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乙女的ヤンキー  作者: 江田 小枝
1章 萌香編
15/22

1章-12

俺と萌香の新しい日常が始まった。

いじめ問題は解決し、加えて結城達を脅す道具も手に入り万々歳。


「ひっ!」

「逃げろ!」

「同じクラスなのにどこに逃げるんだろうな」

「あはは…」


俺たちを見て逃げ出す取り巻きだったモブ共。その様子を眺める生活は、とてもとても愉快であった。

自席でそれを楽しんでいると、隣で萌香は苦笑いをした。


「結城様、今日も欠席らしいよ」

「あんなことされたら、来れねェわな」

「まぁ、そうだね」


パイセンの言葉を思い出した。


『プライドが、高い』


(でもアイツ、そんな感じに見えなかったんだよなぁ)


記憶にあるのは、覚悟を決めた男の顔だ。大層イケメンだったそれは、プライドのみで生きているようでは無かった。


(つか俺、攻略キャラ一人潰しちゃったな…。ま、パイセンいるしいいよな)


今更ながら気づき、遅すぎる焦りを感じていると、突然教室が静まり返った。

担任が来た時も同じようになるが、まだホームルームが始まる時間ではない。

周囲を見渡すと、教室の奴らは扉の方を見つめていた。そこには件の”結城怜空”が立っていた。タイミングが良すぎる。


「私たちに用かな…」

「あぁ」


何かを探すように教室を見渡していた結城は、俺を見つけて目を止めた。やはり目的は俺らしい。

若干緊張しながら、男が目の前に来るまで待った。クラスの生徒達は結城に道を開け、何が始まるのかと固唾を飲んで見守っている。


「…なんの用だ」


萌香を庇うように立ち、結城を睨む。しかし相手が怯むことはない。

男は昨日と同じく、何かを決意したような顔をしていた。


「…俺様に」

「……あ?」

「喧嘩を教えて欲しい」


小さな声だった。だから聞き間違いをしたのだろうか。


「なんて?」

「だから!俺様をっ!」


今度はデカい声だった。恐らく教室中の人間がキッチリ聞き取れるくらいの。


「弟子にしてくれ!!!」


しっかり聞き取れてしまったそれは、

恐らく乙女ゲームで聞くはずのない台詞だった。

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