そうだね、可哀想ってことは。
「兄上!まだ馬鹿なことを言ってるんですか!」
「レイカ様にはとっくに断られてるでしょう!」
セバスチャンの弟たち、ツインズが現れた。
「いや、しかし、彼女の位が上れば
父上達だって、」
「…以前、王妃様の怒りでうちがお取り潰しになろうかと、もちろん兄上も失職の危機にあった時、」
「レイカ様が助けて下さったと聞きました。
それなのに。うちの父たちは感謝もせず、」
「兄上が結婚したいと言ったら大反対。」
「しかも、他の縁談を用意して、そこのお嬢様が
レイカ様に嫌がらせをしようとして返り討ち。」
「申し訳ありません。」
「兄に変わってお詫び致します。」
交代で謝罪してくれる、マーズ&マーグ。
「だいたい兄上はリード様のご紹介のご令嬢と
お付き合いなさってますよね。」
「形だけだよ。」
ええー⁈
ドン引きする一同。
「レイカ様、私は。
いつもリード様の近くにいたので、媚を売って寄ってくる令嬢たちには慣れていました。
…もちろん目的は私でなくて、私と仲良くなってリード様に取り入りたい人がほとんどでしたけど。」
それで?
「だけどね、レイカ様。あなたは違った。あなたは私にもリード様にも興味はなかった。
ただ王妃様のお相手をしていただけでした。
そして、あっさりばっさりとした言動。
あなたといると楽しいんです。」
しまった!いつのまにか、
「おもしれー女」
の枠にはいってしまっていたのかっ!!
「兄上、それじゃ今お付き合いされてる、
ジェーン・ドゥ令嬢がお気の毒ですっ!」
うわ、お名前もお気の毒かも。
「それにね!兄上はまだ伯爵家の三男にしか過ぎないんですよ!」
「それをまあ、ご自分で子爵になられるレイカ様にどこまでも上からの目線!」
本当にそうだよ。
良くあんな価値観の家庭で、君らはまともに育ったなあ。
えらい、えらいよ!ゴット○ーズ兄弟。
「それは今関係ないだろ?」
「あー、もう!
レイカ嬢、引導を渡してやって下さい!」
言いたいことはある、正直、
ののしってしまいたい。
1番私を差別していたのはセバスチャンさん自身だと。
だけど。それでは何も解決しない。
「セバスチャンさん、
私は常々おもってたんですけど、」
私の中の整くんよ、出てこい。
「何を常々思ってたんですか?」
よし、ノリいいぞ。
「仕事仲間って、同性だと上手くいくのに、
どうして異性だとややこしくなるんでしょうね?」
「え?」
「だってそうじゃないですか。
最初、私が貴方に助け舟を出した。
貴方はそれに感謝をした。
これが私が貴方より、歳上でしかも同じ部署の男性だったとします。
貴方は私に感謝し、慕ってくれたはずです。
兄貴までは呼ばなくても、先輩と慕ってくれて。
その後も細かな気配りをして仕事をスムーズにしてくれたのでは。」
「…。」
「またはその人がわたしと同じ、料理担当の場合。
直接な業務のかかわりはないから、
その場で感謝をしてもそれっきりだと思うんです。」
双子たちも神妙に聞いている。
「しかし、今回私は異性だった。しかも貴方と年齢的にも結婚可能だった。貴方は私に好意を持った。
それで、普段は関わらない業務でもある筈だったにもかかわらず、
貴方は根まわしをしたり、余計ないざこざを起こした。
ねえ。私はただ仕事がしたかっただけなんですよ。
どうか、ビジネス(仕事)と色恋を一緒になさらぬよう。」
セク○○ー部長だよ、私は。
「……。」
「初めにお仕事を下さったのは感謝しています。
しかし、その後の兵糧攻めはいただけません。
あのお金でやっていけましたか?」
「…すみませんでした。自分の身に降りかかってわかりました。」
「ああ、あの時!」
「兄上がいつもの美容院に行けなくて、激安カットで髪がガタガタになってたときかな!」
「半額シールを柱のかげから貼られるのを待ってらした時でしたね!」
わあ、もうやめてあげて。
セバスチャンのライフはゼロよ。
「ではこれからは同僚としてやっていきましょう。
お互い王妃様の所では顔を合わせるのですから。」
それから、と声を強めていった。
「貴方と結婚することはありません。」
「はい。」
というセバスチャンの声はかすれていた。
ふう、これで大丈夫だと良いんだけど。
つるかめつるかめ。
「助け船をだそうとしたけど、自分で上手くやれたみたいね。感心、感心。」
寮の手前で、アンちゃんに声をかけられた。
アラ、ミテタノネー。
「これで収まるといいけどさ。」
「そうだねえ、あいつ面倒くさいやつだからなあ。
で、叙勲受けるの?」
「なんかそれも面倒になってきたわ。」
「では、俺が連れ出してあげようか。」
オネエ言葉は封印されてる。
でも、目はとても涼やかだ。
その目をじっと見つめ返した。
「出て行きたいときは、自分で出れるよ。
でもね、その時は
一緒に街で食堂をやらない?」
うん、多分家族愛に近いと思う。
自分が言ったことがかえってきたかな。
「あっ…⁈ああ!!」
アンちゃんは目を丸くした。
「…いいね、それは!」
そしてくしゃっとした顔で笑った。
その表情は歳相応でとても晴々としていた。
終。
とりあえずこれで終わりです。
途中まではセバスチャンエンドのつもりでした。
どうしてこうなった?
この後番外編があります。
読んで下さった皆さんに感謝を。




