読みどおり
「ウキタをつかまえたあと、ヤツの処分やら、オレのこれからのことを、君にたいして相談したのは、結果的に、大正解だった。あのときの君の読みは、ほぼあたった。たいしたもんだ。君の先を読むチカラはスゴイ」
「いえいえ、たまたまですよ。運がよかっただけです。偶然ですって」
「そもそも、オレがあの施設をしらべてたとき、君にスガタを見られた。そして、君に誘導されて、違う場所に移り、結果的に、君が計画した反乱に、協力をするカタチになったワケだから、そもそもの最初から、君のかんがえのとおりに、オレはうごいていたともいえるか」
「ソレはさすがに買いかぶりすぎですよ。あのときは、ワタシも必死でした。どうにかして逃亡をしたいけれども、ワタシたちだけでは、どうしてもチカラが足りない。
だからあのときは、ワラにもすがる思いだったんです。ホントウにバクチであり、ギャンブルだったんです」
「ソレで、君はそのギャンブルに、つまり、賭けに勝ったというワケか」
「運がよかったんです」
「賭けといえば、どうやら、あの件についても、君の賭けは、勝ちそうな気がする」
「あの件ですか」
「そう、あの件」
「キリガクレさんから見て、ショーカイのニンゲンは、あの件について、まったくアタマになさそうですか?」
「何度もショーカイのニンゲンに会ってるが、連中はもう、このウキタの件について、アレコレとかんがえたり、しらべたりする気はないだろうね。
いかんせん、オモテ沙汰にしたくない、恥ずべき過去ってことになる。さっさとわすれたいんだろう。
もっといえば、新聞が、どこかでこの件を、嗅ぎつけることがないか、そのことを気にはしてるだろうけど、あの島自体のことを、今からしらべたり、詮索するツモリはないだろうね。もうあの島には、コレ以上触れたくないんだろう。
あえていえば、ウキタの取り引き先の残党が、他にもいないかどうか、しらべることはあるかもしれんが、ソレ以上のことは、する気がないようだ」
「そうですか。だったらキリガクレさんのいうとおり、あの件は、うまくいきそうですね」
「まあ用心して、万が一をかんがえて、もうしばらくのあいだ、ショーカイのようすを見てから判断し、うごいたほうがいいかもしれん」
「そうですね。もうしこし時間が経ってから、うごくことにしましょうか」
キリガクレは、ウキタの取り引き先をつぶしたあとに、その結果の報告と、そして、島の調査の件で、事後にもらう半分の報酬と、取り引き先をつぶした件の報酬をもらうために、最初に依頼を受けた、タテモノに向かった。
「おやおや、おひさしぶりですなあ」
タテモノにはいると、門番の老人がおり、声をかけてきた。
「おひさしぶりです」
「今日は一体、なんのご用件で?」
「いえ、以前うけたシゴトがおわりまして、その報告にきました」
「そうですか、ちなみにそのシゴトは、うまくいったんですかな?」
「当初にうけた依頼とは、カナリ違ったカタチというか、内容になったんですが、まあ、なんとかなったかなと」
「そうですか、ソレはよかった」
「ソレもコレも、アナタのおかげですよ。会長」
キリガクレのコトバを聞いて、老人は、一瞬だけ真顔になったのだが、すぐさま、先ほどまでとおなじように、ニコニコしながらハナシをはじめた」
「はて、一体なんのことですかな?会長というのは、なんの会長ですか?」
「もうここまできたら、ワタシにたいしてウソをいって、いつわる理由やひつよう性は、まったくないとおもいますよ。
アナタが、カラダのソトに放出した異能を、ワタシがつかわせていただきましたが、島に呼びよせたとき、想像以上の分量に、正直いって、カナリおどろかされましたよ。
ソレに、うまく隠してるツモリでも、アナタのつよさを、カンゼンに隠すことはできません。あの島での首謀者が、ショーカイの大幹部の10人長と知ったときに、もしかしたら。とはおもったんですがね。
その首謀者と対峙したときに、たしかにつよかったんですが、ソレでも正直なところ、アナタほどのつよさは感じなかった。
ワタシとしては、首謀者と対峙したときよりも、あの島にいくまえに、アナタの近くにいたときほうが、緊張したくらいです。
ソレに、アナタのチカラを、島に呼びよせたときに、その首謀者が、なんというか、恐怖を伴った表情をしましてね。コレでピンときましたよ」
「なるほど、もはや、身分をかくす理由もひつようも性ないか。いかにも、お主の読みどおり、ワシがショーカイの会長じゃよ」
「それにしても、ショーカイのトップ自ら、このタテモノで門番をしてたのは、一体なぜですか?」
「それはのう、こんかいの依頼をうけるのが、どういうニンゲンなのか、じぶんの目で見たかったからじゃよ。中途ハンパなつよさでは、失敗する可能性がたかいのでなあ」
「なるほど、となると会長は、こんかいの一件、幹部であるウキタがからんでいると、お気づきだったと?」
「ハッキリとした証拠や確証、根拠はなかった。じゃが、その可能性があったからのお。だから、ワシがじぶんの目で、お主を見ておくひつよう性があった」
「そして、アナタにお会いしたあと、ワタシにこのシゴトがきた。ということは、いちおうワタシは、会長のおメガネに適ったと?」
「そういうことになるのお。もしもお主を不適格じゃと判断したら、こんかいの件を、お主につたえておらんよ」
「なるほど、わかりました。ソレで、ショーカイとしては、こんかいのウキタの一件は、もうコレで、カンゼンにおわったことである。と、こう判断してるんでしょうか?
いちおうワタシも、一見にかかわった身ですから。ですから、じぶんがおこなったシゴトについて、チャントすべてがおわったかどうかは、念のため、かくにんをしておきたいので」
「たしかに、お主はこの件に、深くかかわっておる。じゃから、ショーカイのニンゲンではないが、知る権利はあるか。いいじゃろう、おしえておこう。
こんかいの件は、ショーカイとしては、もうコレ以上しらべたり、かかわったりするツモリはない。
ヘタにコレ以上しらべたり、かかわったり、うごいたりして、どこかで情報が漏れるのは避けたい。
せっかくショーカイの悪事や不祥事じゃなくて、ドレイをたすけだしたという、セイギの味方のたちばになったんじゃからのお。
取り引き先の残党がほかにいないか、さがしはするだろうが、たとえおったとしても、ほとんどお主がカイメツさせた以上、大したことはないじゃろう」
「わかりました。ショーカイ員でないじぶんにもおしえてくださり、アリガトウございます。たしかに、もうこの件は、ショーカイがこれ以上、かかわるべきではないとおもいます。
この件をほじくりかえして、セイギの味方という、今のポジションをうしなうリスクやキケンを犯すよりも、コレを維持するほうが得策ですし。ワタシが会長のたちばでも、おそらく、おなじことをかんがえそうです」
「いうのお」
会長は、わらいながらいった。
「それでは、ワタシは今からヨロズに会いますので、コレで失礼したします」
こういうとキリガクレは、ヨロズのいるヘヤに向かった。
キリガクレはヨロズにたいして、島での調査の結果と、さらに、ドレイの反乱がおきて、ソレに巻きこまれてしまい、結果的に、首謀者であるウキタは処刑されたこと。さらには、ウキタの取り引き先をカイメツさせたことを、つたえたのであった。
とはいっても、すでにササキから、ジケンのあらましを聞いていたのか、おどろくようすはなかった。
そしてキリガクレは、当初の依頼ないようの条件にあった、シゴトのあとに支払われる、半分の報酬と、ウキタの取り引き先をカイメツさせた分の報酬を、もらったのであった。
「キリガクレさん、おヤクソクの報酬を、アナタの口座に振りこむ手つづきをおこないました。近いうちに振りこまれるでしょう」
「アリガタイですな。キケンをおかした甲斐があったもんだ。それではコレで、ワタシは失礼させてもらうよ」
こういうと、キリガクレは、ヨロズのいるヘヤをでた。そして、タテモノから出ようとするとき、ふたたび、会長に話しかけられた。
「お主さえよければ、このまま、ショーカイに所属せんか?お主の実力なら、すぐにでも、ウキタのいた10人長になれるかもしれんぞ。
この組織は、徹底した実力主義を取っておる。異能者としてのつよさ、実力があれば、新参者だろうが、部外者だろうが、すぐにみとめて、ソレにふさわしい地位を、あたえるようにできておる」
「そうですか、ソレはアリガタイことですね。ですがまあ、ワタシの身にあまるハナシですよ。どうもワタシは、組織のハグルマというか、一員になってうごくっていうのが、性に合わないようでして。似合わないというか、サマにならないというか。
じぶんのサマにならないことは、すべきじゃないとおもってまして。サマになることをしてたいので、今のままでいいですよ」
「そうか、ソレはざんねんじゃのお。まあ気がかわったら、いつでもいいにくるといい」
「アリガトウございます」
こういうと、キリガクレは、タテモノをでた。
(どうやらホントウに、エルヒーのいうとおりになりそうだ。ショーカイのあのようすを見ると、あのことは、まったくアタマにないと見える)
ショーカイのタテモノをでたキリガクレは、エルヒーのいるところに向かった。
「どうやら君の読みどおり、ショーカイは、あのことについては、まったくアタマにないようだ。ウキタの一件については、もうコレ以上しらべたり、かかわったり、うごくツモリはないらしい。
オレに、ウソをいってるかもとかんがえたが、今のオレにたいして、わざわざウソをつく動機や理由はない。さっさとこの件はわすれてしまって、過去のことにしたいんだろう」
「そうなんですね。まあワタシがショーカイのたちばでも、こんな不祥事のことを、いつまでも気にしたり、意識したり、かんがえたくはないですし。
せっかくセイギの味方になれたんですから、良いカタチのまま、この件を、さっさとおわらせたいとおもうのは、仕方ないというか、しぜんな感情だとおもいます」
「となると、ソロソロあの件について、うごくべきだろうか。どうおもうボス?」
「だから、そのボスっていうのは、ジョーダンでもヤメてくださいよ」
わらいながら、エルヒーは答えた。
「ジョーダンかはさておき、ソロソロうごくべきだろうか?」
「そうですね。まだ保護されたドレイたちが、これからどうされるのか、すべておわってないので。
この施設にいる、ドレイのほぼ全員が、これからの身の降りかたが、きまっただんかいで、うごくっていうのはどうでしょうか?
そうすれば、ホントウのイミで、この一件が、過去のことになるでしょうし。この件について気にしたり、意識したり、興味を持つようなニンゲンは、ほとんどいなくなるでしょうし」
「わかった、異存はない。そうしよう」
こうして、キリガクレとエルヒーは、解放されて保護された、ドレイたちの身の降りかたがきまるまで、待っていたのであった。
そして、ドレイたちの身の降りかたがキマり、いよいよこの保護施設も、閉鎖されることになった。
「ソロソロじゃないですか、キリガクレさん。ワタシとしては、うごいてもいいかとおもいますが、どうでしょう?」
「オレに異存はない。君の判断に従う。ちなみにかくにんだが、この件は、ヘイハチ、ムネシ、ユキメには、言わないってことでいいんだよね?」
「そうです。ワタシとキリガクレさんのふたりだけが、この件を知ってます。あの3人のことは信頼してますが、でも、ふくすうのニンゲンにハナシをすると、どこで情報が漏れるかわかりません。
ソレに、あの3人は、ワタシのことを慕ってくれています。ですから、ワタシとしては、あまりじぶんのハラ黒い一面を、見せたくはないというか」
「たしかに、あの3人は、君を慕ってるというか、尊敬してるというか。実態以上に美化してるところがあるかもしれん。
君のハラ黒い一面というか、計算だかくて打算的な一面を知ると、ショックをうけるかもしれんか。
ましてあの3人は、君よりも、さらに若いからなあ。もうチョット歳をとれば、また違うかもしれんが」
「ソレに、あの3人は、ヒトが良いというか、純粋な一面もつよいかなと。ですので、ウラでイロイロとかんがえて、うまくうごくっていうのは、チョット似合わないというか、ニガテというか」
「サマにならない」
「そう、そんなかんじです。ソレにたいして、ワタシとキリガクレさんだったら、こういうことも、サマになる気がするんですよ」
「なるほど、そういわれると、そういう気がしてきた」
キリガクレとエルヒーは、ハナシをしながらミナトに着いた。ふたりが乗れるだけのおおきさのフネを、一隻借りていたのだ。
フネに着いたふたりは、乗りこみ、出港した。




