まー、そのー、いわゆるひとつの結末
とりあえずお休みをもらって実家に帰った。
「あなたに釣り書が10枚程来ていたんだけど。」
「もっとあるみたいだけど?」
「それみんな、カスティン君から。」
数うちゃあたる抽選葉書じゃないんだから。
げえっ、色とりどりのペンを使って、熊手まで描いてある!
こんなキモイものはお焚き上げだっ!!
夏の暖炉よ、燃えろ燃えろ!
と、懐かしい飴少女のスコットランドでのセリフを
反芻していたところ、母がやってきた。
「他の方はどうするの?」
「とりあえず断っといて。」
うちは兄弟が多い。私1人くらい結婚しなくても
良かろう。
「あんな美形の王子様を見てるから目が肥えちゃったのかねえ。」
それは無い。
「キリッとしてらして、流石に王家の風格がおありで。」
母の夢を壊したくないから余計なことは言わない、お口にチャック。
「さア、あとは式をあげるだけね。」
ここにも、頭お花ばたけの母親が。
しかし、この方はもったいなくも国母である。
影響力は半端ないのである。
「衣装を決めなくちゃ♪るんるるん♫」
花の子みたいにルンルンしてらっしゃる。
「母上が嬉しいと私も嬉しいです。」
ブレないマザコンぶりである。
ヴィヴィアンナ様も花のように笑ってらっしゃる。
「王家が費用を出して下さるのなら。
何でも着ます。」
……どこのお家にも家庭の事情て奴があるのね。
「レイカ嬢、ちょっと、ちょっと、ちょっと。」
某双子お笑いみたいな事言って、セバスチャンに手招きされた。
「何か?」
「あの、カレーヌ様について何か聞いてませんか?」
えーと、誰だっけ??
ああ、王子様と幼馴染の微笑みの姫か。
「いいえ?」
「そうですか。」
何か?
「私から聞いたって言わないでくださいね。
王妃様、あれで強引な所があるんです。」
それは知ってる。
「レイカ様には例外的に甘いんですよ。」
それは知らなかった。
「カレーヌ様にも王子様と同じくらいの時期に
結婚させて、子供も同じくらいに出来てほしい。
つまり、乳母にさせたいとのお考えです。」
……。
この世界は絶対君主制である。
また、王家の子供には乳母が必要なのも、わかる。
昔からの知り合いで気心が知れているのもいいのだろう。
「カレーヌ様はあれで、貴族らしい感覚をお持ちだったんですよ。」
「はあ。」
「王子さまのお妃は1人では荷が重いと思います。
外交は美しいヴィヴィアンナ様で。
政治のお手伝いは
才女のエリーフラワー様で。
私は家庭で王子様を癒しますわ。
笑顔と美味しい手料理で。
男の方はお仕事相手と安らぎの相手は違うと思いますの。と、
こう、おっしゃったんです。
王子様との2回目の面接で。
……その時は幸いなことに王妃様は同席されてませんでした。」
あれか。メガネの少年探偵は
事件のときは
武芸の達人の僕っ子や
頭が切れる科学者少女を頼りにするけれど、
本命は幼馴染の料理上手なのである。
(多分)
それと同じようなことを言いたいのか。
しかしリード様は違ったのだ。
彼にはそれを上回るトラウマがある。
「リード様は「それは側妃を持てということかい?」
と、妙に優しくおっしゃいました。
私は生きた心地がしませんでした。」
そうだろうな。
「父にも三人妻がおりますし。
つまらぬ嫉妬はするな、と教育されてますの。
でも、私が正妃でお願いしますわ。私たちには
何年もキズナがありますもの、と。」
あああ。
「王子様は
「そなたは五年前のことを……。
いや、何も言うまい。と言われてそれはそれは
悲しい目をなさって。」
見限ったんだな。長い付き合いの姫を。
「ちゃんと王族らしく出来る王子様に心から感心しました。
成長なさった、なと。」
成長もいいが心の傷をケアして差し上げろ。
それでお相手はヴィヴィアンナ様になったんだな。
消去法ではないだろうけども。
まあ、今が幸せそうで何よりだ。
「だけど、多分、それが王妃様にバレていたのです。」
忍びのスケさんカクさんの仕業か。
「それでですね、
私を先日呼びつけられまして、
あなたと、同じような考え方の姫がいたようね。
あら、気が会うんじゃない??
結婚すれば??
カレーヌはリードの子の乳母にしましょう。
親子二代の乳母って良くない??って。
どうせ貴方はリードの側近で一生側にいるんだし??と、仰せになりました!」
あー、王妃様は許してなかったのか。
セバスチャンは青い顔をして俯いている。
怖い。確かに怖い。
しかし、冷静になって考えてみよう。
彼女は王子妃の本命になるくらいの家柄だ。
みかけだって、そりゃ、あのヴィヴィアンナ様と比べちゃ気の毒だが、
某大人数アイドルグループなら
トップクラスになれるタイプだ。
可愛らしいしニコニコして人をほっこりさせる。
王子様お妃から脱落したけれども、
求婚者は二ケタ後半だと聞いてる。
そんな高嶺の花を
娶られるなら万々歳ではなかろうか。
「……カレーヌ様はそれを聞いて
失踪なさったそうです…」
ええー、、それは、、
何と言ったらいいか、、えー。
それで私に居場所とかの心あたりとか、ウワサを聞きに来たのか。
同じ学年でもクラスちがうし、全然親しくないぞ。
昔、懸賞に当たる裏技っていって、
熊手のイラスト添えてみましょうってあったんですよ。
運だかあたりだかをかき集めるとか。
私はやったことないですが、
カラフルなペンは使いました。
今は厳正なる抽選が多いですから、効果はあまりないかと。




