第十話 仲間外れはいけません
よろしくお願いします
ドーランの説明の後、私から滲み出る怒りで場がしんと静まり返った。
「奥様、どうかなさいましたか?」
テモシーから問われて私は自分の考えを話そうと思い、部屋に結界を張ったらマーク様とドーランの顔色が変わった。
「アディル何故結界を?」
「先程、間者がいると聞いたので万が一を考えましたの。だってダルトンを追い出すくらいの事なのでしょう。結界くらい張らなければ話はできないと思いまして」
「何故そんなに怒ってるの?」
「マーク様。マーク様は仲間外れになった事はございますか?」
「あるよ、幼少期に近所の子供達から」
「そうですか、その子達とは普段は仲良くされていたのですか?」
「いや、元から仲間はずれだったんだ。僕の目の色があの国では特殊でね。こちらでは普通だけど」
「そうだったんですね。ではダルトンの気持ちを考えてあげられますわよね」
「そうだね、今の話を聞くと正直酷いと思ったよ。僕は彼の行いが不適格だったからとしか聞いてなかったんだ」
「左様でしたか。ねぇテモシー、ドーラン。
今回のダルトンの件は貴方達やサンディル様の言い分もわかるわ。
でもそれは仲間外れというのよ。
色々暗躍していたら敵を騙すには味方からという方便もあるわ。
でもこれは違う。貴方達がダルトンを信頼していないという証なの。
何故?あんなにもサンディル様に忠誠を誓っているのに、嘘をつけないなら方法はあったでしょう」
「奥様、それではどんな方法があるというのですか?今回のダルトンの件では奥様の動向もお止めしないといけないと思っているほどです。何か方法があるなら教えてください」
ドーランが少し声高に私に迫って来た。
その態度の方が失礼なのだけれど気付けないなんて、あなたの方を解消したいわ。
「魔法誓約を結びます」
「魔法誓約ですか?それはサンディル様がお許しになりません。ダルトンに使いたくないと仰っておいででした」
「テモシーそれはサンディル様に情があったからよね。
でもダルトンは情よりも側に居たかったと思うわ。それにもうダルトンの主は私なの、だからこの件は私の権限で行います」
「⋯⋯⋯わかったよ、アディル。
僕もその方がいいと思う。今日見たところ彼は忠誠心の塊だからね。話せば解ってくれると思うよ」
「マーク様ありがとうございます。今日の所は一旦子爵家に帰しました。5日後にはこちらに戻ると思います。
その時は優しく声でも掛けてあげてください」
「どこまで話すの?」
「王命の内容は話しません。ただサンディル様は王命で仕事をなさっていると教えます、なのでずっと側に置いておくことが出来ないので一旦解消することにしたと、王命が解決すれば元に戻すつもりだったと説明するつもりです。なのでマーク様はそのまま彼の前ではサンディル様でいてください。7年前でしたらサンディル様とは違うと解ってしまったかもしれませんが、今なら少しの期間は誤魔化せます。気付いたら王命の件も明らかにしますわ」
「奥様ありがとうございます。それでしたらダルトンもこちらに置く事が可能です。それでも魔法誓約はされますか?」
「するわ。それをする事によって彼もわかるでしょう、あやしいけれど⋯⋯」
私の半信半疑の物言いにマーク様が吹き出した。そんなに真っ直ぐなの?と聞かれて頷くしかなく、今日の四つん這いの件を話すと大爆笑だった。
マーク様は笑い上戸かしら?
ついでにテモシーに庭の件を聞くと、今度は公爵家の伝統と言われちゃった。
「メイナード公爵家では代々、結婚と同時に爵位継承が行われます。但し今回は色々といつもと違う事態が王命によってありまして、通常が叶わなくなりました。
その一つが過去戻りの件です。
マーク様がこちらに来られた時は16歳でして、ウィルハイム前公爵様におかれましては⋯⋯」
「テモシー、ずっとウィルハイム様でいいわよ。
そう呼ぶ様に許可は出ているのでしょう」
「はい、儀礼によっては不敬に当たりますがずっとそうお呼びしてました」
「では大丈夫です。私の前でだけ変えるのも変でしょう、今度ご挨拶だけでもしたいけどお声がかからないなら無理よね」
「いえそれはサンディル様から叱責があってはならないと思い、お戻りになってからと思っておりました。
前公爵夫妻様はアディル様に会いたがっておられます」
「何故サンディル様が?婚姻してる事など知らないでしょうに」
「だからこそです。知らない間に会わせたと叱責される位なら会わさない方が無難だと」
え〜なにそれ。何故義理の両親に会うくらいで怒るのよテモシーとドーランの交互に言われて戸惑ってしまう。
「アディル、僕から説明するね。
ウィルハイム様と奥様のティアラ様が此処を出て別宅に移られたのが6年前なんだけど、その原因がヤキモチなんだよ」
「ヤキモチ?」
「そうなんだ、ウィルハイム様が僕にヤキモチを焼いて収拾つかなくて、影武者でいるのに支障が出てきたからそれこそ王命で爵位継承の上で移られたんだよ」
何なのでしょう?ウィルハイム様って⋯⋯。
王弟よね?
3人の話を纏めるとマーク様がサンディル様の影武者になるべく、仕草や癖、それこそ話し方にも癖はあるし所作にもある。
やはり此処はとティアラ様が張り切って伝授していたのだとか、なのでつきっきりで指導してるので、それにヤキモチを焼いたウィルハイム様がマーク様に子供のような嫌がらせをする様になったんですって。
それで魔術師団長に相談して物理的に離すことにしたんだそうです。
何もなしで転居するわけにもいかず本人不在の爵位継承が行われたんだとか。
王といい王弟といいどうかしてますわ。
この国大丈夫でしょうか?
「それで庭は?」
「はい、本来は新しく公爵家に嫁いで来られた方の采配により庭の作り変えが行われます。
爵位交代の半年前に、裏庭に限り手入れを止めることになっているのです。
ですが、6年前にティアラ様が別宅に移られましたのでその時から手を付けない事にしました。
ウィルハイム様もそれで良いという事でありましたので」
「では、あの庭は私が手入れをしないといけない場所という事なのね」
「左様にございます。ただ今回は事前にまっさらな空き地にする事が叶わなくて申しわけありません」
「いつもは更地になるのかしら?」
「そうなんです。いつもは魔術師団に依頼しましてそうしているのですが、今回はあちらが忙しくしていて頼む事ができなくて途方に暮れていましたらチェリーナ様がアディル様は魔法が使えるので本人に更地にする様に伝えてくれと言われまして⋯。本日マーク様が話す予定でした」
母が犯人でしたか。それは私は抗議できないわね。
でもまっ更な土地に自分好みの庭が作れるなんて最高だわ。
ガゼボも立て直せば良かったのね。
せっかく浄化したから使うけれども。
頭の中がお花畑になっていたらドーランに問われた。
「アディル様はどれ位の魔法が使えるのですか?」
「私はどれぐらいなのかしら?考えた事もないわ。
でもお母様の鍵を解除出来たからお母様より上じゃない?」
「「「!!!」」」
3人が互いに目を合わせながら驚いてる、
母の魔力量がサンディル様と同じ位というのは供給してるのだから知ってるけど、そもそもサンディル様がどれ位なのか私は知らないし、過去戻りが出来るくらいだから魔力量は多いのでしょうけど、今日鑑定してみようかしら?あっ!
「そうでしたわ。今日私マーク様にお願いが合ったのです。聞いていただけませんか?」
「えっ何?」
「魔法を教えてくださいませ」
「無理」
即答で断られました。
なぜでしょうか⋯⋯⋯。
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