四章 僅かな闇に射す灯火
四章:僅かな闇に射す灯火
昏帝に出した文の返事が返ってくるまで休憩する事になったがすぐに休める場所があるはずがなく、日が真上に差し掛かった頃にようやく旅人や商人が使っている簡易的な休憩所までたどり着く。位置的には朱雀族管轄区の朱夏まで馬車で半日程の所だった。
「ここで待っててもいいけど、朱夏に行くって手もあるんじゃ ?」
どうせ待っているだけのなら宿で休んだ方が疲れも取れるし、首都の朱紅に近づくので一石二鳥じゃないの、とサキミヤは考えていたが他のメンバーはそうでもないらしい。
「いや、ここで待っている方がいい。あまり人の多い場所で動かずにいると追っ手に感づかれる可能性が出てくる。」
「・・・それにあまり聞かれたくない内容の話が多いからな。」
タクレイアとノゾミがそう言えばサキミヤは反論するまでもなく納得したのか、話を変えて今のうちに疑問を解決する事にした。
「タク氏、前に妖族の族長が複数いるって言ってたよね ?」
「ん ?あぁ、その話か。・・・私は文献を読んで知っていたのだが、今思えば一般常識ではなかったな。」
「え、じゃあ知らない方が普通だったの ?!」 と、昨晩森で話の方向が違う方に行きそうだったので説明を後ですると言っていたのを思い出すタクレイアだったが思い違いをしていたようだ。
「・・・何の話ですか ?」
「帝が複数いることだ。案外、知られてないようだな。」
「他人事の様に聞こえるがノゾミは当事者だろう ?」 今更だが深紅の髪を持つ閃帝であるノゾミだったがその物言いは自覚がないのか気にしてないのか、のどちらかだが彼の場合明らかに後者だろう。傍にいるフォメルも何か言いたそうな視線をノゾミに向けっている辺り間違いない。話が進まないと感じたのかサキミヤが続きを促す。
「それで、何人族長がいるの?」
「私が読んだ文献によれば分かっているのは5人。詳しく言えば
〈閃帝〉火を操る妖魔と契約した者。その髪は燃える赤らしい。
〈永帝〉水を操る妖魔と契約した者。その髪は凍える青らしい。
〈昏帝〉金を操る妖魔と契約した者。その髪は煌めく金らしい。
〈命帝〉木を操る妖魔と契約した者。その髪は芽吹く緑らしい。
〈暗帝〉土を操る妖魔と契約した者。その髪は透通る銀らしい。
と言う様にそれぞれ契約している神朱の属性が特徴的な色を表しているようだな。」
「・・・幻術で誤摩化せば俺の様にできるが外に出るの方が稀だ。その文献、タイトルは ?」
「いや、これが表紙と背表紙の劣化が酷くてな・・・中が辛うじて読める程度で筆者も分かっていない。」
やけに食いつくノゾミが珍しく誤摩化したタクレイアだったが本の劣化が酷いのは事実だった。作者名は中に書かれていたので分かっていたがそれを今言うのはなぜか躊躇ってしまった。 今から訂正するのもおかしいので黙っている事にした。
「他にも書いてあったようだがそこまで読み込んでいなくてな・・・サキミヤは理解できたか ?」
「うん。属性ごとに1人族長がいるなんて・・・ちょっと変わってるっていうか変な感カンジ。という事は、ノゾミは火属性ってこと ?」
「まぁ、そうなるな。」
そこでタクレイアは髪色が属性の色と関係している事に気が付く。
「永帝であるレエスは氷・・・水属性になるな。・・・先の戦乱、まさかレエスとノゾミではないよな?」
「それは、違います !」
「・・・・・・。」
ノゾミが否定するかと思えばこれまで控えめに佇んでいたフォメルが声を上げた事で一同は沈黙する。 「まず、年が合わないだろう。」
「そうよねっ !確かに30代にはいってた感じだし !」
「・・・・・・。」
サキミヤがノゾミに同意する様に言うたがまた沈黙が流れる。
「・・・先代が起こした戦乱、蒼紅の乱と呼ばれているのでしたね。」
「その後俺が引継いだからな。・・・先代については俺も詳しくない。」
「・・・ ?引き継ぎとかあるのではないのか。」
フォメルが沈黙を破り戦乱を起こしたのが先代の閃帝である事を伝えたがその先代とノゾミに接点がないはずはなく、タクレイアは不思議に思う。
「俺が引継いだのは神珠が主なしの状態だった。」
「それって、死んだからって事 ?」
「私も同席していませんがそう聞いてます。」
「・・・この話はあまりしたくない、日は高いが休んだらどうだ ?」
珍しくノゾミがやんわりと話を切ってくる。話したくない事は誰でもあるだろう・・・長をやっていれば必然と隠したくなる事は多い。タクレイアも
「長く話しすぎたな、いい加減休むとしよう。」
「では、私が見張りを致します。皆さんお疲れでしょう ?」
途中から合流したフォメルが見張りを買って出たのでそれに甘えて他の三人は休む体制になる。 やはり緊張したまま過ごした所為かすぐに寝入ってしまう2人を横目に腰だけ下ろしたノゾミがフォメルに話しかける。
「・・・すぐに帰れ。」
「そんな事をすれば私が姉様に怒られてしまいます。事が終わるまで同行致します。」
フォメルの返答に眉間にしわを寄せてしばらく黙っていたが
「・・・勝手にしろ。」
とだけ言うとノゾミも休むため温かい草の上に体を預けるのをフォメルは見届けると
「はい、勝手に致します。」
と、表情を崩して答えた。
それからしばらくして見張りをしていたフォメルの元に文が届き、その内容を確認する。
「・・・外庭に呼ばれましたか・・・他部族がいるなら当然でしょうけど、どうしてわかったのでしょうか?」
そうなのだ。同行者がいるとだけしか文には書いていなかったのだがそれが他部族である確率の方が少ないのに内庭ではなく、外庭に呼ばれた・・・警戒しておいた方がいいのかもしれない。
それこそありえないが永帝の手回しがあるかもしれないと密かに思うフォメル。 少しづつかわる状況に不安を隠せなかったが不穏な風は温かな日差しと揺れる木の葉の音にかき消されてその影を見落としてしまっていた。




