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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第2章 安寧の地
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前途多難

 貯蔵庫に戻ると、一着の黒い戦闘服が用意されていた。腕やふくらはぎの側面には何らかの装置があり、胴体部分に薄い防弾ベストのような見た目の防具がシャツと一体化している。 

 黒宮アキトが首を傾げて戦闘服を眺めていると、隅っこで銃器の点検をしていた西連寺ソウジが、点検の手を緩めずに戦闘服についての説明をし始めた。


「それは闇人と呼ばれる暗殺を主とした祓い士が着る服をお前用にカスタマイズした戦闘服だ。着てみるといい」


「試着室は?」


「愛妻家の私が他人の裸を覗く訳がなかろう」


 黒宮アキトはルー・ルシアンとの戦闘でボロボロとなった服を破り捨て、戦闘服を試着する。素材が特殊なのか、普通の服よりも動きやすい戦闘服に黒宮アキトは早くも気に入り出した。


「随分と動きやすいな。この戦闘服の長所は動きやすいだけか?」


「闇人は常に人目を避けて動く必要がある為、着る服は目立たず、そして動きやすくなっている。耐久性も抜群だから、一々予備の服を持っていく手間が省ける。それに加えて私が細工したのが、腕と足にある装置だ。その装置に刃物や拳銃を装備しておけば、咄嗟の状況で瞬時に対応出来る。お前は人より直感が良いだろう? 術を施して直感で引き出せるようにしてある」


「文句の付け所が無いな。滅茶苦茶怪しまれる事以外は」


「上に羽織るコートも用意してる。ある程度の術は防げるようにしてある。だが無敵という訳ではないぞ」 


「色は?」


「もちろん、黒だ」


「オッケー。機能も怪しさも満点だな」


 戦闘服の装置に細い刃を装備し、装置の動作確認を終えると、黒いコートを羽織った。西連寺ソウジも最後の一丁の点検が完了し、黒いバックパックに銃器を入れると、黒宮アキトに背負わせた。黒宮アキトは肩に喰い込む重さに違和感を覚えながらも、あまり気にしない事にして出口へと足を進める。

 出口の扉を開ける寸前、ふと西連寺マコトの存在を思い出した黒宮アキトは、西連寺ソウジに忠告を言い渡す。


「マコトの事だが、絶対に後を追ってこないようにしろよ? 巻き込むのはごめんだし、一緒にいると対応がめんどくさい」


「それについてだが……どうだい? いっそ連れて行くっていうの―――」


「話聞いてたか? これから罪犯しに行くってのに、あんなめんどくさい奴の相手なんか出来ないんだよ」


「そうは言ってもだな……その……」


 西連寺ソウジは黒宮アキトから目を逸らし、唇を斜めにとがらせた。何かを隠しているか、その何かを言い出せずにいるのは明らかであった。黒宮アキトは話の流れから、西連寺ソウジが何を言い出せずにいるのかを考え、ある一つの答えに辿り着く。


「……向かってきてるのか?」


「……今さっき感知した」


「……どのくらいで来る?」 


「……あと数分もしない内に」


「チッ! いきなり面倒事を増やすな!」


 黒宮アキトは急いで貯蔵庫から飛び出していった。支度を終えたばかりだというのに、西連寺マコトと出会ってしまえば、無駄な時間が流れてしまう。西連寺マコトの術は黒宮アキトが苦手とする搦め手が多く、負ける事は無いが面倒な事に変わりはない。何よりも、西連寺マコトの強い執着心は黒宮アキトの底無しの気力を削り取る。これからの戦いに備えて、体力や気力は少しでも温存しておきたかった。

 しかし、黒宮アキトの願いは叶う事無く、代わりに物凄い悪寒が背筋に走った。まだ距離はあるが、後方から一人の人物が追いかけてくるのを黒宮アキトは察知する。

 振り返ると、猛スピードで追いかけてくる西連寺マコトの姿があった。遠目から見ても、西連寺マコトの迫力は十分で、視線がすぐ傍で見られているかのような錯覚を覚える。

 黒宮アキトは走った。まるで狼に追われる子鹿のように、死に物狂いで走った。だが距離は離れるどころか縮まっていき、それに伴って西連寺マコトの声が耳に届くようになる。


「兄様ー!!! 兄様ー!!! 兄様ー!!! 兄様ー!!!」


 同じ声量、同じ声色で西連寺マコトは黒宮アキトの名を叫び続ける。その声には確かな好意と狂気が込められており、黒宮アキトの顔色が徐々に青冷めていく。


「来るな!!! 追いかけてくるな!!! オレは一人で行くんだよー!!!」


「兄様ー!!! 兄様ー!!! 兄様ー!!! 兄様ー!!!」


「たまには別の事喋れよ!? あー、くそ! どうしてこうなるんだよー!!!」


 黒宮アキトが起きてほしくない事が初っ端から起きてしまった。それはまるで、これからの旅路の前途多難を暗示しているかのようだった。

 とにもかくにも、黒宮アキトは歩き出した。今まで感じていた地獄がハリボテだと気付かされる程の、本物の地獄の道へと。

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