第九話 それぞれの考え
よろしくお願いします
公爵邸に戻った私とサンディル様はそのまま二人の寝室へ向かいました。
そこで私が退出したあとのお話をして下さいました。
陛下が当時の事を知っている人の辺りをつけたのは、なんとキャンベラの嫁ぎ先であるレイニー公爵家。
前々陛下の側近が前レイニー公爵様だそうです。
元々は前々レイニー公爵様が側近だったのですが、亡くなられてその後、前レイニー公爵様がそのまま陛下の側近に就任したそうです。
その頃は前々陛下も晩年であった為、丁度今回の件に携わってる可能性がある為、事情を聞くことになったそうです。
昔の話を覚えてらっしゃるかしら?と危惧しましたが実際にレイニー公爵に連れられて来たのは公爵家の執事でした。
執事は前レイニー公爵の侍従だったらしく当時の事をしっかりと記録されておられたそうです。
いつか明るみになった時にお話する事になるかもしれないと前レイニー公爵が前々陛下の命を受けてそうしていたそうです。
王宮で記録をしていても必ず握り潰されることになるのを危惧しての事でした。
過去戻りは禁忌云えにその話は伏せて陛下がお尋ねになったそうです。
前々陛下に寵姫がいたのかの有無。
遺産の件。
平伏していたレイニー家の執事は記録を遡り話し始めたそうです。
寵姫の方のお名前はシェリー様、第二王子様がジョセフ様。
離宮で匿いきれなくなった後、市井に下るまではレイニー公爵家にいたそうです。
当時は第二王子様の命を執拗に狙っている王妃様を廃妃にする事も検討されたそうです。
ただそうすると第一王子様も廃嫡にしなければならなくなるので踏み止まり、代わりに北の離宮に幽閉した上で魔法誓約書にサインさせたそうです。
遺産は間違いなく分配する様に遺言がありその時に渡す手筈になっていましたが、渡した途端に命を取られる危険があったので王妃様が亡くなるまで待ったそうです。
手続きをされたのは前レイニー公爵様でした。
時間がかかってしまったのは、かなりの妨害があった為でした。
今回の過去戻りの結果は結局元を正せば王家の失態です。
王家では側室が認められています。
前々王妃様にはお子が前陛下しかいらっしゃいませんでしたので、シェリー様が側室になる事は身分以外問題ではなかったのです。
それを解決する為にシェリー様はレイニー公爵家の養女になる予定でした。
自分よりも実家が上になることが許せなくての犯行だったという、とても王妃とは思えない行動です。
前々王妃様の王家へ嫁いだという覚悟が足りなかった云えの、そしてそんな王妃を選んだ王家の失態と言えます。
しかも前陛下の即位の翳りにならないようにとこの件は伏せる事になったそうです。
その犠牲になった人達、一体何人いらっしゃるのでしょうか?
過去戻りを踏まえて陛下が新たに王命を出されました。
ミント伯爵家の捜索と前伯爵の逮捕。
没落したアッパール夫人の身柄拘束。
キャンベラとラデイール様の件は父とミラー侯爵で話し合うそうです。
問題はラデイール様の身分になりますが、本来なら王族ですのでこの件が一番難航しましたが結果は本人に任せることになりました。
陛下の夢見の伯爵家の養女はメリルだと断定されましたのでメリルの洗脳を解く手筈になったそうです。
ホッとしました。
幼い頃に祖母と一緒に慰問していたメリルは人に魔法を使うような娘ではなかったと思いました。
悪意のある人に洗脳されてしまった為の行いだったから私に対してした事も、洗脳されてしまって心が歪んだのでしょう。
私は父の最初の妻であったティーナ様を悪しき人だと思いこんでいたけれど、そうでは無かったことが解って、思い込みで人を判断するのはこれからは絶対に止めようと思いました。
だからスノーと話そうと決意したんです。
彼女には彼女の言い分があるかもしれない、なぜなら彼女は母や姉に同行してないのです。
お義父様に嘘を付いて公爵家に入ったけれど、それは偶々でした。
嘘を付いたくらいで公爵家に連れて行かれるなんて思ってなかったはずです。
それにジニーの件、確かに精神魔法の術式はあの怪しい国の者から送られたのでしょう。
ジニーの髪なのか爪なのかは知りませんが怪しい国に送ったのもスノーでしょう。
でも彼女がジニーを操ってした事は私に対する嫌がらせだけなのです。
ジニーの精神魔法を解除した後、散々調べましたが本当にそれだけで、その結果に拍子抜けしました。
ジニーを操るなら公爵家のひいては王家の秘密も握ろうと思えば色々出来たはずなのに、まさかの結果にテモシーも唖然としておりました。
その時はスノーは間抜けか!と思いましたが、もしも彼女の母や姉とスノーの思惑が違う所にあるのならばその結果も納得できます。
私がこの考えをサンディル様に話したところ、サンディル様は危険ではないか?とか自分が話そうか?とか⋯。
サンディル様はこれから他の事で忙しくなるのだから心配無用です。
というと、しょんぼりしておりましたがスノーの事はお任せくださいね。
私が解決します。
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翌日早速スノーを執務室に呼びました。
「アディル様、およびと聞きました。何か御用ですか?」
全く持ってなっていない人です。
本当にサンディル様と同じ年ですか?
「やり直してください。スノーに名前を呼ぶ許可を与えておりませんので」
そう言うと案の定噛み付いてきました。
「何言ってるの?私は貴方に雇われてるわけではないのよ、貴方に私に命令する権限などないのよ。それでも来てやったのになんて言い草なの」
やっぱりこの人が間諜などできるはずありませんね。
もし本当にそのつもりならあの国自体馬鹿ですわ。
「先ず権限も何も私はこのメイナード公爵家の夫人です、平民の貴方よりも身分が上なので、雇われていないからという貴方の言い分自体が滑稽ですわね」
「⋯⋯⋯その結婚も王命でしょう。ちゃんと聞いたんだから無理やり婚約者になったって」
「それはどなたが言っていたのかしら?」
「お母様よ。私はこの公爵家とも懇意にしていたアッパール家の娘なのよ、本来なら私が婚約者になるはずだったのに貴方が横から入り込んだんじゃない。サンディル様と結婚したってずっと寝室も別だったでしょう。
愛されてない証拠じゃない。サンディル様は私の事が好きなのよ。だってしょっちゅう図書室に来て下さっていたもの」
それはマーク様が貴方の監視役だったからですけど⋯⋯。
それにしても公爵家と懇意にしてたって⋯⋯この人は何も本当の事は聞かされずに育ってしまったのね。
そして思い込まされたと言う事か。
でもその年でその物言いもちゃんとした教育を受けてない証拠だわ。
これはもう監視とかしても意味ないわね。
私はベルを鳴らしてダルトンを呼んだ。
「お呼びですか?」
「ダルトン彼女を拘束して、例の場所に」
「畏まりました」
私はダルトンに命令してからお茶をゆっくりと飲む。
私の言葉を受けて、なんと!外に待機していたのか公爵家の護衛が中に入ってきて「何でよ」とかギャーギャー騒いでるスノーを拘束して地下に連れて行った。
ダルトン察しが良すぎるわ。
でもありがとう。
彼女が処分される前に保護しないとね。
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