念のため
タテモノのソトには、あいかわらず、門番の老人が立っていた。
「どうなされました。なにかわすれモノですか?」
老人は、タテモノの近くに現れた、キリガクレのスガタを見つけた。
「いえ、先ほどアナタにいわれたとおりになりました」
「というと?」
「このタテモノから離れるほど、キケンが増えるってことです」
「ということは、襲われましたか?」
「ええ、さっそく。というか、正確には、襲われそうになった。ってところですがね」
「それはそれは。ヤッパリ物騒ですな、最近の世のなかは。ところで、先ほどアナタは、このタテモノから離れていったように見えましたが、いつの間に戻ってこられたので?」
「一旦、このタテモノから離れたんですが、途中で尾行者がいると気づきまして。ですから、人気のないところで、ワタシの分身と入れ替わったんです。
尾行者たちは、ワタシの分身である、ニセモノの跡を追っていったんです。そのときにワタシは、このタテモノの方角に、戻ってきたっていうワケです」
「ほう、分身ですか。ずいぶんとベンリな異能力をお持ちのようですな」
このように老人がいうと、キリガクレは、苦笑しながらいった。
「いえ、ワタシが戻ってきたことを、ご老人は、気がついておられましたよね?」
「さて、どうでしょうかね」
老人は、アイマイにわらいながら答えた。
「ご老人も、ヒトがワルイですね。ちなみにアナタは、まだしばらくのあいだ、ここで門番をする予定なのですか?コレがお聞きしたくて、実は戻ってきたんです」
「ええ、まだしばらくのあいだは、ここでこうして、門番をする予定ですよ。ソレがなにか?」
「そうですか。アナタが門番をするんだったら、そのあいだ、このタテモノは、あんぜんかなとおもいまして。
ちなみに、しばらくのあいだ。というのは、数日間でしょうか?それとも、数週間くらいはここいるんでしょうか?」
「どうでしょうかねえ。ハッキリとしたことはいえませんが、たぶん数週間くらいは、ここにこうして、立ってるハメになりそうですがね。ソレがなにか?」
「まあ念のためですよ」
「念のためとは?」
「なにかキケンがあったとき、アナタがこのタテモノにいるあいだは、にげれる場所というか、避難できる場所になるかなと」
「ははあ、ソレはすこし、ワタシのことを、買いかぶりすぎのような気がしますがね」
「どうでしょうね」
キリガクレは、アイマイにわらって答えた。
「では、ワタシは今から、依頼された件をおこうために、指定された場所に向かいますので。これにてしつれいします」
こういうと、キリガクレは、門番にたいして別れをつげて立ちさった。