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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第二部 祓い士編 第1章 邪奇醜
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鬼の力

 黒宮アキトの過去の醜態を晒した事で始まった黒宮アキトと鬼の五人衆との戦い。黒歴史の暴露というくだらない事がキッカケで始まった戦いは、戦いの範疇を超え、殺し合いと化していた。双方どちらも確実に殺す段取りで動き、元々仲間同士とは思えない程に殺気立っている。 

 戦い始めてすぐに、黒宮アキトは四人の実力に驚いていた。サカキの洗練された動きは一瞬の隙も見せず、確実に殺せるタイミングを見計らっては、抜群のタイミングで刀を振るう。ラジンはその巨体からは想像出来ない軽快な動きで体術を扱い、一撃一撃に体の重みを乗せている。双子のランとカクは得物である先の尖ったフックを扱い、抜群のコンビネーションで攻撃の手を緩めない。

 一人一人の実力が高いだけでも脅威だが、真に恐ろしいのは四人の連携力であった。誰か一人の攻撃が躱されると、すぐに誰かが攻撃を始め、同士討ちをしない為にお互いの位置を常に把握している。友人や仲間とは違い、血の繋がった家族と言える程に四人は通じ合っている。小細工が通じない四人に、黒宮アキトは苦戦を覚悟していた。

 しかし、黒宮アキトは自覚していない。苦戦を覚悟していた黒宮アキトとは裏腹に、四人が黒宮アキトに押されている事に。

 サカキは殺すつもりで刀を振るっていた。だが、その全てを黒宮アキトに躱され、挙句にカウンターを当てられている。ラジンは一撃一撃に自らの巨体に詰まっている脂肪と筋肉を乗せ、黒宮アキトの体を吹き飛ばそうとしていた。だが、ラジンの攻撃は受け流され、脇腹の寸分違わぬ同じ個所に攻撃を当てられてダメージを蓄積されている。フックを手にしているランとカクはそれぞれ狙う部位を決め、ランは足を狙い、カクは上半身を狙う。だが、ランとカクが狙っていた部位によって黒宮アキトに反撃されていた。

 一人が多数を相手にする時、周囲の状況の把握や、休み時の無い事もあって、一対一の時よりも体力も精神も擦り減っていく。相手が実力者揃いとなれば、体力と精神がすり減る前に、勝負は決まる。そう言える程、戦いにおいて数が多い方が圧倒的に勝率は高い。

 だが、それはあくまで常人の場合であり、黒宮アキトは例外である。持ち前の身体能力と体術、体に記憶されている過去の死闘の経験。見る、考える、動く……この三つを同時に行いながら黒宮アキトは戦う。

 更に、現在の黒宮アキトは本来の姿、失われていた残虐性と闘争心が剥き出しになっている。躊躇いも迷いも、今の黒宮アキトには存在しない。目に見える全てを敵とみなし、ただ敵を殺す事だけを考える狂人。四人がライオンの群れならば、黒宮アキトは災害である。


((((やっぱ強ぇ~!!!))))


 四人は歓喜していた。人数有利でありながら未だに黒宮アキトに掠り傷一つも付けられず、息が乱れ始めている四人とは違い、黒宮アキトは息が乱れていないどころか汗すら流れていない。自分達との明確な差に四人は喜び、戦いを通じて実感した再会に感動していた。


「流石はアキト! 我ら四人を圧倒し、更には余力を残しておるとはな!」


「「やっぱり強いよ、アキト兄ちゃんは!」」


「サカキ殿! ラン姫! カク王子! 拙者、もう我慢出来ませぬ! 一足先に、鬼になりますぞ!!!」


(鬼?)


「「えぇー! ズルいズルい! ボクらもなりたいー!」」


「ラジン! やるからには全力を出せ!」


「応とも!!! グアァァァァ!!!」 


 ラジンの体から発生した爆風が周囲に吹き荒れ、黒宮アキトが再びラジンに目を向けた時、変異したラジンの姿に目を見開いた。脂肪と筋肉が詰め込まれた巨体が更に肥大化し、肌は黒化し、体に赤い模様が現れ、額から分厚い二本の角が生えていた。

 

「変異した!? 怪異なのか!?」


「プオッホホホ!!! さぁ、始めようぜ!!!」


 ラジンはその場で軽く跳ねると、床が跳ね上がり、床の上に立っていた黒宮アキトの体が浮き上がる。ラジンが力強く飛び上がると、風圧で浮き上がっていた黒宮アキトの体が更に浮き上がり、二人は天井を突き破って空へと到達した。


「耐えれるものなら耐えてみろよ!!!」


「ッ!?」


 ラジンは空を蹴った。怪異化して増大した力によって、まるで鳥のように自由に飛び回り、不自由な黒宮アキトへと襲い掛かる。落下するだけの体では攻められないと判断した黒宮アキトは、空に浮かぶ間は防御に徹しようと体を丸めた。ラジンの一撃が黒宮アキトに放たれる。

 その瞬間、轟音と共に衝撃波が空に広がった。その威力は凄まじく、黒宮アキトの体は吹き飛ばされる。ラジンは再び空を蹴り、黒宮アキトが吹き飛んでいく場所に先回りして、バットでボールを打つかの如く、黒宮アキトを吹き飛ばす。何度も、何度も、黒宮アキトの防御が緩むまで。

 そうして何度も吹き飛ばし続けていくと、遂に黒宮アキトの防御が緩み、勝機を見出したラジンは黒宮アキトの頭上に飛び上がり、巨体を最大限に生かす攻撃であるヒップストンプを放った。

 

「グホァッ!?」 


「ハッハハハ!!! このまま落ちていけー!!!」


 ラジンの巨体に押し潰されながら、黒宮アキトは地面へと急降下していく。


「ぐっ……グゥオァァァァァ!!!」


「おぉっ!?」

 

 黒宮アキトはラジンの肌に指を喰い込ませ、腕と腰の力を使って強引に体勢を逆転させた。


「ぶっ潰れろぉぉぉぉ!!!」


 黒宮アキトはラジンを下にした状態で急降下していき、地面に激突させる瞬間に、駄目押しでうなじ部分にパンチを振り下ろした。

 地面に激突すると、黒宮アキトはラジンの脂肪によって吹き飛ばされ、ラジンの巨体によって地面は陥没した地面と共に、ラジンは地の底へと落ちていく。


「……ぅ……ぅぅ……」


 全身から感じる激痛に表情を歪ませながらも、黒宮アキトは立ち上がった。立ち上がって見えたものは、ランとカク二人の体が合体し、怪異と化した姿であった。


「さぁ、アキト兄ちゃん! 次はボクらの番だよ!」

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