どんどんどん、ベタ、ベッタ。
お二人のご成婚は半年後となった。
物すごい勢いで準備が進められている。
ドレスは決まった、料理も決まった、
各国に招待状も送った。
第二王子様なんだけどそれはその、
目もくらむお美しさのお二人。
一目見たいと、かなりの参加希望の人数がいらっしゃる。国の内外からね。
昔は日本もスター同志の結婚はテレビで中継してたもんだ。
(今では考えられないと娘に言われた。)
ご成婚パレードを目当てに旅行者もくる。
ホテルもすっかり埋まってるとか。
「それでもね、アランのときほどは派手に出来ないから。」
パレードのルートはアラン様のこれからの予定のパレードの半分なのそうだ。
そこは第一王子に対する忖度らしい。
グッズの販売も始まりもう、飛ぶように売れてるとか。私が行ったとおりでしょ。ふふん。
「ほら、コレ見て??」
「…!!!」
な、な、なんと、王妃様こと阿部マルガリータ先生の
生原稿??
ちょっと少女漫画風テイストになった
お二人である!
「前世振りだけどちゃんと描けたかしら?」
ウヒョオオオ!!!
「美です!素敵です!このカラーとか印刷みたいに見えます!
どうしたらこんな色が出せるんですか!!
えええ!この重厚なおふたりのお衣装。
ティアラについた、宝石のひとつひとつまで!!
質感この上なし!!
何よりリード様の目の透明さ、美しさ!!
ヴィヴィアンナ様の髪のひとふさ、ひとふさまで
丁寧にかかれて!!
すごいすごいすごい素敵!!」
「一応プロだったし。
あ、ほらコレね。
前世のヒット作のヒロインの聖子ちゃん。
描いてサイン入れといたわ。
ハイ、あげる。
あ、あら?大変、。」
「あっ!レイカ嬢!!
お気を確かにっ!!」
鼻血を吹いて後ろにぶっ倒れた私。
興奮すると鼻血が出るって本当なんだな。
エドワード様が私と床のあいだにスライディングして、
私が頭を打つのを阻止してくれた。
エリーフラワー様は鼻血が絵につかないよう、さっと
ハンカチで鼻を押さえてくれた。
それ、いつも噛んでる奴ですよね。
「大丈夫、未使用よ!」
心が読めるんですか?
セバスチャン様は私を抱きおこしてくれた。
皆さんありがとう。
私は死んでも(死んでないが)絵を離しませんでした。
キグチコヘイって浮かんたけど何だろか。
「ありがとうございます!!
家宝にします!!」
「あら、大袈裟ね。」
いやいやいや。超人気漫画家の(元だが)
生原稿。
おろそかにできるものか。
「それでね。ひさしぶりに描いたら筆が乗っちゃってね。」
ほほほと笑う王妃様から
紙を綴ったものを渡された。
「コレ、ネームというか絵コンテっていうか、
まあ、ざっくりした下書きなのよ。」
「良いと思います!!」
それはリード様とヴィヴィアンナ様をモデルにした
漫画だった。
さっきの美麗一枚絵は表紙なのだそうだ。
まずお二人の出会いから
始まる。
バラの花びら舞い散る中、
たたずむリード様。憂いをおびた瞳が美しい。
セリフ「ああ、何か素晴らしい乙女との出会いがないものだろうか??」
そこへお花のように美しいヴィヴィアンナ様が
子猫と戯れて現れる
セリフ「あら、ダメよ、キティ。そこはお城の奥の庭よ、(説明)
見つかったら叱られちゃうわ…」
「きゃっ。」
「うわっ。」
猫を追いかけたヴィヴィアンナ様は
アンニュイな物思いにふけっていた
リード様にぶつかった。
花びら散る中、運命の2人は恋に落ちたのだったー!
おお、もなむーる、じゅてーむ、
しるふぶれ!だわっ!!
「いい!いいですっ!いい!
少女漫画の定番ですっ!!」
このベタさがたまらん。
「ほほほ。あなたならそう言ってくれると思っていたわ。」
「こんな事実はなかったのでは?」
「リード様とヴィヴィアンナ様がお城の中庭におでましになったのは先月でこざった。
咲いていたのは、ひまわりで。」
「ひまわりの迷路で熱中症になりかかってらしたのよね。
私の特製ドリンクでお助けしたの。」
最近ポカリっぽいのが流通してたと思ったら
開発したのはやはりエリーフラワー様か。
「個人の見解です。」
そうそう、少しでも本当のことを混ぜるのか
フィクションの鉄則である。
クライマックス。
ストーカーと化した、クズ野郎
仮名 カス・カスカス・ダンスではなく、
仮名 カス・カス男爵が現れて
ヴィヴィアンナ様にセクハラを繰り出す。
舞踏会で無理無理手を引いて踊るカス男爵。
セリフ「ふふふ、あなたのバラのような唇を我が物に。」
といってアゴクイをかまそうとする。
セリフ「ああっ!いけません!!」
そこへ颯爽と現れる美しき王子リード様。
セリフ「私のヴィヴィアンナに何をする!」
見開きでコークスクリューパンチをカス野郎の
顔におみまいするのだ!
カッコ良さの極みだ!
カス野郎は空の彼方へ飛んでいく!ピカッ。
「素敵です!完璧です!!」
「ほほほ、そうでしょう。私も良く描けたと思ってるわ。」
「これは、その。」
「王子様が不審者を
撃退されたのは眼力のみを使われたとうかがっており申す。」
「しかも学園で。夜会ではなかったのでは?
今日はお二人は席を外してらっしゃるけど、
事実との相違に意義を申し立てられるのではないですか?」
「事実を意訳したのよ。」
結局漫画は完成し、出版された。
美麗な絵と素敵なストーリーにあっという間に
ベストセラーとなった。
ちなみに王子様は
「母上、流石です、素敵です!」
筋金入りのマザコンなのだ。文句をつけたりするわけがない。
ヴィヴィアンナ様は。
「こんな事あったかしら?でも、まあいいですわ。」
とサラリと流してしまわれたそうだ。




