第八話 『真実』 変えたい過去
よろしくお願いします
本日は王宮の会議室に来ております。
本来は結婚式の翌日に行われる予定でしたが、私の体が動けずおまけにサンディル様が部屋を出ようとしなくて結局皆を収集したのは結婚式から3日後でした。
参加するのは陛下とエンヌ様、お義父様とドーラン、団長様と母、そして何故か父もサンディル様の希望で呼ばれておりました。
会議室は普段使わない離宮の部屋です。
窓を全て締め切り全てに暗幕をかけていて中は真っ暗になってます。
移動に困るので所々に灯り代わりの光るボールが浮いてます。
団長様が出してるのでしょうね、とてもキレイなので今度私も真似して作ってみようと思いました。
するとそこへ見た事のな男性が入ってきました。
「少し遅れたようで申し訳ありません」
そう言って紳士は陛下の前で平伏しております。
「侯爵急に呼びだてて済まないな。領地にいるのを引っ張り出してしまって、間に合って良かった」
そう言って陛下が皆にミラー侯爵だと紹介してくださいました。
クラリスのお父様が何故ここへ?
不思議に思っていたら、なんと陛下が侯爵に夢見の説明をされています。
という事は侯爵は元々王命にも関わっていなかったのに、と益々わからなかったのですが説明の最後に父とミラー侯爵はサンディル様のご希望で呼ばれたんだと陛下がみなに告げます。
サンディル様が過去戻りの結果を二人は知る必要があるという事になりますね。
サンディル様は何を見てきたのでしょう。
団長様が途中で休憩などは挟まないからと言ってティーポットとカップを一人一つずつ準備され「勝手にやってくれ」と仰います。
雑ですわね、私が立ち上がろうとするとエンヌ様に止められました。
「アディル気にする必要はないわよ」
私が一番若輩者だしと思ったのですがそう言われましたので座り直しました。
目に写った物を見るというのが初めてですので少し緊張していて手が震えております。
サンディル様が皆の前に出て目を開きます。
団長様が光るボールを消しました、部屋が真っ暗になります。
母がサンディル様の目に手を翳し力を込めています、すると金色の粒のようなものがサンディル様の目に入り、なんとそこから光が溢れてきました。
光は暗幕へと続きそこに映像が流れ始めました。
皆固唾をのんで暗幕に釘付けになりました。
──────────────
「そ、そんな⋯⋯⋯⋯」
見終わったあと真っ先に声を発したのはミラー侯爵でした。
他は誰も声を上げられない。
一人の女性の壮絶な人生を目の当たりにして言葉は出ない。
彼女の人生で幸せだった時は何年位あったのかしら?
「陛下、発言をお許しください」
お義父様が声を上げると陛下が了承された。
「お祖父様の遺産の件、誰が対応していたのですか?その者は詳しく知っているのではないでしょうか?」
陛下は本当にジョセフさんの存在を知らされてなかったのかしら?
「そうだな、早急に調べさせよう。⋯⋯ここにその女性がいたということだな」
そうだ、ジョイさんのお祖母様を前々陛下が離宮に囲ったって言ってたから、ここなんだわ。
それから私とエンヌ様は本城に行くように言われてその場を離れました。
これから皆様で対策を立てられるのでしょうね。
畏れ多くもエンヌ様の部屋へ通されて二人でお茶を飲むことになったのだけど、未だに私は手が震えています。
帰りたいけれど、でもサンディル様が待つように言ったのでここで待たなければ。
「アディル、『番の呪い』かもしれないわね」
「呪いですか?」
「えぇ、私が前話した事覚えてる?」
「はい覚えています」
「その時前王妃様から聞いたと話したでしょう。あの時は軽く話したけど実際はそんなものじゃなかったのよ。
とても、とても苦しんでおられたの。ひょっとすると今回の事少しは知ってらしたのかもしれないわね。婚姻してから呪いが発動されたらとんでもない事になると仰ってたのも、この事が原因かも知れないわ」
そうか、前々陛下はおそらくサンディル様の曾祖母様と婚姻した後に強く惹かれて執着する女性を見つけてしまったから、それを目の当たりにした曾祖母様が今回の事の元凶だものね。
『番の呪い』って本当に呪いかもしれない。
「前王妃様は前陛下が呪いを発動するのを恐れていたのね」
エンヌ様が体調が悪そうだったので休むように進言すると「ごめんなさい」と言って奥へ行かれた。
私はそのまま居るように言われたので頭を整理してみる。
考えるのはメリルとキャンベラのこと。
メリルも洗脳されていた、彼女の境遇を思うとなんとも言えない気持ちになる。
彼女は悪では無かった、決めつけてたけど違ったのよ。
彼女こそ被害者だ。
でもティーナさんも責められない。
父も責められない。
その人の立場になったら子供に罪はないという言葉も虚しい。
そんな事はわかってる、誰でもわかってる。
でも感情は別物だと思う。
父が私達とメリル達を分け隔てなく育てる事が出来ないのもしょうがない事だと思う。
ティーナさんがメリルを連れて行きたくなかったのもしょうがないことなのだと思う。
だって私はその立場に立ってない。
ジョイさんが赤ん坊のメリルの頭を撫でて謝っていた時とてつもなく辛かった。
何故あんな事が起きたんだろう。
過去を変えたくなってしまう。
あんなに辛い過去なら、誰も幸せになれないんじゃないの?
キャンベラは子供の頃からメリルに魔法をかけられてた。
本当だったらミラー侯爵家で普通に過ごせていたはずなのに⋯⋯なんであんな酷い事が出来るの?
アッパール家にとてつもなく黒い感情が私の中に湧き出て来る。
モヤモヤモヤモヤして強い魔力が溢れ出ていたのかも、突然抱きしめられてフワッとしたら落ち着いた。
サンディル様が抱きしめてくれてた。
「アディル、駄目だよ。魔法を攻撃的に使おうとしたらみんなが怖がってるよ」
ふと気づくとエンヌ様の侍女が青い顔をして壁際に控えていた。
「ごめんなさい、エンヌ様が人払いされてたから誰も居ないと思ってたわ。奥へ行かれた時に私に付いてくれてたのね」
「アディル帰ろうか、落ち着いてから話そう」
私はサンディル様に手を引かれて王宮を後にしました。
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