五章 揺らぐ“証”
寝入ったサキミヤだったが少しして目を覚ませば近くでタクレイアとノゾミが休んでいるのが視界に入り少し離れた場所でフォメルが周囲に気をつかいながらも彼女の武器である長刀の手入れをしていた。 サキミヤは昨日の感情を整理しようと空を、流れる雲を眺める。
赤い髪の妖族を探す為に妖族を敵視している蒼龍族の軍に入隊したまでは良かったのだが、数年は何も変化のないまま過ごす事となった。諜報部に正式に配属されてからは任務の合間に聞き込みをしたがそれもあまりいい情報があったとは言えなかった。そして、先日ノゾミ出会う。 そこからはこれまで変化がなかった事が嘘の様にがらり変わる。
まずは、蒼龍軍の過激派のトップであったコウセン代表が殺された事。 確かに野心家で人柄のいい人物ではなかったが宗家の者達の様に地位にものを言わせた事はしなかったし、いい意味で実力主義だったから不満はないとは言えないが反発するほどでもなかった。
そのコウセン代表を殺したのが永帝のレエスと言う女性。 圧倒的な実力差に恐怖を感じたし、邪魔するなら排除するとか言ってたからこれから命を狙われるに違いない。一緒にいたのはタク氏と呼んでいた朱雀族の族長だったし。
そして、一番問題なのがノゾミ。 私が仇として探していた赤い髪の妖族である閃帝だったのだから。確かに仲間とか言う括りで私は見ていたけど彼はそうでもなかったようだけど、そこまで冷たい感じがしなかったから余計にショックが大きかった。聞いたときはパニックで斬り掛かってしまったけどあの時はフォメルという妖族の人がいてよかった。
・・・多分返り討ちに合ってたと思うけど。今は逆に落ち着いていると言うかあの時の怒りが嘘みたいに沈んでる。 結局の所そこまで復讐したいとか思ってなかったって事。確かに当時は思ってたかもしれないけど、なにか目標がないとどうしたらいいのか不安だったんたと思う。今も、それ意外の目標とか信念とか無くなってしまって自分を保つ為の建前なんだと感じる。
今更だし、当分はこのまま保留しておいても蒼龍軍に追われている状況が変わる事もないだろうし・・・ひとまず落ち着くまでは周りの流れに乗るしかないよね、そう結論を出したサキミヤは瞼を閉じそのまま休んだ。
その様子を見ていた人物がいた。正確には気配で寝たのかどうかを知っただけなのだが。
「・・・やっと、休まれましたか。気が乱れていたので不安でしたが・・・。」
その人物とは見張りをしていたフォメルだった。彼女は気配を読むのに優れており悪意であれば2〜3km離れていても気が付くくらいだ。まぁ、浮き沈みの激しいサキミヤの場合そうでなくても観察力のあるものならば分かってしまうかもしれないが。
「・・・少し、遅めに起こす事にしましょうか。」
そう言って長刀の手入れを終えたフォメルは先ほどサキミヤが見ていた雲を見上げた。




