第五話 はた迷惑な王命ですわ
よろしくお願いします
公爵家から婚約の打診をされた父母はとりあえず待ったをかけたそうです。
私があまりにも幼いからという理由を公爵家には伝えましたが、本当の理由はキャンベラでした。
貴族の階級などにはあまり関心のない自由な商売人の父ですので(伯爵のくせにですわ)公爵家の話を断れるつもりでいたそうです。
簡単に断ろうとする父に、私の将来を考えたら公爵家との縁組は悪い物ではないと説得した母がこちらを訪ねて、縁を切らない為にサンディル様の魔法の指南役になったそうです。
何故キャンベラが理由なのか、それが旦那様が眠りについた理由にもなっております。
我が伯爵家に引き取られた養女は2名です。
そのうちの一人が王家の血を継いでいるかもしれないとの話が実しやかに王宮魔術師団に広がりましたのは、ちょうどお茶会の3日ほど前だったそうです。
何故そのような話になっているかというと根本は非常に笑える物だったのです。
”夢見”それは魔法とはまた別物と魔術師団では認識しているものです。
極々稀にその力を発揮する人も過去にはいたそうですが大体は皆、半信半疑でおりました。
但し、今回の養女云々の夢見は半信半疑でも表向きには疑ってはならない物でした。
何故ならその夢見は王様が見たものだからなのです。
何言ってるんでしょうね、王様、あぁ陛下とお呼びせねばなりませんね。
先程テモシーにこの話を聞いた時私は吹き出したのですが、マーク様とテモシーは笑えないと言ってました。
だってまさにそのせいでサンディル様は過去に調べに行ってるのですからね。
王宮魔術師団から夢見の話を父母が聞いたのは、お茶会の日の夜でした。
実は祖父母と父母は流石に今回の件でキャンベラの養子縁組を解消しようと話し合っていました。
引き取った時から、かなりの我儘、好き勝手し放題で注意してもその場限りで全く反省しないキャンベラに日頃から手を焼いておりました。
でも一度引き取ったなら最後まで責任を持つべきという、至極真っ当な思いでその時までいたそうです。
キャンベラの矯正の為に色々手段を講じたそうですが、年を重ねる毎に悪劣な娘になっていきトドメがお茶会での出来事でした。
私ならとっくに追い出しております。
両親も祖父母も責任感がお強いです。
しかし、あの商才しかない父までもがそんなに責任感が強いとは思っておりませんでした。
娘に見せない一面があったのでしょうか?
その話し合いの場に魔術師団長が陛下の勅命を持ってやって来たのです。調べよと⋯⋯。
えー自分で見た夢なんだから自分で調べなさいよ〜と不敬な物言いは胸にしまっておきます。
過去へ行く魔法はあるにはありますが実体は行くことはできません。
ただ過去に精神を飛ばし見たものを目に焼き付けるだけらしいです。
この辺は私は知らない魔法ですので、世間に知らされてない禁忌の魔法なのでしょう。
勿論母は知っていたそうです。
夢見の真実を調べるならこの魔法しかないと魔術師団長も承知していたそうです。
この魔法は発動は割と簡単だそうですが協力者が必要になります。
何故なら時空の理を覆す魔法ですから、魔力が相当数必要です。
術者は精神を飛ばすのでその事に魔力を使います。
では精神を飛ばしてしまった抜け殻の体はどうなるかというと⋯⋯。
魔力を持って生まれた者が魔力をなくすと死んでしまうのです。
ですので体内には常に宿していた魔力の3分の1程は最低でも残さないとならないのです。
過去戻りの為の魔力と体内に残す魔力、しかも過去戻りでは常に魔力を消費してます。
ですから、禁忌の魔法を使える程の魔力持ちと同じ位の魔力を持つもの二人が必要なので、皆この魔法には手を出さなかったのです。が、王命では仕方ありません。
ただ、この魔法に必要な魔力を持った二人が現れるまでは調べようがないと陛下に進言したところ、なるたけ早めにとの妥協案を頂きまして、その時は事なきを得たらしいのですが、これでキャンベラの養子縁組を解消する事が叶わなくなりました。
もし過去を調べた後にキャンベラの方が万が一にも王族であるならば、養子縁組を解消してしまった我が家にお咎めがあるやもしれないからです。
全くいい迷惑な話です。
まぁハッキリしない者を王家にどうぞと押し付けるわけにもいきませんしね。
ここで再び婚約の話に戻ったのですが、先ず件のお茶会でキャンベラがサンディル様に一目惚れしてしまってました。あらっ大変。
そしてあろう事かメリルに自分はサンディル様と結婚するのよと宣っていたそうです。
それを聞いた祖母は始めは鼻で笑ってしまったのですが(はい、私も笑います)それから暫くして婚約の打診が公爵家から来たので笑った鼻は詰まったそうです。(お気の毒に)
まぁ申し込まれた娘が違ってたのでホッとはしたそうですが⋯⋯。
躾のなってない娘が他家に嫁ぐ事ほど怖いものは無いと祖母は言ってたそうです。
ここで直ぐに婚約を決めてしまったら私にキャンベラが何をするか解らない、しかも王族かもしれないから何をしても罰することも出来ない。
で、直ぐにお受けする事はできないとなったそうです。
ここで皆様も不思議に思っておられると思いますが、この一連の話を何故テモシーが全て知ってるかと言うと、ペラペラ喋ったのは私の母でした。
サンディル様の指南役になった母は、片手間の王宮魔術師団の教師の、そのまた合間に公爵家へ来ていたそうですが、その度にサンディル様の、執拗い私への執着攻撃に耐えられなくなったみたいです。
それで何故直ぐに婚約が出来ないのか、当時は13歳に成長しておりましたサンディル様に全てを話したそうです。
その時にテモシーも同席していたので知ったみたいです。
お喋りな母の事を聞いた私の眉間がピリリと反応したからでしょうか、テモシーは話しながら母を庇っておりました。
曰く会うたびに
「何故婚約が保留なのですか?」だの
「先生、私の何処がだめでしょうか?直しますので教えてください、そして一刻も早く婚約を」だの
最終的に「陛下に頼んで王命にしてしまいそうです」と母を実質脅したそうです。
サンディル様怖いわ。
因みにサンディル様のお父様である前公爵様は陛下とご兄弟なので(所謂王弟ですわ、公爵家に養子入りしたそうです)王命も可能だと思われます。
テモシーから聞いたら母がとても気の毒になりました。
だけど、それからが大変だったそうです。
そもそもが陛下の夢見が原因という事で、怒り狂ったサンディル様は不敬にも陛下に詰め寄ったそうです。
うわぁ怖い。
陛下は甥であるサンディル様に謝ったものの夢見に関してはガンと譲らず仕舞で改めて王命続行になったそうです。
陛下に謝らせるのは凄いけど墓穴掘っちゃったんですね。
それにしてもサンディル様の私への執着は一体何なのでしょうか?
ここまでお読み頂きありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




