勝算
ウキタを引きずりながら、キリガクレは、エルヒーたちと合流した。
「キリガクレさん、勝ったんですね?」
「なんとかね。しかしコイツは、さいごのさいごまで、あきらめようとしなかった。ワルイ意味でしぶといというか、なんというか。
ところで、こうして敵のボスをつかまえたワケだが、のこった連中を、どうするかだ。エルヒー、ヘイハチ、ムネシ、3人とも、まだカンゼンに、体力は回復してないとおもうが、うごけそうかい?」
「オレとムネシは、正直まだダメですが。エルヒーは、もう回復してるとおもいます。だよなエルヒー」
「アナタたちよりは、うごけるようになったかしら。ユキメのおかげで、カナリ、カラダがラクになったわ」
たしかに、キリガクレの見たところ、ヘイハチとムネシにくらべて、エルヒーは、フツウに立ちあがり、テキパキとしている。
エルヒーと歩きながら、彼女のようすを見たのだが、たしかに、体力は回復しているようすであった。
(信じられん、もう回復したのか。いくらユキメのチカラで体力を上げたとはいっても、尋常じゃない回復力だ)
「すさまじいな」
「なにかいいました?」
「いや、なんでもない。それよりも、ヘイハチとムネシがあまりうごけない以上、オレとエルヒーのふたりで、のこった敵を掃討することにする。
とはいっても、のこったヤツラは、ほとんどいないとおもうがね。さっきヤマのなかで、このウキタは、じぶんの部下ごと、オレの分身をつぶした。
ソレに、ヤマのソトにでたときも、コイツは、部下がいるのもおかまいなしに、君たちに、攻撃をしかけてた。
そのとき、巻きぞえになったヤツラもいるから、五体満足で無事なヤツは、ほとんどいないとおもう。
まあ、もしそんなヤツがいたとしても、すべてのフネをこわしたワケだから、島からにげることはできんさ」
「キリガクレさんが、すべてのフネをこわしたと聞いたときは、島からにげだす方法がなくなるし、なんでそんなことをするのかと、正直なところ、カナリ疑いましたけど。でも、その狙いやもくてきは、ヤツラをにがさないためだったんですね?」
「そういうことになる」
このコトバを聞くと、エルヒーは、キリガクレのようすを、ジッと見つめてきた。
「どうした?オレのカオに、なにかついてるかな?」
「キリガクレさん、差しつかえなければおしえてほしいんですが、フネをすべてこわして、『ヤツラが、この島から逃げださないようにした』っていうことは、最初から、勝算があったっていうことですか?そうでないと、ツジツマが合わないんですが」
エルヒーからの問いかけにたいして、キリガクレはすこしのあいだ、立ちどまってかんがえていたのだが、決心がついたのであろうか、話しはじめた。
「君にたいしては、ヘタにウソをいうべきじゃないか。オレがこの島にやってくるまえ、このシゴトは、ヤバイ内容だと判断してね。リスクやキケン性が、カナリたかいとおもった。
島の調査をすることが、オレのシゴトだったんだが、どうもヘタをすると、ソレだけでは済みそうにない。
もっといえば、戦闘になる可能性も、カナリ高かった。ソレに、おそらくこの件は、キケンな犯罪者が関わるだろうと、そうかんがえた。
となると、可能なかぎり、万全な態勢を用意するひつようがあった。つまり、たたかいになったばあいも、勝つことができるようにすることと、キケンな犯罪者をあいてにする以上、島からにげだすニンゲンがいたら、後で復讐されるキケン性がある。だから、ひとりも逃げださないよう、フネをこわしたんだよ」
「なるほど、シゴトがおわった後のことまでかんがえて、じぶんの身のあんぜんを図るために、フネをこわしたと」
「そういうことになる」
「ということは、つまり最初から、戦闘になったばあいでも、勝ち目があるとかんがえていたんですね?
いいかたをかえると、勝てるだけの準備をしていたと。勝てない可能性があるんだったら、こんな発想にはならないはずですし」
「ホントウに君は、アタマがよくまわるな。そのとおりだ」
「そして、勝ち目があるとかんがえたのは、さっきソラから降ってきた、あの巨大なチカラがあるからですか?
たしかに、あれだけのチカラをつかえるんだったら、よほどの強敵であっても、勝てるんじゃないかって、ワタシでもおもいます。
ソレで、さっきのあのチカラは、一体なんなんですか?すさまじいプレッシャーを感じたんですが」
「君の推測どおり、あのチカラを確保することができたから、オレはこのシゴトにたいして、勝算を持ってあたることができた。
あのチカラは、オレ自身のチカラじゃない。オレの依頼主の組織の一員で、あのチカラを持っているニンゲンがいてね、そのニンゲンから借りたモノだよ」
「借りた、ですか」
「そう、借りた」
「ちなみに、その借りたあいてっていうのは、どういうニンゲンなんですか?」
「実はオレも、くわしい素性は知らない。オレ自身、その依頼主の組織にたいして、所属をしてるっていうワケじゃないし、フダンからあまり、接点がないからね」
「そうですか。まあワタシとしても、そのあいてのことを知ったところで、なにがどうなる。というワケじゃないですし」
こうしているあいだに、ふたりは、施設のあるヤマについた。ウキタによって、こわされそうになったものの、キリガクレのチカラで、ヤマはくずれずに、カタチを保っていた。
そして、ヤマのなかにはいり、ふたりは、のこったドレイたちを解放し、看守たちにたいして、降伏を勧めた。
なかには、あいかわらず、たたかう意思を持った看守もいたのだが、ふたりによって、あっけなくたおされた。
こうして、残敵の掃討は、たいした時間も手間もかからずに済んだ。




