どいつも、こいつも。
「セバスチャン?」
「はい、王妃様。」
「あなた、リードのお付きじゃない。
ここではなくて、リードがいる離宮づとめをなさい。」
「はい、あの。」
私をチラチラ見るな。
「どうせ、リードは毎日私に会いにくるでしょ。それについてくるんでしょ?」
「物理的に離されたのか。ざまあ。ウフフ。」
あれから一カ月。
アンちゃんの顔の傷は大分薄くなって来た。
「しかも、私にはしばらくエリーフラワー様の世話をなさい。だものね。」
なかなかエリーフラワー様のつわりは終わらない。
とりあえず一週間、そちらにいろとの
お達しが出た。
着替えとか持っての移動だ。
知らないうちに横にアンちゃんが現れて、
荷物を持ってくれた。
「これがウワサの昆布なワケ??」
「そう。ヴィヴィアンナ様たちが見つけてくれたの。
すごいよね、私がいくら探しても見つからなかったのに。」
新婚旅行で海辺の町に着いたとき、
聞いてくれたそうだ。
「昆布?と言うのかしら?
海藻?を干して、ダシがでるとか??知らないかしら?」
「母上も欲しがっていらした。以前使ってたとか?
そういう事を知ってるものはいないか??」
麗人2人のパワーはすごい。
一時間ほど後に、
「100年前の文献にございました。」
「古老が小さい頃作ってるのを見たと言っております。」
「小学校の理科室に標本がありました。
イタズラで人体模型に巻かれてセクシーな衣装になっております。」
「ありがとう。」
お付きの侍女から聞いたが、ヴィヴィアンナ様の
微笑みに一同から、
ほーっ♡とため息が出たそうだ。
それで先日海辺のまちから送られてきた。
採取して急ぎ作らせたらしい。
小さな穴は、ウニがかじった印だ。
高級なやつだと、某グルメ漫画で読んだ。
(うちの食堂にも、置いてたのよ、某グルメ漫画。)
ちなみに床屋にゴルゴが多いような気がするのは
何故か。
「何しろ私がぽろっと言った言葉を覚えていて、
ちゃんと探してくださるのが素晴らしい。」
「ヴィヴィアンナ様には人の上に立つ力量と資質がおありになるわ。」
そして、自分の頬にそっと触れて、
「エリーフラワー様にもね。」
アンちゃんはポツンといった。
「カレーヌ姫には気の毒だけど、相手が悪いわね。
なんか、あの子見てるとほっとけなくて。」
「まあ、可愛いらしい子ですよね。
疲れますけど。」
「あの子がお嬢とぎゃーぎゃーやってるの見て、
ああ、素にもどってて、楽しそうだと、
子供らしく解放されててよかったと思ったのよ。」
おや、語りだしたぞ。
「リード様とセバスが、歩いてる後を
ちょこちょことついていく。
転んでベソをかいていた、あの姿が、
忘れられないのよ。」
ああ、わかる。
三姉妹のウチの子達を思い出す。
そうか、アンちゃんにとってカレーヌ様は
いつまでも目が離せない小さい子供なのか。
「私は以前はカレーヌ様のお家で働いてたのよ。」
「あら、そうだったんですか。」
「というか、そこの馬番夫婦の子供だったわけ。
暴れ馬からアラン様をお助けしたことがあってね。
たまたまリード様とカレーヌ様に会いにきてたの。」
「それで取り立てられた?」
「もう、親もいなかったから。
…色々あってね。
で、ヤー・シチ夫婦が面倒みてくれた。」
ふふんと笑うアンちゃん。
「アラン様より5つも上よ、私。
子供の頃の栄養状態のせいね?
同じくらいの歳に見えるから
護衛として学校でお守りしてたわけ。
でもさーセバスはね、馬番の子供が大きな顔して、
王太子のアラン様の近くにいるのが
許せないってさ。けっ、
くだんないよな、あいつ。」
昆布はエリーフラワー様に好評だった。
「美味しい!湯豆腐も美味しい!出汁きいてる!
生臭くなーいー!あっさりー、胃に優しい!
ヴィヴィアンナ様、ありがとー!」
「100年前の文書にあったと言うことですから、
その頃に前世日本人がいたのでしょうね、
それで、味噌、しょうゆ、豆腐を残した。
昆布は取れるのが北の方の海ですから、
何かの理由で廃れたのでしょう。」
「あとは、鰹節って言ってたわね?」
「一から開発するのが難しいですから。蒸して?カビをつけて?うーんん?」
しばらく、お世話をした。
昆布出汁のうどんがお気に入りだ。
なので常にうどんは打って寝かせている。
一心不乱にうどんを打っていると、
「あの、レイカ殿。ちょっとお話が。」
「エドワード様?
あ、うどんを打つのを手伝ってくださるんですね、
ワア。ウレシイ。
そっかー、覚えておくと、
私がいないときもエリーフラワー様に
出せますからね。」
「それもそうでござるな、よし、手が空いてるものも集まるでごわす。」
わらわらわら
むくつけき男たちの集団があらわれた!
野生のゴーリキーもどきの固まりだ!
一気に室内の気温があがった!
「こ、こんなにどこに?」
「エリーフラワーは国の宝でござるからな。
護衛団でごわす。」
えっほ、うっほ、半裸でポーズとるんじゃない。
あら、窓ガラスに結露がついてきたわ?
「あー、はい、では始めましょう。」
「おっっっす!!」
筋肉自慢たちが、
だしーん、だしーんとうどんをこねる。
足でふむ。
※衛生には充分気をつけて、
清潔な布の上から新品の靴下着用の上、
制作に励んでおります。
その後みんなで釜揚げうどんをつついた。
「自分で打ったうどんは特別…。
でなくて!
はぐらかないでくだされ!」
ちっ。
気づいたか。
ここんとこウロウロしてたのよ、エドワード様。
何か言いたげで。
セバスチャンさんのことだな。きっと。
「セバスチャンのことでござるが、」
ホイ、きた。
「あれは、アレでいい奴なので。
確かに腹黒いところや、根回しもしておりましたが、レイカ様を助けようとしてたことは
間違いござらん。」
「お仕事をくれた事は感謝してます。」
「おお!そうでありましょう!
それに伯爵家の三男です。家柄は良いけど、
気楽な立場。リード様や王妃様とのご関係も悪くはござらん。」
「お仕事はちゃんとやってらっしゃると思います。」
「そうでしょう!そうでしょう!
見かけだって悪くはないでごわす。
近くにリード様がいるから気の毒ですけども、
焦茶の髪で目の色は薄荷色。」
(薄荷色の目。
フォスフォフィライトかな。?
モース硬度三半。)
「ちょっと、ヘタレなところはあるが、
こほん。
穏やかな気質でござる。」
「そう思います。」
「こんなことを言うのはどうかと思いまするが、
結婚を無理にしなくていいのは、
わかっており申す。
ですが、
ご両親からご紹介される、
どこぞのいちげん様よりも、
あやつが良いと思うのですが。」
「あの。」
「とにかく、アンディ殿からささやかれた
ネガティブな事に振り回されてないでくだされ。
伏して、お頼み申す。」
最後、某私鉄の席を詰めて下さいキャンペーンみたいなことを行って
エドワードはさっていった。
まったく。
ニッチもサッチも、どうにも
ブルドッグかな。
 




