終
はてさて結末は…?
「それから約40年が経ち……あら?」
母は、いつもの間にか膝の上で静かな寝息を立てている娘を見下ろした。
そこへ、玄関の戸が開いて、誰かが入ってきた。
「ただいま、サディ―!帰ったよ!」
それは、金髪碧眼の…
「おかえりなさい、ヒーラギ!」
サディ―は仕事を終えて帰宅した夫を笑顔で迎えた。
今のサディ―はアズの末娘(三男二女のうちの末っ子)の子として生を受けた。両親が名付ける際、占い師のところへ相談に行ったら、〝サディー〟が良いと言われ、その名になった。
母から大叔母の事は聞いていたが、もちろん前世の記憶があったわけではない。だが、17歳を迎えた日から毎晩同じ夢を見るようになった。混血の魔族ヒーラギと恋に落ちる夢を。
この事をきっかけに、いよいよ自分は大叔母の生まれ変わりであると確信したサディ―は、前世での約束どおり、〝ヒーラギ〟を待つことにした。
そして半年後、〝彼〟はふらりと村に現れた。
彼にも初めから前世の記憶があったわけではないという。元々は、ナトリ―村の音楽家の家の生まれだったが、14歳の時に不慮の事故で両親が他界し、天涯孤独となった。幸いにも両親から音楽の才能を受け継いでいたため、生活には困らなかったが、その時を境に、毎晩同じ夢を見るようになったという。混血の魔族である自分が、サディーという人間の娘と来世で再会の約束をして消えてしまうという夢を。
毎晩同じ夢を見るうちに、居ても立っても居られなくなり、18歳で成人したのを機に、生まれ育った村を出て、サディ―を探しにウラキ村を訪れたのが今から5年前の事だ。
互いに一目見た瞬間に前世での記憶が蘇り、三度目の正直でようやく千年越しの恋が実ったのだ。
こうして今度こそ順風満帆、夫婦になれたサディ―とヒーラギの話は、村中で語り継がれる伝説となった。
現在ヒーラギは、持ち前のスキルを活かし、音楽教師として村の学校で働いている。娘というかけがえのない宝物も授かった。
ヒーラギは、サディ―の隣に腰を下ろすと、膝の上で眠りこけている娘の髪を愛おしそうに掻き分けた。
「どうやら我が家のお姫様は眠ってしまったようだね」
「今ちょうどあの話を聞かせていたところよ。長すぎて寝ちゃったみたいだけど…」
「そうだね。昔話にするにはちょっと長すぎるかな…」
ヒーラギは苦笑しつつ、起こさないようにそっと娘を抱き上げて自分の膝に移した。動けるようになったサディ―は立ち上がって台所へ向かった。
「今ごはん作るからね」
「今日はなに?」
「イワシのトマトソテーよ!魚屋さんで特売してたの!」
「いいね!美味しそう!」
台所に立ったサディ―は、手を動かしながら、三度の輪廻転生を繰り返した千年間に思いを馳せた。
波乱と絶望、出会いと別れ。様々な紆余曲折があって今の幸せがある。
そして、一番辛い思いをしたヒーラギも、人間に生まれ変わることで、ようやく人並みの幸せを得た。人を呪うとか不幸にするとか散々罵倒を浴びせられてきたが、魔族の血に一番呪われていたのはヒーラギ自身だったのかもしれない。魔族はまたいずれ世に復活してくるかもしれないが、それはまた一万年くらい先のことなので、今ある幸せを謳歌しよう。
思い返せば、ヒーラギとの初めての出逢いも、彼に食事を用意したことがきっかけだった。
「ヒーラギ!」
「ん?」
「ごはん出来たわよ!」
サディ―が背中越しに呼びかけると、ヒーラギは笑顔で振り返った。
「ありがとう、サディー!」
はい、やっとタイトル回収!最後まで読んでいただき有難うございました!




