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反乱

 キリガクレが、エルヒーたち4人と知りあい、数週間が過ぎたころである。ふたたび、おおきな取り引きがおこなわれることになった。そのために、ドレイたちを監視する看守のかずが、すくなくなる日がやってきた。

「おいエルヒー、なにやってんだ。さっさと荷物をはこべ。チンタラすんな、バカ力だけが、オマエの取柄だろうが」

 看守のひとりが、エルヒーにたいして怒鳴りながら、カノジョに近づいてきた。なかなか動こうとしないエルヒーにたいして、その看守が、警棒で殴りかかった。

「オンナあいてにボウリョクを振るうなんて、あいかわらず、ヒドイことをする」

 小声でドレイたちは、看守の横暴にフマンをいいながらも、じぶんにたいして火の粉が降りかかるのを恐れて、下を見て、やりすごそうとしていた。まさに、そのときである。エルヒーがとつぜん、看守を殴りとばした。

「なんだ、なにしやがる。このクソオンナが」

 看守のナカマが、エルヒーにたいして襲いかかった、その瞬間、エルヒーはすさまじい速さでソレをかわし、襲いかかってきた看守を斬りふせた。

「どうなってんだ、なんでコイツ、剣を持ってやがる」

 残りの看守がおどろき、エルヒーにたいして異能をつかった。そのチカラは、とても単純なモノであった。

 その異能は、「あいてを固めてしまい、身うごきをとれなくする」というチカラであったのだが、エルヒーは、その看守の異能を、剣を振って弾きとばした。

(どういうことだ?なんでコイツが異能を弾きとばせる。コイツが異能者っていうハナシは、聞いたことがない。というか、そもそも手枷・足枷がある以上、異能のチカラ自体、使えるハズがない)

 看守は驚いて、アタマのなかが混乱状態になったのだが、ソレも一瞬であった。なぜならば、エルヒーによって、この看守も、あっという間に斬りふせられたのだから。

 目のまえでおきている事態を、把握できないでいるドレイたちにたいして、エルヒーは、語りかけた。

「ワタシはもう、ドレイでいることをヤメます。今からチカラづくで、自由を勝ちとります」

 こういうと、じぶんにハメられている手枷・足枷を、引きちぎった。

「アナタたちは、どうしたいですか?ムリ強いはしません。もしも自由がほしければ、ワタシと一緒にきてもいいですよ」

 こういうと、エルヒーはカギを取りだし、近くにいたドレイたちの手枷・足枷をハズシた。

「どういうことだエルヒー。なんでオマエがカギを持ってる?異能をつかった看守を斬りふせたが、オマエは異能者だったのか?

 ソレに、今オマエは、手枷・足枷を引きちぎったぞ。どういうことだ?」

 混乱し、パニックになりながら、エルヒーにたいして問いつめるドレイに、エルヒーは言う。

「この場で、くわしいせつめいをしてる時間はありません。今からアナタたちが、どうするのか、ワタシは強制をしません。アナタたち自身の意思やかんがえで、選択してください」

 こういうと、エルヒーは歩いていった。残されたドレイたちは、驚き、とまどいながらも、ダンダンと、エルヒーのあとを追う者が増えていった。ドレイたちは、エルヒーの反乱が、成功するかどうかなど、まったくわかっていない。

 だがしかし、じぶんの目のまえで、恐怖の対象であった看守が、いともカンタンに、倒されてしまったのだ。

 かつ、手枷・足枷を外されて、とつぜん、選択の自由というものを手にしたことで、なんとなく、「エルヒーのあとをついていけば、なんとかなるのではないか」と、おもったのであった。

(スゴイわね。キリガクレさんのチカラは)

 実は、エルヒーがつけていた手枷足枷は、キリガクレが自分のチカラでつくった、ニセモノの手枷・足枷であった。つまり、コレには、異能を抑える効果など、まったくない。

 そして、エルヒーが手にしている剣もまた、キリガクレが、じぶんのチカラでつくったモノである。

 霧やケムリ状にしたモノを、剣のカタチにして、その強度をつよくしたのだ。カタチを自由に変えることができるために、先ほどまでは、エルヒーの服の上に、薄くしてまとわせていた。そのために、一見すると、なにも武器がないように見えたのであった。

 ドレイたちの手枷・足枷をハズシたカギもまた、おなじように、キリガクレが、手枷・足枷のカギ穴に、じぶんのチカラをケムリ状にしてながしこみ、そのなかでかためて、合いカギをつくったのだ。

(予想してたとおり、この手枷・足枷は、おなじカギ穴のモノをつかいまわしてた。異能を封じこめる効果があるし、そもそも、ドレイがカギを手にいれることを、まったくかんがえてなかったんでしょうね。

 ソレに、ドレイが反乱するなんて、まったくアタマになかった。だから、量産品のやすいモノをつかってる。その結果、ひとつのカギで、たくさんの手枷・足枷をハズすことができた。

 ヤツラはドレイたちをみくびり、カンゼンに油断してた。だから、こういう不用心なことをしたのかしら)

 エルヒーは、ユックリとまえに進んでいた。その気になれば、すばやくうごくことができるのだが、あまりにはやく、じぶんがスガタを消してしまえば、せっかく手枷・足枷をハズシて自由にしたドレイたちが、じぶんのあとを、追ってこれなくなる。

 こうかんがえて、すこしでもたくさんのドレイたちが、じぶんのあとを追ってこれるように、あえてユックリ歩いていた。

 その結果として、じぶんのアタマでかんがえたワケではなくて、状況にながされたのだが、何人かの解放したドレイたちが、エルヒーのあとを追ってきた。

 だがしかし、このために、あたりまえのことだが、看守たちの増援にも、すぐ見つかってしまった。

 そのとき、けたたましいブザーの音が鳴りひびいた。異常事態を察知した看守が、警報ブザーを鳴らしたのだ。

「いたぞ、あそこだ」

(もう見つかったらしい)

 エルヒーがそうおもった、その瞬間、看守たちの増援がスガタを現した。

「あのオンナ、異能をつかうらしい。ナメてかかるな。全力でコロセ」

(いきなりコロセときたか。相当アタマに血が上ってるらしいわね)

 エルヒーにたいして、何人かの看守が襲いかかったのだが、エルヒーは、その全員を、一瞬のうちに斬りふせた。看守たちが、異能をつかう間もあたえないほど、すばやい攻撃であった。

 つぎつぎにやってくる、増援の看守たちを、エルヒーは、つぎつぎと斬りふせていった。ソレも、うしろについてくる、解放したドレイたちの目のまえで。

 このスガタは、それまでビクビクしていたドレイたちにたいして、つよい影響をあたえだした。

 なぜならば、それまで恐れていた看守たちが、じぶんとおなじドレイのエルヒーに、いともカンタンに、倒されているのだから。その結果として、

(もしかしてコイツら、大したことないんじゃないのか)

 というおもいが、解放されたドレイたちのなかに、芽生えはじめた。

「みんな、見てのとおり看守たちは、ワタシたちが手枷・足枷をハズシたら、なにもすることができないわ。もしも異能をつかう異能者がいても、ワタシがすぐに斬りすてる。

 だからみんなも、看守にたいしてビクビクせず、むしろコッチから、あいてを叩きのめすべきじゃないですか?」

 このエルヒーのコトバは、ドレイたちの闘争心にたいして火をつけた。ドレイたちは、エルヒーが斬りたおした看守が持っていた武器を手にとり、のこった看守たちにたいして、襲いかかった。

 看守たちは、エルヒーにむかって、つぎつぎに襲いかかってくるのであるが、そのいずれも、エルヒーにたいして、キズひとつとして、つけることができない。

 つぎつぎに増援がくるのだが、ダレひとりとして、エルヒーの前進を、止めることができなかった。

 ドレイたちの反乱にたいして、看守たちは、手をこまねいているワケではなかった。だがしかし、看守たちは、その戦力のすべてを、エルヒーにたいして割くことができない。なぜならば、ちがう場所でも、おなじように、反乱の火の手があがっていたのだから。

 つまり、ヘイハチ、ムネシもまた、ちがう場所で、エルヒーとおなじく看守をたおし、つぎつぎに、ドレイたちを解放していたのだ。要するに、同時多発的に、3カ所で反乱がおきていた。

「どうなってんだ。なんでとつぜん、3カ所で反乱がおきてやがる。しかもその3カ所で、異能者が反乱を主導してるっていうじゃないか。

 そもそも、なんでドレイが異能をつかってるんだ。ドレイのなかに、異能者者は、ひとりもいないはずだろうが」

「んなことは知らねえよ。というか、もし異能者がいても、あの手枷・足枷をハメてるかぎり、異能はつかえねえはずだろう」

 看守たちは、今の状況というものを、ただしく把握することができず、パニックになっていた。つまり、今この施設のなかは、カナリの混乱状態となっていた。

 そして、まさに今、この瞬間に、キリガクレは、みずからの手枷足枷をハズシて、看守につよい当て身をあてて、自由にうごきまわりはじめた。

 キリガクレは、エルヒーたち4人と出会ったあと、みずからの分身をつくりだし、代わりに、強制労働をさせておいた。

 そのあいだに、4人にたいして、異能の使いかたをおしえたのだ。その結果として、この4人には、スバラシイ異能の才能があり、ソレは、キリガクレが、当初に想定していた以上のものであった。

(この4人は、オレの想像した以上に、異能の才能がある。しかも、この島から抜けだすことをかんがえてる。そして可能なら、施設をハカイしたいとも。

 だったら、4人に反乱をおこさせて、その隙に、オレのシゴトを済ませるほうが、やりやすいかもしれん)

 こうかんがえて、エルヒーたちの反乱を手だすけし、その混乱状態に乗じて、うごきまわることを計画したのであった。

(はじまった。順調そうだ)

 こうおもいながら、キリガクレは、施設内のヘヤをまわりながら、この島でおこなわれている、悪事の証拠となるモノをさがしていた。そして、つぎつぎに証拠の書類を見つけた。

(これらの書類を依頼主にわたせば、オレの任務は終了になるが)

 そうおもい、反乱がおきている方角を見た。ここでじぶんだけ、この島から抜けだすことは可能なのだが、そうすると、のこされたエルヒーたち4人や、解放されたドレイたちは、十中八九、ほぼ確実にコロサレルであろう。

(さすがに、ソレはなあ)

 そうおもいながら、書類に目をとおしていたキリガクレは、つぎの瞬間、はしりだしていた。

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