あぶり出し
激昂しているウキタのようすを見て、まわりの看守たちは、怯えだしてしまった。なぜならば、このオトコを怒らせれてしまえば、ヘタをすれば、イノチにかかわるのだから。
「おいオマエら、さっき監獄につれてったヤツラを呼びもどせ!!」
「どうされましたか」
看守のひとりが、恐る恐る、ウキタに聞いてきた。
「どうされましたか。じゃねえ、オレが今いったコトバが聞こえなかったのか。さっさとヤツラを、ここに呼び戻すんだ」
(おそらく、ソトからこの島に侵入して、ドレイどもをそそのかして、反乱を手だすけしたヤツがいやがる。ソイツが看守長をやりやがった。
ソレに、そもそもドレイどもは、異能のチカラをつかえるワケがない。たとえつかえるヤツがいても、手枷・足枷をしてれば、チカラを封じられる。だから、反乱なんざ、できるはずがない)
「タイヘンです、ウキタさん。さっき連中をつれてった看守が、コロサレていました」
「コロサレてただあ。チョット待て、だったらドレイどもは、どこに行きやがったんだ?オマエら、いそいでドレイどもをさがせ。おそらく、ヤマのソトに出ていったはずだ。
どんなヤツが侵入したのかは知らんが、ドレイどもを逃がすなら、ミナトに行くはずだ。オマエら、ミナトに向かっていけ」
こうウキタが叫ぶと、その場にいた看守たちは、いそいでソトに向かって走っていった。
(おそらくヤツラは、フネで逃げることを狙ってやがる。だから、ミナトに行くはずだ)
ここでふと、ウキタのアタマのなかに、ギモンが湧いてきた。
(だが、フネはさっき、すべて壊されていた。おそらく、侵入者が壊したんだろうが。なぜフネを壊した?どうやって逃げだすツモリだ?)
ドレイたちを逃がすためだったら、フネを奪うはずである。それなのに、フネをすべて、壊しているのだ。
(矛盾してやがる。どうなってんだ?)
静かに深く、ウキタは熟考した。
(まさか、侵入者の狙いや目的は、ドレイを逃がすことじゃない?)
つぎの瞬間、ウキタは跳びはねていた。背中に激痛が走ったのだ。熟考していたため、背後に接近していた者のそんざいに、一瞬だけ、気づくのが遅れたのであった。
ウキタが跳びはねざまに、うしろにいた者にたいして、土をあやつり、地面から、ヤリのように突きさした。
そこには、剣を持った看守が立っていた。この剣で、うしろから、ウキタにたいして斬りかかったのであろう。剣先には、ウキタの血がついていた。
「テメエ、なにしやがる!!」
だがしかし、その看守は、地面から出たヤリのような土のカタマリに、全身をくし刺しにされながらも、うめき声ひとつ挙げない。
「なんだ、コイツは」
つぎの瞬間、その看守は、とつぜん消えてしまた。まるで、霧やケムリのように。
「コレは、ニンゲンじゃねえ」
「どうしました、ウキタさん」
ウキタのようすを見て、近づいてきた看守が言った。
「気をつけろ、ニセモノの看守がいる。どこかに、コレをあやつる異能者がいるはずだ。いそいで、見おぼえのないカオの看守がいないか、全員でかくにんしろ」
「わかりました」
指示を聞いた看守は、ウキタのうしろの方向に、いそいで走りさった。
そして、ウキタはまたしても、全身に激痛が走った。
「クソが!!」
ふたたび跳びはねてうしろを見ると、今さっき、走りさって行った看守の全身から、針のようなトゲが出ており、コレが、ウキタにたいして突き刺さったのだ。
「コイツもニセモノか」
こう言うのと同時に、ウキタはふたたび、地面から、土のカタマリでつくったヤリを繰りだし、くし刺しにした。そして、その看守はまたしても、霧やケムリのようになり、消えてしまった。
「どうされました」
ウキタが襲われたのを見た看守たちが、つぎつぎに、ウキタに向かってきた。何人も。
(どいつがニセモノで、どいつがホンモノか、サッパリ見分けがつかん。メンドクセエ!!)
激昂したウキタは、もはや、看守とニセモノを、イチイチ見分けることをヤメてしまった。
目のまえにいるニンゲンに向かって、地面、天井、カベから、土のヤリを何百とつくりだし、全員を、くし刺しにしてしまった。
「ギャア!!」
ヘヤ中に、悲鳴が響きわたった。つまり、ここにいた看守全員が、ウキタによって、くし刺しにされたのである。
そして、そのうちの何人かは、やはりニセモノであり、霧やケムリのような状態になり、スガタを消してしまった。
(どうだ、コレでもう、オレに近づけるヤツはいない。もしもいたとしたら、ソイツは、ニセモノってことになる。近づいてくるヤツがいたら、問答無用で、即座に全員くし刺しにしてやる)
まわりにダレもいないのをかくにんしてから、ウキタは斬られ、刺され、血がでているキズ口に、布をあてた。
(深くはないが、痛みがあるな。それにすこし、血をながしすぎた)
「とりあえず、手当のできるヘヤに行くか」
「そうはさせんよ」
背後から声がきたので、ウキタはすばやく跳びはねた。そして、ソレと同時に、地面、天井、カベから、無数の土のヤリを突き刺した。
そこにはニンゲンが立っており、やはり、剣を持っていたのであるが、貫かれると、スガタを消した。
(コレをあやつってる本体は、まだいやがるか。しかも、近くにいないらしい。どこにいやがる)
ウキタはまわりを注意ぶかく見わたしたのだが、それらしきニンゲンのそんざいを、見つけることはできなかった。見えるのは、くし刺しになり死んでいるか、あるいは呻いている、看守たちである。
(遠くから、ケムリみたいなニンギョウをあやつって、オレに攻撃してやがるのか。臆病なのか、慎重なのか)
「ダレだか知らんがスガタを見せろ、出てこい。こんなヤワな攻撃じゃあ、オレをコロスことはできんぞ」
ウキタが叫んだのであるが、なにもコトバは返ってこなかった。
(どうすべきか。コイツはこのまま、遠くから、オレを攻撃するツモリなのか。だがさっきの残撃は2回とも、オレの背後からのもので、スキを狙ったものだ。
しかも、たいしたチカラじゃなかった。つまり、このニンギョウ自体は、それほどつよくないだろう。さすがに、おなじ手はもう食わん。
ソレに、今この場所では、オレ以外に、無事なヤツはダレもいない。もしオレに近づいてきたら、ニンゲンだろうが、ニンギョウだろうが、問答無用で全員くし刺しだ)
ウキタは警戒心をつよめ、臨戦態勢を維持しているのだが、ダレもやってこない。
(コイツの狙いは、一体なんなんだ?こんなヤワなニンギョウじゃ、オレをコロスことはできんはずだが)
敵の狙い・目的というものが、良くわからない。そのために、ウキタとしては、つぎの行動にたいして移ることに、すこしのあいだ、ためらってしまった。
(どうすべきか。このままここにても、ラチがあかん。時間を浪費しかねん。ん?浪費?)
ウキタのアタマに、ギモンが湧いた。
(コイツの狙い・目的は、オレをここに足止めして、時間を稼ぐことか?だったら、なんのために?)
ウキタは、静かに深く、熟考をした。
(単純にかんがえれば、ドレイたちが、逃げだす時間をつくるためだろうが、そもそも、ミナトにフネがない以上、この島から、逃げだすことはできん。
だから、今ここで時間を稼いだところで、結果はおなじだ。なら、ほかになんの狙いや目的で、時間を稼ぐのか)
イロイロと考えたのだが、あいての狙い・目的というものが、イマイチわからなかった。
(ヤメだ。アレコレかんがえても、まったくラチがあかん)
こうおもうと、ウキタは、己の異能を発動した。すると、まわりのカベがうごきだした。
(ヤツが、なにをかんがえてるのかは知らんが、いずれにしろ、脱走したドレイどもを、見捨てはせんだろう)
ウキタの異能によって、ヤマのなかの施設のカベ・通路は、カタチを変えた。そして、ウキタの目のまえに、一直線につづく通路が現れた。
(逃げだしたドレイどもに追いつき、コイツらをコロセば、隠れてるコイツを、あぶりだせるだろう)
ウキタは自らつくりだした、ミナトにたいして直線的につうじる道を走っていった。




