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終章 明日を迎える場所へ

それまでいた建物の中央入口にある少し開けた場所にサキミヤとタク氏…もといタクレイアは息を切らして休んでいた。同時にもう1人いるはぐれてしまった人物を待っていた。先刻の強敵の攻撃を受け、危険を感じて逃げてきたのだが落ち合う場所を指定しなかったため心配していたがはぐれた人物、ノゾミは彼等たちの考えを察したのか同じ場所にやって来た。

「…どうやら全員無事のようだな。」

そう確認したのはタクレイアだったが、続けてサキミヤは不安を告げる。

「無事なのはいいけど、これからどうするの ?」

「どう…とは ?」

「タク氏は族長だからいいけど、私は帰る場所がないし…それに、命がないかもしれない…のよ ?」

聞かれたタクレイアはサキミヤのいつも強気な彼女にしては覇気のない声になっていた様子に、

「族長だからといってそんな保証はないと思うが ?…しかし、あのレエスと名乗った人物をこのまま放って置けないな。」

前者は気休めの言葉だが、後者は深刻な事態になっていると考えていた。

その名を聞きサキミヤはレエスの印象を感じたまま言った。

「統一国家…あの女性、かなりの実力者だよ。あんなに危険だと思ったのは…二度目かな。」

「確か…永帝(エイテイ)と言ったか。…妖族の長を相手にするのは分が悪るすぎる。」

自分たちが置かれた状況がいかに不利な事を確認するが、これと言った打開策が見つからない。しばしその場に沈黙が流れたが、

「とりあえず、朱雀(スザク)の管轄区に移動した方が良い。」

静寂を破ったのは他でもなくタクレイアの言葉だった。

「え、どうして朱雀に ?」

「とにかくここから離れないと追っ手がくるやもしれん。忘れたのか ?族長である私の融通が利く。そこで休息と今後どうするかを考えよう。」

サキミヤの問いかけに彼は最善と思われる行動を提案した。今の状態が長く続くのは避けたいし、何より追っ手が自分たちより 強い可能性が高いのだ。

「そうね、異論はないわ。…ノゾミは ?」

「……。」

「…ノゾミ ?」

「……。」

「ねぇ。」

「……。」

「―――ちょっと聞いてるの !?」

すぐ傍で話しかけているにも関わらず返事をしないノゾミに耐えきれず、腰に手を当て耳元に顔を近づけてサキミヤは怒鳴ると やっと気がついたかのように彼は返事を返した。

「っ !!…考え事をしていた。で、何だ ?」

「もう!ぼーっとしてる場合じゃないでしょ!この後すぐにでも朱雀に行くけど文句、ないわよね ?」

「…ああ。」

サキミヤが有無を言わせぬ形で聞いていたが、それもどうやら上の空らしい。この様子にタクレイアは珍しい事があるものだと内心 思っていた。事の重要さに再び頭が痛くなるのを感じたが現実的に考えると自分たちには余裕がない。

「最短の朱雀管轄区に入るまででもここからだと通常ならば6日もかかってしまう。すぐにでも発った方がいいだろう。」

「そんなに ?善は急げと言うし、急ぎましょ !」

そう言って二人はタクレイアが治める領地を目指すが、移動手段は街に着かないとどうにもならない為そこまで歩く事になる。急いでいるのか、いつにもなく早い足取りで前を行く二人から遅れてノゾミは考えながら歩いていた。

「『どうして、』か。どうして…だろうな。」

彼女との別れ際に問われたその言葉。その意味は分かっているが、自分の事なのにどうも分からない事が多かった。いや、自分の 事だから余計分からないのだろうか ?考えれば考える程に疑問と矛盾ばかりが増えてなかなか収拾がつかない。

「今はまだいいか ?」

悪循環する思考を振り払うかの様に言った問いかけに誰も答えてはくれない。恐らく同行するあの二人でさえ答えてはくれない だろう…まだ、何も告げてはいないのだから。

まだ日は高く足下に出来た影を見やると今は小さいが、次第に傾く日につられて膨らむように覆うかのように伸びていく。このまま 月もない闇夜に逃げてしまえば影の色は消えてくれるだろうか ? そんな事を思いながらかれは少し離れた位置から二人の後ろを見つめながら明日に進んでいく。たとえそれが自分の意志に関わらずとも。


第壱幕:火傷の劔/完。

これにて壱幕終了です。

ここまでの人物紹介をまた入れときます。

ここまではある程度書いてましたので定期的に更新してましたがこの先はまだ執筆中ですので更新がまちまちになりますので先に言っときます…。

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