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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第4章 鉄の男
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名前の無い子供

 当主の間にて、三島ダンゾウは鉱石を持ち帰ってくるのを待ちわびていた。今までの鉱石の調達は、使いパシリとして利用していたカザミが持ち帰ってきていた鉱石の量はほんの一欠けら。

 しかし、今回は違う。いつもは頭を悩ませるだけのカザミの無能さが功を奏し、実力のある祓い士、西連寺マコトを利用出来た。名があるおかげで、祓い士のルールを利用した脅しがより一層効果が増し、三島ダンゾウはこれまでより大量の鉱石が手に入ると確信していた。

 有頂天となっていた三島ダンゾウであったが、そこへカザミが逃げ帰ってきた。全身から汗を流し、涙や鼻水を流しっぱなしのカザミの姿は、とても祓い士には見えない。


「み、三島様! 大変です! 鉱山に邪奇醜の群れが住み着いていました! これでは今までの方法で鉱石は手に入りません! 何か別の方法で鉱山の中に侵入するしか!」


「それで? 鉱石は?」


「……はい?」


「鉱石はどうした? 鉱石を回収するのがお前の任務だ。あの祓い士は何処にいる?」


「鉱石は、回収不可能と判断して……西連寺様は……残念ながら」


「死んだのか?」


「い、いえ……分かりません」


「まさか、生死を確認せずに逃げ帰ってきたのか?」


「で、ですが! 多勢に無勢です! あれだけの数の邪奇醜は、私と西連寺様だけではどうしようも―――」


「この間抜けが!!!」


 三島ダンゾウの怒号に、カザミの体が跳ね上がった。何故三島ダンゾウが怒号を放ったのかカザミは分からなかったが、とりあえず謝罪の気持ちを表す為にその場で土下座をした。

 

「……はぁ。お前を拾ってそろそろ1年か。他の家の当主から追放されたお前に、我は出来る限りの援助と仕事を与えた。お前の可能性を信じていたからだぞ?」


 先程の怒号とは打って変わって、三島ダンゾウの声色は優し気であった。その声色にカザミは安心し、顔を上げる。

 カザミが顔を上げて見た光景は、自分の目の前に立つ二体の機械人間と、呆れた表情を浮かべる三島ダンゾウであった。


「え……」


「もうお前には愛想が尽きた。最後くらい役に立ってもらうぞ。と言っても、必要なのは体だけだがな」


「い、嫌だ……死、死にたくない! 死にたくない死にたくない!!! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」


 機械人間は泣き叫ぶカザミを無慈悲に取り押さえると、三島ダンゾウの後ろにある機械の投入口に詰め込んだ。最後まで泣き叫んでいたカザミの声は、機械の稼働音に掻き消されていく。


「多少の力を持っていたとしても、所詮は有象無象の人間。出来損ないを使えるようにするには、テコ入れが必要だ」


 カザミを詰め込んだ機械は、外部から流し込まれた鉄のガラクタを混入させ、人と鉄を使った機械人間を作り上げていく。


 一方その頃、ネムレスに捕らえられたイチは、同じく捕らえられた女性と共に、広い空間へと連れ込まれていた。壁にはいくつものカプセルがあり、そのカプセルの中には女性が閉じ込められている。

 そして壁にあるカプセルよりも一際大きなカプセルが中央に鎮座していた。カプセル内を満たす緑色の液体には、魚の骨のような体を垂らした脳みそが浮かんでいる。

 ネムレスは器用に尻尾を操り、イチだけを床に落とし、残った女性を一つだけ空になっているカプセル内に入れて閉じ込めた。カプセルに入れられた女性は出ようと必死になっていたが、すぐに装置が作動し、口に装着されたマスクから流し込まれる薬によって眠らされてしまう。

 一人取り残されたイチは、自分を見ながら尻尾を振り回すネムレスから離れようと、中央のカプセルへと後退りしていく。


「ネムレス。この子は脱走者じゃないよ」


 どこからか男の子の声がすると、ネムレスは大人しく別の場所へと去っていった。


「君は、ここの住人じゃないよね?」


「だ、誰? どこから話してるの?」


「君の後ろだよ」


 イチが後ろに振り返り、目の前にある巨大なカプセルを見上げた。カプセル内の大きな脳みそは、体と思わしき魚の骨のような触手を動かし、イチに手を振る。


「……脳みそが、喋ってる……!」


「アハハハ! ボクを見ても怖がらないんだね!」


「怖いけど……驚きの方が大きい……」


「もしかして慣れてるの? ボクみたいな化け物を見るのは?」


「慣れてはないよ。僕だって、ついこの前まで普通に地下で暮らしてたから……」


「君、女の子だろ? なのに、どうしてボクと同じようにボクって言うの?」


「勝手でしょ! 昔から僕は僕って言ってたんだから!」


「そっかそっか! アハハハ! なんだか面白いね、君! ねぇねぇ、ボクとお話しようよ! ずっとここに独りぼっちだったから、話し相手がいなかったんだ! ねぇ、いいでしょ?」


 気味の悪い見た目の割に、言動や声色はイチよりも幼い幼児のようであった。イチは恐怖を忘れ、カプセルの前で座り直した。


「いいけど、あんまり時間が無いと思うよ? 怖い人がここに来るから!」


「それじゃあ早く話そうよ! ボクの名前は……ボクは……ボクには、名前が無いんだ。バグって呼ばれるけど、それは名前じゃない。だから、君が名付けてよ! ボクの名前!」


「僕が? え~……うーん、じゃあダイキ。ダイキって名前は?」


「ダイキ! ダイキ!! ボクはダイキ! やったやった! 初めて名前を貰えた! 君の名前は何?」


「イチ。それから、後から来る怖い人がアキト」 


「イチ! それに、アキト! うわ~、二人も名前を教えてもらった! ねぇねぇ! 何を話そうか!」


 子供らしいワンパクさとハシャギっぷりを含んだ声色で話すダイキ。不気味な見た目と子供らしい声で話すダイキのギャップに、イチは妙に気に入ってしまい、カプセルに身を寄せながら話を始めた。

 そうして二人は話を始めた。会話の話題はイチが出し、地下領地で過ごしてきた日常や、黒宮アキトの愚痴をダイキに話す。その話題に対し、ダイキは興味深く聞き入り、時に質問をしていく。

 壁に設置されている大量のカプセルに見下ろされながら、静寂に包まれた空間内に二人は笑い声を響かせた。

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