第七話 幸せな結婚式
よろしくお願いします
先日サンディル様に思いがけずプロポーズして頂きました。
ご苦労されたサンディル様を労うことなく、私の浅慮で暫く離れ離れになっていたのですが、母に背中を押されて話し合いをするべく臨んだつもりでしたが。
5歳の時に初めてお会いして実に12年ぶりの再会でしたが、お顔だけはこの1年毎日眺めておりましたし、サンディル様に話しかけて過ごすのも私の日課になってました。
サンディル様とお会いするとフワフワするこの気持ちは何なのか解りませんがプロポーズは本当に嬉しかった。
そして彼は私との婚姻式のやり直しを所望されましたの。
2度もするのは気が引けましたが、サンディル様にとっては初めてのことです。
ご協力する事にしましたの。
しましたが⋯⋯今この場にはお義母様とマリエンヌ様、そして私の母と何故かアンディー。
皆でウェディングドレスのカタログをそれぞれが持ち、ご自分の趣味を推しております。
私の婚姻式なのに⋯⋯。
そこへサンディル様が来られました。
「あっ義兄上、お邪魔しています。
結婚1周年おめでとうございます、1周年記念でもう一度新たに誓いあうなんて、かつて無かった試みとか。
姉上が愛されてる証ですよね。弟として嬉しく思います」
王命を知らないアンディーは無邪気にサンディル様にお礼など申しております。
あぁ可愛いアンディー大好きよ。
でも姉は貴方の選んだそのドレスはちょっと遠慮したいわ。
「アンディーそうか、嬉しいか!俺も嬉しくて嬉しくて天にも登る気持ちだ」
サンディル様はそう言いながら私の所に来て手を取りそこに口付けて、それからアンディーの横に座り二人でカタログを並んで見ております。
残念でした、私の隣には母が座っていたので遠慮してくださったみたい。
いつものように膝抱きされるのではと慄いておりましたがホッとしました。
結婚式は簡素に行う予定です。
サンディル様はご不満そうでしたが私は1年前を馳せて、あの憤慨した想いを思い出し、それが塗り替えられるのであればどんな式でも構いません。
一番幸せな思い出にしたいのでやり直す事が嬉しいです
この式が終わるまでサンディル様が王命に従わないと無茶を言いましたので、なんとお式は王宮内の教会で挙げることになりました。
そのまま新婚旅行に行くと言い張っていたのは却下されたようですが⋯⋯。
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ドレス選びから10日後、王家お抱えのお針子さんたちのおかげでドレスも無事完成し本日は結婚式です。
ドレスのデザインは結局お義母様の意見が通りまして私の歳には少し大人びたマーメイドラインのドレスに決まりました。トレーンは過去最長に挑戦しました!とお針子さんたちが張り切ったのでロングトレーンではなくロングロングトレーンになっております。
ドレスに合わせたベールも長く、少々いえかなり全体的に重いのでは?と訝しみましたが、「お祝いにね」と母が魔法で軽くしてくれました。
出席者は前回と同じく身内のみ、でも1年前とは違うのはお義父様とお義母様が出席されている事と何より本物の旦那様が隣にいてくれてます。
誓いの口づけは今度はちゃんとして頂きました。
その後は前と同じく二人で馬車に乗り王城から公爵邸まで参ります。
サンディル様は馬車に乗った途端私を膝に抱き頭を撫で始めました。
「アディル、俺の妻はこの世の何物にも変えられない、俺の大事な宝だ。
ずっと大事にすると誓うよ。
俺から決して離れないようにね」
優しいサンディル様。私の旦那様。
今私はとてもとても幸せです。
だけどサンディル様は私を愛おしそうに見たあと涙を流しています。
えっなんで?そんなに感激したのかしら?
「アディル、アディル。
好きな人と結ばれる俺は幸せ者なんだ。今凄く実感しているんだ」
サンディル様は噛みしめるように仰います。
何処か辛そうですけど聞かずにやり過ごしました。
お話ししてくださるまで待つことにします。
公爵邸に着いたサンディル様は私を抱きかかえたままで新しく調えられた私の部屋へ向かいました。
ローリーとアンヌが待っていて私の服を脱がせたり湯浴みをしたり⋯⋯。
続きの部屋は夫婦の寝室です。
そこへ行くように促されました、そうでした、失念してましたが初夜になるんですね。
扉を開けるとサンディル様はソファでワインを飲んでます。
サンディル様はお酒に弱いのです、まだ体がお酒に慣れてないのでは?とダルトンが言ってました。
大丈夫かしら?
サンディル様の横に座ると優しく口づけてくれて、また抱きかかえられベッドに移動しました。
そして優しく私を抱きしめて初めて男の方の温もりに包まれ⋯⋯幸せな一夜を過ごしました。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。




