商売上手
ドレイたちをはこぶフネが、島にたいして到着し、その輸送のダンドリをかんがえ、おこなっているササキのもとに、キリガクレがやってきた。
「タイヘンそうですね、ササキさん。チョットお時間よろしいですか。話しておきたいことがあるんですが」
「ハナシですか。わかりました。今のシゴトを片づけてからなら、時間をつくります」
こういうと、ササキは部下にたいして指示をだして、キリガクレを、ヘヤにあんないした。
「あらたまってハナシをしたいとは、なにかありましたか?」
「いえ、なにかあったというワケではなくて、これから先のことなんですよ」
「これから先のことですか?もしや、のこりの報酬の件でしょうか。たしかに、アナタにたいして依頼したのは、この島にある施設の調査でしたが、キケンを伴う内容ですし、戦闘になることは、コチラとしても想定の範囲内ですよ。
とはいっても、まさかカイメツさせるとまでは、予想はしてませんでしたがね。でもまあ、のこりの報酬については、おヤクソクしたとおり、お支払いしますのでごあんしんを」
「そうですか、ソレはあんしんしました。いかんせん、ワタシ自身、ここまで大キボな戦闘になって、あいてをカイメツさせることになるとまでは、さすがに、かんがえていませんでした。ハナシのながれで、こうなってしまいましてね。
調査の依頼でありながら、ここまでやってしまったものですから、のこりの報酬を、チャントもらえるかどうか、チョット不安だったんですよ。
ですが、今からワタシがおハナシをしたいのは、コレとは違う内容でして」
「というと?」
「こんかいのジケンは、ショーカイの大幹部が関わっていた。というか首謀者だった。そしてショーカイとしては、この件が、オモテにでてはつごうがワルイ。社会や世間にたいして、バレてはマズイ。コレは合ってますよね?」
「ええ、まあ」
「だからこそ、こんかいのドレイたちの反乱と、ソレによって、この犯罪組織がカイメツし、首謀者であるササキが死んでしまったのは、かえってつごうがよい。コレでよろしいですか?」
「ハッキリとは答えにくいですが、ショーカイにとって、こういう結末は、つごうがワルイものではなくて、むしろ、たすかっている。というのは、まあ事実でしょうな」
「なるほど、ではこれから先も、このような悪事や不祥事っていうものを、ショーカイのニンゲンが、まして、10人長という大幹部が関わっており、首謀者だったと、オモテ沙汰になってはこまる。
つまり、社会・世間にたいして、バレてしまってはこまる。と、こういうこと、ヨロシイでしょうか?」
「そういうことになるでしょうな」
「となると、コレを見てもらいたいんですが」
こういうと、キリガクレは、何枚かの書類を、机の上にだした。
「なんですか?この書類は」
「コレは、この施設から押収した書類なんですが、この島でつくられていた違法ヤクブツや、違法な取り引きを記したものです。
ソレで、コレによると、どうやらウキタは、ふくすうの取り引き先を持っていたのではなくて、とくていの取り引き先と、長年にわたって、ビジネスをやっていたようです」
キリガクレがだした書類を、ササキは読みだした。そして、読みおえたのであった。
「たしかに、アナタのいうとおりですな。まあウキタとしても、あまりたくさんの取り引き先とビジネスをすると、どこかで情報が漏れて、ソレが、ショーカイにたいしてつたわるのを、避けたかったんでしょうな。
長年にわたり、とくていの取り引き先とだけビジネスをしたのは、あいてがひとつなら、情報が漏れるリスクがすくないでしょうし。
たくさんのあいてとビジネスをすれば、素性のよく知らないあいてもいるでしょうからね。ひとつだけだったら、長年取り引きをすれば、あいての素性は、よくわかるでしょうし」
「そのとおりでしょうね。こういう点で、ウキタっていうヤツは、用心ぶかいというか、慎重だったんでしょう」
「まあ、そういうことでしょうね。違法なビジネスをしている以上、そういう対策というか、リスク管理をしているのは、めずらしくないとおもいますよ。ソレで、この書類が、一体どうかしましたか?」
ササキは、キリガクレが、なにをいいたのかがわからず、怪訝なカオつきをしていた。
「ササキさん。今アナタがおっしゃったことですよ」
「ワタシがいったこと?」
「ええ」
「すいません、おっしゃりたいことが、よくわからんのですが」
「じゃあハッキリといいましょうか?」
「そうしてください」
「さっきアナタは、取り引き先がたくさんあると、あいての素性がわからない。ソレにたいして、ひとつだったら、しかもそのあいてが、長年にわたる取り引き先であれば、あいての素性がわかる。こうおっしゃいましたよね?」
「ええ、いいまいたかねえ。でも、ソレがなにか?」
「コレって、あいてからしても、まったくおなじことがいえませんか?」
このキリガクレのコトバを聞いて、ササキは最初、言っているイミがわからなかったのであるが、すこしかんがえているうちに、ダンダンと、カオ色が変わってきた。
「そうか!つまり、このウキタの取り引き先のあいても、ウキタの素性を知ってる可能性がたかい。と、こういうことですね」
「そういうことになります。となると、コレはすこし、マズイながれかもしれません。今のだんかいでは、ショーカイが関わっていると、世間的にはバレていない。
でも、もしこの取り引き先の連中が、このことを、ダレかにたいして言いでもしたら。たとえば、新聞屋などにつたえでもしたら、けっこうなスクープになりませんかね」
キリガクレにこういわれて、ササキは蒼ざめてきた。
「たしかに。ウキタと長年にわたって、ずっとビジネスをしてきた、取り引き先のあいてだったら、ウキタの正体を知ってる可能性が、カナリたかい。
その上、今回ショーカイが、この施設にいたドレイを保護して、はこんでいるということは、すでに、世間にたいして知られている。
となると、このウキタの取り引き先は、この島に、ショーカイが介入したことを、知ったとかんがえるべきでしょうな。
すると、この取り引き先は、『じぶんたちのビジネスを、ショーカイがつぶした』とかんがえかねない。
まして、ウキタの正体が、ショーカイの大幹部だと知ってれば、ショーカイが、ウキタの悪事や不祥事を察知して、処分したとかんがえるかもしれない。
そうなると、じぶんたちのビジネスを、ジャマしてつぶしたショーカイにたいして、報復もかねて、この島でおこなわれていた、悪事や不祥事の詳細というものを、そして、その首謀者が、ショーカイのニンゲンであり、かつ大幹部であった。
ということを、新聞屋にたいして、リークしかねない!!この情報を、たかく売ってやろうとかんがえかねない!!」
「そうなんですよ。しかもコイツらは、この島でつくられた、違法なヤクブツ、武器などを、買っていたようなヤツラです。
となると、この島でおこなわれていた悪事や不祥事のことを、よく知ってるでしょうし。もっといえば、その証拠となるような書類だって、持っている可能性がありますよね」
「たしかに、コレはマズイぞ」
外部のフリーの異能者である、キリガクレを雇い、調査以上の事態を引きおこしながらも、ショーカイ自体が、悪事や不祥事にかかわっていたのではなくて、むしろ逆に、「ヒドイ目に遭い、くるしんでいた被害・ギセイ者である、ドレイたちを救った」という、セイギの味方のたちばを、ショーカイは、手にいれたのである。
そして、このことを、すでにショーカイは、新聞などにたいして、大々的につたえており、アピールしてしまった。
にもかかわらず、ソレが、一挙にくずれかねない事態になりそうなのだ。しかも、なまじセイギの味方のたちばになり、そう振るまったのである。
そのために、もしも、この悪事や不祥事の首謀者が、ショーカイのニンゲンであり、しかも大幹部であった。
ということが、社会・世間にたいしてバレてしまったら、それこそ、手のひらをかえされるようにして、すさまじいバッシング・批判を浴びるであろう。
「マズイ、マズイぞコレは」
キリガクレから見てもあきらかなほど、ササキは狼狽していた。目のまえに、ショーカイ員ではないニンゲンがいることなど、スッカリわすれているようである。
(予想以上のあわてぶりだ。今なら、スンナリいえるか)
「まあ落ちついてくださいよ、ササキさん。コレはあくまでも、ワルイながれになった。というケースなんですよ」
「ワルイながれになったケースって、たぶん、そうなるでしょうよ。もしワタシが、このウキタの取り引き先のあいてだったら、おそらく、そういうことをやるでしょうし」
「いやいや、ソレはあくまでも、なにも手を打たなかったら。ということですよ」
「手を打つ?」
「ええ」
「すいません、なにか良い案があるんでしたら、もったいぶらず、おしえてくれませんか?」
「良い案っていうほどじゃないんですがね。コチラには、ウキタたちがのこした書類があるんですよ。
つまり、取り引き先のヤツラが、この島にかんする情報を持っているのとおなじように、コチラがわも、ヤツラにかんする情報を持っているんです。
ということは、この情報を基にして、あいてをしらべあげて、居場所をとくていし次第、すばやくつぶしてしまえばどおでしょうか?
ウキタほんにんは、もう死んでますが、生きのこった看守のなんにんかは、捕虜にしてます。書類だけじゃなくて、コイツらからも、取り引き先の情報というものを、聞きだせるかもしれませんよ」
「なるほど、キリガクレさん、アナタのおっしゃるとおりですな。まだコチラがわも、手の打ちようがある」
「そういうことです。でも、すこし気になる点がありまして」
「なんですか、もったいぶらず、はやくおしえてください。今こうして、アナタとハナシをしている時間だって、ワタシには惜しいんですよ」
「いえね、ウキタたちの取り引き先のあいてを、ショーカイが、オモテ立ってつぶすのは、チョットどうかとおもうんですよ。
なんせショーカイは、あくまでも、ドレイたちを救ったセイギの味方であり、この島の施設を、自身がたたきつぶしたワケではない。
ソレはあくまでも、ドレイたちがおこなったことなんです。そのショーカイが、なんでわざわざ、取り引き先をつぶすのか、その理由付けというか、動機の面が、チョット弱いかなと。
こういう犯罪行為をおこなう、犯罪勢力・組織をつぶすのは、あくまでも、オモテ向きとしては、まず第一はケイサツですよね。
ショーカイとしては、異能者が犯罪者であり、ケイサツが対処・対応ができないばあいに、うごくたちばのはずです。つまり、ケイサツから依頼があったときに、はじめてうごく。
にもかかわらず、ここでケイサツを差しおいて、いきなりショーカイがうごくっていうのは、世間的にかんがえて、チョット不自然というか、違和感をおぼえませんか」
キリガクレにこういわれて、ササキはすこしのあいだ、かんがえこんでしまった。
「たしかに、おっしゃるとおりですね。島での暴動を聞きつけて、たまたま、ショーカイのニンゲンが、その島の近くにおり、ここでのジケンを知った。
そして、理不尽な目に遭っていたドレイを、ショーカイがたすけだした。と、ここまではいいとしても、この島の犯罪者の取り引き先を、なぜショーカイが、オモテ立ってつぶすのか。といわれると、たしかにチョット、理由付けや動機の面で、弱いかもしれせん」
「ですよね」
「でも、じゃあ一体どうしろっていうんですか」
「いや、今ササキさんが、答えをおっしゃいましたよ」
「はい?どういうことですか?」
「ですから、大々的に、オモテ立ってショーカイがつぶすのはマズイ。っていうことですよ。コレが答えなんじゃないですか?」
キリガクレのいっていることを、ササキは、すぐに理解することができなかった。だがしかし、ダンダンと、アタマの整理が追いついてきたようである。
「まさか、ウラでバレないように、コッソリつぶせばいい。と、おっしゃりたいんですか?」
「そうですよ」
「こんかい、アナタに依頼をしたように?」
「そのとおり」
「つまり、ウキタたちの取り引き先をつぶすことを、アナタに依頼しろと?」
「そういうことです。『こんかいの件のことを、くわしく知っており、かつ、ショーカイのウラ事情もわかっている、ショーカイに属していないニンゲン』となると、おそらく、ワタシしかいないとおもいますが、いかがでしょうか?」
(コイツ、ここまで先を読んで、解放したドレイの保護や輸送と、すぐに新聞を呼んでアピールしろ。と、オレにいいやがったのか)
「いやはや、商売が上手ですな、キリガクレさん」
ササキは、すこし、ヒニクをこめていった。
「いえいえ、ハナシのながれで、こうなっただけですよ。ソレで、どうですか?」
「さすがに、ワタシひとりの独断で即決するのは、すこしマズイので、上にたいして、そうだんしてみます」
「わかりました。ですが、はやいほうがよいですよ。時間が経つほど、あいてが新聞に情報を売って、リークするキケン性やリスクは、たかくなるでしょうし」
「わかってますって!」
こういうと、ササキはいそいで通信機のところにいき、そうだんをはじめた。そして、上司から許可を得たのであった。
「キリガクレさん、アナタのご要望どおり、今一度、アナタを雇うことにキマりました」
「アリガトウございます。ではさっそく、取り引き先にかんする書類を、すべておわたししますね。この書類を基にして、取り引き先のアジトや拠点を、しらべてもらえませんか?
こういうことにかんしては、たくさんのニンゲンが所属しており、イロイロなジャンルにツテがあり、情報収集能力のたかい、ショーカイ組織のほうが、ワタシ個人でうごいてしらべるよりも、はるかに正確で、はやいでしょうからね。
これだけイロイロな書類があれば、跡を辿っていくのは、ショーカイほどのキボの組織だったら、それほどむずかしくはないでしょう。
違法なヤクブツや物品をはこび、ソレを保管するとなると、それなりのキボの輸送や保管の設備やら、ソレにかかわるニンゲンがいるでしょうから。すべてをオモテにださず、隠れておこなえるとはおもえません」
「まあ、そうでしょうな」
こうしてキリガクレは、取り引き先にかんする書類をすべて、ササキにわたしたのであった。ソレをササキは、いそいでショーカイ本部に送った。




