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【完結】長い眠りのその後で  作者: maruko
第一章 公爵夫人になりました
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第一話 結婚しました

新連載です。

よろしくお願いします。

鐘がなってます。

”リ〜ンゴ〜ンリ〜ンゴ〜ン”

私の心とは裏腹に本日は晴天なり、麗らかな春の河音が聞こえる中、私と本日旦那様になったサンディル・メイナード様は馬車に乗り新居へ向かっています。


馬車に乗った途端顔を上げるなと仰られたので、私は今も下を向いております。

いい加減クビが疲れましたので、首の付け根あたりを水魔法で作った水球で解しながら旦那様の組んだ膝を眺めております。

旦那様は、私の顔をご存知なのでしょうか?

婚約が決まってから一度もお会いせず、本日の誓の口づけすら拒否されて、私とは面と向かって顔を合わせておりません。

かくいう私も神父様の前に並んだ時チラッと見上げた程度にしか拝見しておりませんが⋯⋯⋯。


馬車の中でもずっ〜と窓の外を見ておられるご様子ですので、そもそも私の顔になど興味がないのでしょう。

この結婚は旦那様の方からの申込みではありましたが、それにはきっと理由があったのでしょう。

私には聞かされておりませんが⋯⋯。


私が婚約者に選ばれた時6つ上の姉キャンベラは苦々しい顔で私を睨みつけ、手当り次第にその辺の物を投げつけて来ましたが、そのような事は日常茶飯事ですのでいつも通りに風魔法でサラッとお返し致しました。

キャンベラは当たった珈琲カップで額から血を流しておりましたが自業自得ですので、そのまま部屋をあとに致しました。

いつもブーメランされるのだからいい加減学べばよろしいのに⋯⋯。


まだまだ新居までは時間が掛かりそうなので、ここで私のお話をさせて頂きます。


私はスパナード伯爵家の三女として生まれました。

ただ、スパナード家は家族の在り方に少々特殊な家でありまして、上二人の姉は私とは血の繋がりは全くありません。

私の父、スパナード伯爵は商才に長けており、かなりの資産家ではありますが、若い時から結婚という物に興味を抱く事はなかったのです。

その事に祖父母は胸を痛め、また一人息子であるが故に婚約の強制を致しました。

これが最悪の結果を招きます。

婚約者の方はかなりの自由恋愛ドンと来いの方だったらしく、婚姻直後に妊娠が発覚しました。

勿論、父の子ではありません。

初夜のベッドに入る寸前で悪阻で吐きまくりまして父を呆然とさせたそうです。

そのまま離縁する事は決まりましたが、この国の法律で半年は手続きが出来ませんでした。

ご実家からは、そのせいで除籍されたのですが、妊婦を放逐するのに罪悪感を覚えた祖母が産まれるまで面倒を見ることにしたそうです。

祖母は、かなりのお人好しなのです。

私なら修道院にそのまま放り込みますが⋯⋯。

皆様お察の通りかもしれませんね、彼女はその後女の子を産み3日後に居なくなりました。

かくして何の血の繋がりもない女児が我が伯爵家に捨てられたのです。

彼女の生家には引き取る様に打診しましたが、知らぬ存ぜぬを貫きました。

かなりの強者でございます。

ここでお人好しの祖母が、どうせ結婚に興味がないのなら、この娘を引き取り親戚から婿を貰い跡継ぎにしたらどうかと、とんでもない提案をしたのですが「それはいい考えだ」と父は納得したそうです。

ホントに伯爵家の事とか何も考えておられない父らしい考えでしょう。

祖母にベタぼれの祖父は二人の言いなりなので、この時にスパナード家の跡取りは縁もゆかりもない長女メリルに決まりました。


自然な流れでメリルの教育全般は祖母主導の元に行われましたので、もう一人お人好しがスパナード家に出来上がりました。

お人好し二人はよく孤児院に慰問に出かけていたそうです。

その中の一人がのちに次女として我が家に引き取られるキャンベラです。

キャンベラは、かなりメリルに付き纏いメリルの同情を買い、また庇護翼をそそる様なあざとい仕草であった為、お人好しのメリルはキャンベラに陥落され、祖母にお強請りしたそうです。

子供が子供をお強請りって⋯⋯私なら張り倒しますが、そこはお人好しの祖母なので、メリルの意思を尊重しました。

結果、父の知らない間に父の戸籍に二人の娘が記載される事になったそうです。

父はてっきり祖父母が引き取ったので祖父母の戸籍に入ると思い、自分の妹が出来たと勘違いしたみたいです。

商才はあっても間抜けな父です。


最悪な婚姻のあと父は益々結婚から遠ざかっていたのですが、5年後に運命の出会いがありました。

のちに妻になる私の母です。

母は王宮魔術師団の所属でした。

師団が休みの時に、父と出会い二人は恋に落ち結婚の約束をしたそうです。

母の実家は名ばかりの候爵家だったので、家格は下ではありましたが資産家の父との婚姻は諸手を上げての大歓迎だったそうです。

しかし、いざ結婚して王家に届けを出したら身に覚えのない子供が二人(いや、一人は身に覚えが微かにあると思われます)記載されており、仰天した父が祖父母に事情を聴きにいき、自分の娘として引き取った事を知ったそうです。

ホントに商才はあっても間抜けな⋯⋯(2度目)。


普通の令嬢なら結婚した相手に隠し子発覚で怒り狂う所ですが、私の母は祖母から事情を聞きまして寛容にも祖父母を許したそうです。

但し、メリルが婿を取り伯爵家を継ぐというのは取り消してほしい、伯爵家は自分の子供に継がせますと宣言されました。

当然と言えば当然ですので、それでその件は丸くおさまりました。

母は結婚してからも仕事を、片手間でしたが続けておりましたので私が生まれたのは父母が結婚してから3年後でした。

生まれた瞬間から伯爵家の跡継ぎとなった私に待ち受けていたのは、キャンベラのイジメでした。

彼女とメリルは父母が結婚した時に祖父母と一緒に別宅で暮らしておりましたが、祖母が病気になってしまい子育てが出来なくなったので本邸にいたそうです。

まぁ事情が事情ですので母は気にかけるつもりはなかったのですが、大人しいメリルはともかくキャンベラは身重の母にかなり付き纏っていたそうです。

赤の他人の、愛情の欠片もない子供ではありますが邪険にする訳にもいかず普通に接していたのですが、私が産まれてキャンベラはヤキモチを妬いたのでしょう、鼻つまみ攻撃が始まりました。

私は母の影響で生まれた時から魔術の素養があったのでしょう、己が命の危機には勝手に魔法が発動して、毎回返り討ちにしていたみたいです。

(この辺は少し成長した頃に乳母に聞きました)

その後も数々のイジメをされましたが魔法という便利な物のおかげで生き長らえております。

魔法がなければ6歳も違えば体の大きさも違うので今頃は冗談なしに生きてなかったかもしれませんね。


ここで皆様にお分かり頂きたいのは、決してメリルとキャンベラを我が家は邪険にはしておりません。

引き取ったからにはしっかりとした教育、一般家庭と同じく食事なども一緒に取っておりましたし、毎年のお誕生日もちゃんとお祝いしておりました。

その辺は私と私の3つ下の弟のアンディとは区別しておりませんでした。

但し、彼女達のお茶会などの付添を母はする事はありませんでした。

祖母の体調がいい時は祖母が、それ以外の時はメリルの乳母がしておりました。

因みにメリルの乳母は同じ家格の伯爵家の出で祖母の親友のご令嬢でしたので、カヴァネスも兼ねて頂きました。


私はメリルとは8歳、キャンベラとは6歳離れておりますので常々一緒に遊ぶという事はなかったのですが、メリルは上手に子守をしてくれたそうです。

メリルの母やその家はとんでもなく恥知らずな家ですが、お人好しの祖母に育てられたからなのでしょうか、メリルには少しもそのような所はなく私と弟とも仲良くしてくれました。

なので私が10歳の時に彼女がバスティナ伯爵家に嫁いだ時には、離れがたく泣いてしまいました。

そんな私達を彼女は優しく抱きしめてくれたのです。

本当の姉妹のように⋯⋯。


あぁそろそろ新居に着くそうです。

2度目の会話?ですね。

私は1度目も今回もハイとしか言っておりませんので、これは果たして会話でしょうか?


この結婚は父母が纏めた物ですので、貴族令嬢の私には家長が決めた事には従う義務があります。

弟が生まれたので後継ぎからは解放されましたが、婚姻は親に従うべきと学んで来ました。

それでも幸せな結婚をしたいなと子供の頃から願うのはどの貴族令嬢でも同じではないでしょうか?

多分に漏れず私もそう思っておりました。


ただ、本日ここまでの流れで私には不安しかありません。

そしてまた思いました。

商才はあるけれど間抜けな⋯⋯(3度目)

あぁ彼は自分が結婚に興味がなかったから娘も同じと思ってるのでしょうか?

でも父は私の幸せを願ってると言ってましが⋯⋯。


ハァため息と共に今は間抜けな父を思い歯噛みしております。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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