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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第4章 鉄の男
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位の違い

 西連寺マコトはカザミに連れられ、三島家当主である三島ダンゾウがいる当主の間へと来た。当主の間には異様な光景が広がっており、辺り一面を覆う激しく稼働する機械と蒸気を噴かす鉄パイプ。他の家の当主の間とは違い、物で埋め尽くされている。

 そして一際異彩を放っていたのは、中央に鎮座する鉄で出来た巨大な男の顔。台座に乗せられた男の顔の後頭部に、周囲の機械から伸びている無数の線が繋がっていた。およそ人とは思えない存在ではあるが、この鉄製の男の顔こそ、三島家当主である三島ダンゾウである。

 異様な光景に戸惑う西連寺マコト。それとは裏腹に、カザミはいつも通りに男の顔の前に跪き、平然と任務の報告をする。    


「三島様。任務を終え、帰還した事を報告します」


 カザミが三島ダンゾウに任務の報告をすると、三島ダンゾウの瞼が開き、ガラスの瞳に光が灯る。


「その女は何者だ?」


 少しだけ開いた口から、三島ダンゾウの声が発せられる。その声は人が出す声とは少し違い、スピーカーを通した声であった。

 

「はい。このお方は西連寺マコトと申すお方で、危機に瀕した私を助けてくれたのです。恩人である彼女をそのまま返す訳にもいかず、こうして三島様に報告を」


「ほう。名ありの祓い士か……して、西連寺の祓い士よ。褒美に何を要求する?」


「褒美? 私が卑しい者だと思っているのですか?」 


「では、何故我の元へ?」


「そちらの祓い士の面子を保つ為です。先程も言っていましたが、助けられた者をそのまま帰したとなれば、恥さらしとなるでしょう」


「たったその為に、ここへ来たと?」


「ええ。そして、私が褒美を要求する事はありません。褒美とは恩に報いる為に贈り物を与えるもの。私ではなく、あなたが褒美を考えるのが常識かと」


「貴様、我に物申すか……小娘が!!!」


 音が割れる程の怒号を三島ダンゾウが発すると、周囲の機械が激しく動き、それに伴って鉄パイプからも激しく蒸気が噴き出す。

 激怒した三島ダンゾウの様子に慌てたカザミは尚も跪きながらも、西連寺マコトの袖を掴んで、跪かせようと引っ張る。

 しかし、西連寺マコトはカザミの手を振り払い、一歩前に出て、更に言葉を続けた。


「私はただ、常識的な事を言っているだけです。空まで聳え立つ鉄塔をも建造した三島家当主様なら、お分かりかと思っていたのですが。たかが小娘の発言だけで、そこまでお怒りになりますか?」


「西連寺様! それ以上は―――」


「無礼者が!!!」


 三島ダンゾウの後ろにある機械から警告音が鳴り響くと、金属の球体が機械から出てきた。金属の球体はひとりでに転がっていき、西連寺マコトの前で止まると、球体から人型へと変形する。人体の骨と同じ外見をしていながらも、体は金属で出来ており、顔の中央に一つ目の赤い瞳が光っていた。

 機械人間は西連寺マコトを赤い瞳で捕捉しながら、右腕の前腕から長い刃を伸ばす。明らかな戦闘態勢に、西連寺マコトはすぐ傍で怯えているカザミを蹴飛ばし、破邪の指輪から長く引き伸ばした光の線を手に構える。

 見た目の細さとは裏腹な重みのある動きで機械人間は刃を振り回し、西連寺マコトは光の線で防いでいく。防戦一方に見えていたカザミは、西連寺マコトを助けようと立ち上がろうとするが、手足が震えてしまい、動く事が出来なかった。

 そんなカザミの心配を吹き飛ばすかのような強力な一撃を放つ西連寺マコト。振り放った光の線が機械人間に当たると、風に吹かれた紙のように機械人間は吹き飛び、壁に激突するとバラバラに崩れていった。

 

「三島様の護衛衆をバラバラに!?」


「私の光の線は単に巻き付かせて使うだけではありません。光の線で攻撃を受ければ受ける程、光の線の強度は増し、岩を砕く事も造作ではありません。あなたの顔を砕く事だって簡単なのですよ?」 


「……」


 光の線を振り回し、いつでも振り放てるようにする西連寺マコト。そんな西連寺マコトを前に、三島ダンゾウは言葉を発さなくなり、けたたましく稼働していた周囲の機械が徐々に穏やかになっていく。

 

「……西連寺の祓い士と話がある。お前は外せ」


「え?」


「二度は言わんぞ」


「は、はい!」


 カザミは自分の足を叩いて動かせるようにすると、逃げるようにエレベーターへと駆け込んでいった。当主の間に西連寺マコトだけが取り残されると、三島ダンゾウの頭部が開き、中から生身の三島ダンゾウが姿を現した。痩せ細った老人の姿であり、生身の体は上半身だけで、下半身は台座と繋がっており、背中には周囲の機械から伸びている無数の線が繋がれている。

 

「名ありの祓い士なだけあるようだな」


「お褒め頂きありがとうございます」


「この姿を見せるのは、お主が初めてだ。そこで一つ、折り入って頼みたい要件がある」


「お断りします。何度も言いますが、私はただここへ連れてこられただけです。余計な事に関わりはしません」


「そうは言っても、お主は三島家の任務に介入しただろう?」


「私がいつ?」


「あの者にはある物を取ってくるよう命令した。その物が我の手に渡るまで、任務は続行している。例え任務を行っている者が死に瀕しても、助けに出れば三島家の任務に介入した事になる。許可なく他の家の任務に介入する事は罪な事くらい、お主も知っているだろう?」


「そんな滅茶苦茶な言い分―――」


「それに加え、お主は我の領地内で、我の所有物を壊し、我を脅迫した! これは重罪だ。五賢人に報せれば、すぐにお主に処罰が下さるであろう」


 三島ダンゾウの言葉は滅茶苦茶であった。しかし、三島ダンゾウは一つの家の当主。次期当主といえど、継承の儀を受けていない西連寺マコトとは位の高さが違う。攻撃を仕掛けられたから応戦したと真実を言っても、位の高い三島ダンゾウの発言が優先される。

 西連寺マコトは後悔していた。軽い気持ちで助け、軽い気持ちで言葉を発した結果、面倒事に巻き込まれてしまったこの状況に。

 

「……はぁ。私に、何をしてほしいのですか?」


「簡単な頼み事だ。ここから東に、古い鉱山がある。その鉱山には特殊な鉱石があり、労働者を使って鉱石を掘り進めさせていたが、回収が出来ていなくてな。その鉱石を我の元まで送り届けてほしいのだ」


「あの祓い士に命じていたのも、その鉱石では?」


「そうなのだが、アレは使い物にならん。週に一度行かせているが、片手で数える程しか持ってきやしない。アレを荷物持ちと案内役として連れていけ。掘り当てた鉱石全てを我の元へ」


「鉱石と引き換えに、今回の件は無かった事にしていただけますよね?」


「ああ。約束しよう」


「……分かりました。請け負いましょう」


 そう言って、西連寺マコトはエレベーターへと乗り込んだ。エレベーターが下へ動き始めるや否や、抑えていた怒りが爆発し、勢いよく壁を殴った。

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