婚約者決まったって本当ですか。
この前に 思いこんだらと思いこんだらの後
と言う作品があります。
先に読んでくれるとわかりやすいです。
よろしくお願いします。
私、男爵令嬢レイカ(日本人の前世あり)久しぶりに学園に来ていた。
王妃様(やはり元日本人)の侍女兼話し相手をしていたが、一応、まだここの一年生である。花も恥じらう16歳だ。
学生の本分は勉強である。
それに王妃様のお相手は、多分面白枠である。
今は元日本人ということでお互いの思い出話で盛り上がっているが、そろそろ飽きてこられるのでは。
そうすると侍女のお仕事なんてほとんどしてない。
見習いのようなもの。
そんなふわふわした雇用では心もとない。
ちゃんと勉強して卒業せねば。
学歴絶対。の昭和の日本で生まれ育った世代であるからして。
そんなこんなで図書館で試験勉強に励む毎日だった。
「やあ、久しぶりじゃないか。」
「げ。」
隣の領地の男爵子息。
赤毛の悪魔が現れた。
カスティン・パーツ。
こいつはいじめっ子である。乱暴ものである。
ハッキリ言って嫌いだが、
やたら絡んでくる。
私の前世の記憶が戻ったのはこいつに5歳のとき、
池に突き落とされたからだ。
それから、
「責任とって世話してやる」
と言ってつきまとう。
前世で還暦近かった今の記憶ならわかる。
こいつはツンデレだ。
好きな子をいじめて気を引きたい奴だ。
永遠♾️の小学生男子だ。迷惑である。
「なんか、お城で侍女見習いやってるんだって?」
「それが何か?」
「そういえばもうすぐリード第二王子様のお相手が決まるんだって?」
「知りませんよ。失礼します。」
うん、めちゃくちゃ知ってる。
すごく相談も受けた。
「あ、待てよ」
待つものか。
「あ、レイカ嬢。お城の侍女長がご用があるとかで、すぐ登城して下さい。さあ。疾く早く!」
「あ、セバスチャン様」
「王子様の侍従様が何故ここに。」
「さあ、さあ、さあ!」
背中を押されて退場した。
そのまま馬車に乗って登城ルートへ。
「侍女長呼び出しは嘘ですが、このままお城へ参りましょう。」
「助けて下さったのですか?」
「ええ。まもなく王子様のお相手が発表されますね。
それで今まで超美人のヴィヴィアンナ様、
王子妃に決まってなけりゃ、ワンチャンあるんじゃね?
みたいな身の程知らずが沢山いたわけですよ。」
「ええ。」
「それがどうも、王子妃になりそうだ。
そろそろ現実を見なきゃいけない。
するとね、最近貴女の評判がいいんです。
結婚相手として。」
「まあ??」
「さっきの彼もそうですが、
言ってました。ちょうどいいと。」
「ちょうどいいとは?」
「私が言った訳ではないですからね、
怒んないでくださいよ。
ほどほどの見かけ。
ほどほどの成績。
実家もほどほど。
こちらが卑屈にならないし、逆にいばれるレベル。
(だから怒んないで)
兄が2人、姉もふたり。多産系だ、石女ではないだろう、と。
(顔色悪いですよ?)
王子様が婚約発表する前にライバルが動く前に
申し込む。
本当は美人と結婚したいけど現実はこんなもんだよね、と。」
「あっのーカスティン!!
カス野郎!!」
自分でも驚くくらい、地を這うような血を吐くような声が出た。
ふざけやがって!!
アイツを殴りに行こうかっ!
ヤー!ヤー!ヤーヤー!
「だから彼が申し込む前に助けたじゃないですか!!
あなたには恩がありますから!」
こないだ一家殲滅をかわしたやつか。
五日ぶりに王妃さまのとこらに行くと
物すごく歓迎された。
「アナタ、料理ツクレル?
イエ、食堂ッテイッテタノコト。
ワタシニ、食ベサセル、ヨロシ?」
「母上は最近夏バテでなぁ、食欲がないんだ。
和食が食べたいらしいのだが。」
何故、謎の中国人みたいになってるんだ。
変わった夏バテだ。
「肉ジャガ、キンピラ。」
彼氏のリクエストなの、きゃっ♡て奴のラインナップだな。
この世界には醤油と味噌はある。
(でも昆布とかつお節はない。)
それになんと!
王妃様のお部屋にミニキッチンが出来てるじゃない?!
お城の厨房でなくてここで作るのね。
「肉じゃがは牛肉ですか?豚肉ですか??地方によって違うんで。」
「ウシ。」
とりあえず牛肉でお作りする。
きんぴらは多分、レンコンでなくてごぼうでいいだろう。
味噌汁は米味噌が用意されてたんでコレでつくる。
豆腐はあったっけ?
料理作るのは前世以来だ。
具はじゃがいもと玉ねぎと。
え、肉じゃがとかぶる?知らん知らん。
小ネギをちらす。
「ああ〜美味しい〜。五臓六腑に染み渡るわ。」
それは味噌汁よりもお酒では。
「王妃さま。肉じゃがときんぴらの毒見もすみました。」
セバスチャンよ、そんなのもするの。
「うみゃい、うみゃい。」
マグロを食べる猫みたいなお声をだして、王妃様は完食された。
「やっと母上がお食事をお取りに。ハラハラ。」
ハラスメントかと思ったら美形王子様の落涙の音か。
「ねえ、レイカ。前世は食堂をやってらしたのよね。」
「ええ、猫の目食堂といいます。」
*この作品はフィクションです。実際にそんな食堂があっても関係ありません。
「確かお子様は、るい(瑠衣)ひとみ(仁美)あい(亜衣)の三姉妹でいらっしゃるのよね。」
「夫ははやと(早矢斗)です。」
「そっ、そう。あなたのお名前はなんだったの。」
「みき(未来)です。」
*この作品はフィクションです。他の作品と関係ありません。
「あ、あたくしね、前世でも料理ができなくて。
いつも人を雇ってたのよ。」
話題変えたな。
「稼いでらしたんですものね。」
「そう、そうね。だからこちらの料理人に
和食の作り方を伝えて作ってもらうってできなくってね。」
「何のお仕事されてたんですか?」
「漫画家よ。
阿部マルガリータというの。ご存じ?
そこそこ売れてだと思うんだけど。」
ええっ!!ええええええー!
「ウヒョ〜〜!!オヒョー!!ウヒョオヒョ!!
フーーー!!ウウウー!!!
やだっ、すごいファンです!!
全巻持ってます!握手してください、サインしてください、家宝にします、「セイ!SEY!聖ゴー!ゴー!ゴー!!レディゴー」ですよね、代表作。サイコーです。あれは女子高校生の聖子ちゃんが異世界でヒロインになって、七色の衣装にチェンジして敵とバトルして、タケールー王子とイチャラブですよね。最高です、きゅんでした、
あ、そうかタケールー王子は健くんだったんですか、それでその当時しばらく休載されてたんですね、ううう、ご愁傷様でした」
とそのままノンブレスで言い切って、王妃さまの手をブンブン振り回した。
「私でよければいつでもお料理をお作りしますっ、
呼びつけてくださいませっ!!」
「レイカ嬢、母上の手を離してくれないか。」
「あ、ありがとう、拙作を読んでくれてたのね。
なんか、藤子不二雄A先生の感嘆詞を思い出す興奮の言葉ありがとう。」
「ええ、マルガリータ先生が亡くなったときは泣いちゃいました。
…あっ!
す、すみません。」
「いいのよ、みきさんはあたくしより長生きしたのね。」
「あー、でもちょびっとですよ、ちょびっと。
半年ぐらいっす、誤差範囲っす。」
こほん。
セバスチャンが口を開く。
「これでレイカ嬢は、王妃さまのお食事係兼、お話相手、時々侍女と言うことでよろしいですか?」
「ええ。よろしくてよ。」
「良かったですね?正式に、いや、これまでも正式と言えば正式だったんですが。
基本給もあがりますし、資格手当なんかも。
調理師の資格お待ちだったんでしょ。コチラのも取り直してくださいね。
学校は卒業してもしなくても構いません。
お城に就職が決まったんですから。寮に住めますよ。意に沿わない縁談も断り安くなりますし。」
「まー!嫌な縁談が??」
「ええ。かくかくしかじか。」
「女を馬鹿にしてるわね。カス野郎。」
その通りですが。
でも、女生徒皆面接お見合いも縁談押し付けと変わらない気がするけども、、げふん、げふん。
「それでは御自宅に行って説明しましょう。引っ越しの手配も忘れずに。」
セバスチャン、そんな事もするのね?
「ああ、来週婚約者発表する。騒ぎになる前がいいだろう。」
「ええ、あなたはお城の寮に避難してらっしゃい。」
「ちなみにどなたとご婚約を?」
「ヴィヴィアンナだよ。」
「やはり美貌に勝るものなしですか。」
「と言うより、さっきの話ではないけど、
やはり色んな男に絡まれるみたいなんだ。
今までは私の婚約者候補という事で
一定の抑止力があったけど、それがなくなると
強引な手段に出るやつもいるみたいなんだね。」
やはりあの美貌は傾国か。王家で保護した方が良いか。
「カレーヌはさ、とても良い性格でニコニコしてて、誰にでも優しくて、誰にでも好かれる。
今回私がめとらなくとも良縁に恵まれると思う。」
本人が聞いたら泣くぞ、それ。
「才女殿は、、、あの、その、、
圧が強い。好き好き熱視線が熱くてこげそうだ。
ありがたいんだけど、、
ごめん、無理。」
はっきり言うなあ。
「リード様。おめでとう御座います。臣下にとってこの上もない慶事でございます。」
「以下同文でございます。」
セバスチャンの言葉に続き、お祝いの言葉を述べ
退出したのでありました。
さあ、引っ越しだ。
新しい生活が始まるぞ。
こうしてロイヤルな和食料理人の地位を手にいれたのだった。
王子様の名前はアランとリード。
王妃様の代表作のヒロインは聖子ちゃんです。
追記 誤字報告ありがとうございます。