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