あにいもうと
とりあえず兄を寮に連れていった。
一応、親族なら男性もはいれる。
寮母さんもチラリと見ただけで、
「あらあ?お兄さん??」
あまり自覚はないけどね、似てるんだろう。
アンちゃんも一緒に運んでくれた。
でなきゃ、ぐったりした18歳男性を
私ひとりじゃ運べない。
「なんかまだ悪い夢を見てるような気がする。」
「そうだっけ?猫好きな女の子が現れた!
あと、猫可愛い、って感じなだけでは。」
「お前なあ、俺はあちこち無礼をして、首が飛ばないかって、心配なんだよ。
王太子様にあったのに、平伏もご挨拶もしなかったんだ。」
ああ、あの若鷹軍団。
「それに、伝説のオー・ギン様と
ヤー・シチ様?だよな?
俺ら下っ端の護衛は影を踏むことも出来ないと言う?」
「あら、ウチの義両親はそんな風に言われてるのね?ふふふ、新鮮な反応だわ。」
「ここにも、伝説がいたかあーーー!!!」
頭を抱えてうずくまる兄。
「そういえばさ、貴方お名前なんだっけ??」
「はっ!!申し訳ありません、
それがし、
ら、ら、ランド・モルドールと申しますれば!!」
「ラ・ラ・ランド?」
あー、映画見にいったな。
それよりセリフが武士になってるよ。
「ウチの次兄のランドです、アンディ様。」
「知ってるわよーーん。ちょっとした
イジワルよーん。」
何故だ。
「でもサ、あんまり気にしなくていいわヨ。
その顔見ればお嬢の関係者ってわかるし。
少なくともウチの親は気にしないワ。
あと、ワタシもね。
まあ、アメリアナ様とアラン様はわかんないけど。」
「ひえええーっ、」
散々脅してアンディ様は出ていった。
「まあまあ、アンディ様が最後まで
オネエ言葉だったでしょ、だから大丈夫。」
「そ、そうなのか??安心していいんだなっ!」
多分ね。
「あなたとお兄さんに面会希望ですって。」
寮長からよばれた。
一応、面会用の応接室があるのだ。
カレーヌ様もこういうところを使ってくれればねえ。
「レイカさん、レイカさんのお兄さん。」
「あれ?セバスチャンさん?何か急用でした?
お呼びでしたら、馳せさんじましたよ。
王妃様に何か?」
「いいえ、せっかくの休暇ですから楽しんで下さいね。
私はただ、お兄様にご挨拶に来ただけですよ。」
にこにこにこ。
「あ、あの?」
「あのね、ランド兄さん。
こちらはセバスチャンさん。リード王子様の
侍従で、乳兄弟の方なの。
私の仕事の斡旋をしてくださったのよ。」
「いえ。大したことは。お仕事の紹介と
引っ越しのお世話をしただけです。
その時、長兄のサンド様とお母様には
ご挨拶はしましたけども。
ランド様には初対面ですよね?」
「そ、そ、そ、それは愚昧がずいぶんとお世話に
な、なりもうして。」
あーあ。リード様の乳兄弟とかのワードに
びびってまた武士になってるよ。
「それに私とレイカさんが結婚されば、
義兄さんですから、ね。
ご挨拶大事かなと。」
「は、はいいい??」
「結婚しましょう、レイカさん。」
「私にはもったいなさすぎますので、お断りいたします。」
「おまえっ!そんな!ばっさりあっさり!!」
いやね、こういうのははっきり断らないと、
え、結構です、
と言えば、結構なんですね?
え、いいです、
と言えば、いいんですね、となると。
迷惑電話セールスに気をつけてって。
何がテレビでやってたなー。
2000年ジャストくらいが
マンションどうですかと、墓地買いませんかの
電話がやたら、かかってきたよ。
「あははは。今日もダメでしたか?」
「お前、いつも何やってんの?」
「ランド兄さん、うちから聞いてないの?
私は結婚をしない自由を王様からもらってるの。」
「それは、なんか聞いたことがある。
親に圧をかけてきた
後妻にこいとか、子沢山の家系だから嫁にしてあげるとか言った話をつぶしてくださったとか。」
「それに、セバスチャンさん。
男爵家の娘なんかけしからんと御実家に言われてるんでしょ。
ご縁がなかったという事で。」
「それがなんか軟化してきてるんですよ。ははっ。♪」
洒落?
それに舞浜のネズミっぽい笑いはやめろ。
「ランド様から見ても
私はどうでしょうか?伯爵家でも三男ですし、
下に弟も2人います。
タバコはすいませんよ。」
「うっ、条件はなかなか。」
「ランド兄さん!」
「それでは、私はここで。ごゆっくり兄弟水いらずでお過ごし下さい。」
「あっハイ。」
バタン。
「なんかアンディ様とは違った怖さを
持つ方だな。くわばら。くわばら。」
その通り。
それにしても、くわばらってリアルでいう人、
初めて見たよ、兄さん。




