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植物博士モチオののんびり遺跡フィールドワーク ~歌姫カリーナと二人の木の精霊に囲まれて、伝説の果実を育てることになりました~  作者: ゆうぎり
第3話:夜に瞬く新芽と、過保護な守護精霊たち

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過保護な守護精霊たち

 翌朝。

 窓の外で小鳥たちが「ピチチ」とさえずり、萌芽の月の訪れを知らせていました。


 モチオくんは、いつものように精霊たちに顔を覗き込まれて……ではなく、顔に降ってきた「粉」のせいで目を覚ましました。


「……ふぇ、ふぇっくしゅ! んん……なんだか、すごく眠い……」


 目をこすりながら体を起こそうとすると、頭が「ふわふわ」とします。

 まるで綿菓子の中に閉じ込められたような、妙に心地よい眠気でした。


 見上げると、天井から翠色の微細な粒子が、雪のように「しんしん」と降り注いでいます。


「おはよう、モチオ。それは私のお昼寝胞子。

 急に動くと、もっとたくさん降ってきて、一日中夢の中へ連れて行ってしまうから、気をつけて」


 枕元に立っていたのはアイベリー。

 その頭には、どこから持ってきたのか、大きな柏の葉で作った「兜」が乗っていました。


「アイベリーちゃん、どうしてそんな格好を……。あ、痛っ!?」


 ベッドから足を下ろした瞬間、奇妙な感触が走りました。


 床一面に、鮮やかな緑色のツタが網目のように張り巡らされていたのです。

 触れたスリッパは、そのツタに「ぴたっ」と吸い付いて離れません。


「モチオ、動いちゃダメーッ!

 そこから先は、あたしが作った『ぺたぺたツタ』の迷路なんだから!」


 声の主はカリンベリー。


 窓際の植木鉢の前で、小さな木の枝を槍のように構え、きりっと眉を吊り上げています。

 彼女もまた、カリンの皮で作ったような黄金色の胸当てを身につけ、すっかり「守護騎士」の構えでした。


「カリンベリーちゃん、これは一体どういうことだい?

 ぼくは、昨日植え替えたあの子の状態を確認したいんだけど……」


「ダメーッ!

 この子は昨日の夜、一生懸命月光を編んで、今はとってもデリケートな『おやすみ中』なんだから!


 モチオみたいな大きい人が『ドスドス』近づいたら、びっくりして光が割れちゃうよ!」


「ぼく、そんなにドスドス歩かないよ……」


 モチオくんは困り果てて、その場で固まってしまいました。


 普段は「大好き」を連発して甘えてくる二人が、今日はまるで別人です。


 アイベリーは静かに胞子を操り、

 モチオくんが少しでも鉢に近づこうとすれば、さらなる「眠りの霧」を降らせようとしています。


 観察小屋は、一晩のうちに外敵を阻む「緑の要塞」へと変貌していました。


 研究机の周りもツタで幾重にも囲まれ、指一本通せない状態です。


「いや、でもね。

 ぼくが葉脈の走り方を確認して、適切な栄養を与えないと、この子の健康が損なわれる可能性があるんだ。


 一グレインの狂いもないデータが必要なんだよ」


「だーめー!

 データの前に『あんしん』が必要なの!」


 カリンベリーは枝の槍をびしっと突き出しました。


「アイベリー、モチオをあっちへ追っ払って!」


「了解しました、カリンベリー。

 モチオ、ごめんなさい。三節だけ、眠っていてくださいね」


「わっ、ちょっと待っ……!」


 アイベリーが羽を「バサッ」と振ると、お昼寝胞子が濃密な雲となってモチオくんを包み込みました。


 抵抗する間もなく、モチオくんは再びベッドへ――


「ばたん」


 自分の家。

 自分の研究室。


 それなのに。


 過保護な精霊たちの鉄壁の守備の前で、植物博士は手も足も出ない「迷子」になってしまったのでした。

調査ログ:補足事項


【物理の理】


一グレイン:モチオくんが追求しようとした、解析データの極微な精度。あるいは、精霊の兜からこぼれた柏の葉の欠片ほどの重さ。


【刻の理】


一節いっせつ:お昼寝胞子が脳を揺らし、モチオくんが再び夢の淵へと沈んでいくまでの短い時間。


三節:アイベリーが宣告した、強制的な二度寝の刑期。

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