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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第二部 祓い士編 第1章 邪奇醜
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予想外からの一撃

 陽が落ち、夜を迎えても、西連寺の領地は赤く灯っていた。煙と炎に囲まれる中、三人の祓い士が戦っていた。西連寺マコトは術者である西連寺リンを相手にし、千蔵マヒルは西連寺マコトが一対一の状況を続かせる為に人形を相手に耐え続ける。そんな二人を西連寺リンは自身が操る人形と体術で対応していた。 

 西連寺リンの強さは、西連寺マコトの予想を上回っていた。千蔵マヒルに人形を任せ、自分が術者であ る西連寺リンと戦えば、術者か操っている人形のどちらかの動きが鈍ると、西連寺マコトは考えていた。

 祓い士が使う奇術は、使う術者の力量に差はあれど、奇術の威力や影響力は強力だ。強力な分、デメリットも当然にある。奇術を発動する際、術者は破邪の指輪に集中する為、動きが鈍ってしまう。その為、奇術を発動する時は、仲間が時間を稼いでいる時か、敵に見つかっていない時に使う。祓い士が奇術を覚える時に嫌という程聞かされた基本中の基本。

 しかし、それは平均程度の実力の祓い士の制約である。平均以上、つまりは強者と呼べる実力を持つ祓い士は、制約など無いに等しかった。ある者は奇術を即座に使い、ある者は破邪の指輪無しで奇術を発動し、ある者は奇術を発動しながら別の攻撃手段を行う。

 西連寺リンは強者であった。目の前にいる西連寺マコトを体術であしらい、破邪の指輪で繋がっている人形を操って視界の端に映る千蔵マヒルを対処する。二つの事を同時に行っているにも関わらず、西連寺リンは優勢であった。

 いつまでも活路を見出せない西連寺マコトは、この状況を打破する策を頭の中で巡らせていた。体術で攻め続けながらも、決して踏み込まず、あえて少し距離を離す。何の策も無しに踏み込めば、その瞬間に負けが確定するのは明白であった。それ程までに、西連寺マコトは追い詰められていた。


(……駄目。いくら考えても、決定打にかける……少しずつ攻める方法は二度目に対応され、もっと距離を取って奇術を発動しようとすれば、一瞬で距離を詰められて終わる……千蔵マヒルも流石に疲弊してきている。私も疲れが出始めている。このまま何も行動しなければ、最終的に体力が尽きて負ける。やるとしたら一撃……一撃で、勝負を決めるしかない!)


 だが、西連寺マコトが一撃で西連寺リンを倒せる程の力は持ち合わせていない。千蔵マヒルなら可能ではあるが、千蔵マヒルを動かせば、彼女が抑えていた人形が動き出す。考えれば考える程に、あと一歩足りない。

 

(兄様……兄様なら、この状況をどう打開する? 兄様は直感と身体能力だけで相手を倒す。私のように考えて動くよりも、体を先に動かす……考えるより、動く……そうか、そうだ! 母様は常に相手がどう動くかを自分自身に置き換えて考えている。それは、戦う相手が考えているから読める事。考えなしに動けば予想外になる!)


 既に余裕が無い西連寺マコトは考えるや否や、実行に移った。それまで決して踏み込んで戦わないようにしていた所を一歩踏み込んだ。 

 その行動に、西連寺リンは悲しさと喜びを覚えていた。万策尽きた西連寺マコトが捨て身で仕掛けてきたと呆れ、そこで仕留めればこれ以上愛娘と戦う必要が無くなると安堵した。西連寺リンは顔を前にして近付いて来た西連寺マコトの首に目掛けて手刀を放つ。

 しかし、西連寺リンが放った手刀が触れたのは、西連寺マコトの首ではなかった。突如目の前に出現したタンスに手刀が当たっていた。西連寺リンは何が起きたのか理解出来ず、理解するまでに1秒掛かった。

 その僅かな時間、たった1秒の隙が、西連寺マコトの好機であった。破邪の指輪に取り込んだままであったタンスを取り出し、出てきたタンスによって西連寺マコトは上に上がっていた。

 西連寺マコトは素早く体を動かし、西連寺リンの顔面を蹴飛ばす。蹴飛ばされた西連寺リンの顔は振り上がり、それによって死角が生まれる。その死角から西連寺マコトは光の線を西連寺リンの体に巻き付け、人形の方へ投げ飛ばした。


「思いっきり殴って!!!」


 西連寺マコトは誰とも言わずに叫んだ。千蔵マヒルはその叫びに応じた。防御の構えを解き、人形に滅多打ちにされながらも、渾身の力を込めた拳を真正面に向かって放った。

 その方向には、光の線で投げ飛ばされた西連寺リンがいた。千蔵マヒルが放った拳は西連寺リンの背中に当たり、残っていた力全てを込めたその拳は、西連寺リンの体を粉砕した。


「ウォラァァァァ!!!」


 今までの鬱憤を晴らすかのように、西連寺リンの背中にめり込んだ拳を振り被ると、西連寺リンの体は高速で吹き飛んでいき、燃え上がる建物の壁を突き破っていった。

 すると、西連寺リンが操っていた人形の動きが止まり、文字通り糸が切れてその場に崩れ落ちていった。人形が動かなくなったのを見て、千蔵マヒルは大の字で地面に寝っ転がり、空に向かって腕を突き上げた。


「はぁ、はぁ、はぁ……勝った、ぞぉぉぉぉ!!! アッハハハ……!」


「……良かった、上手くいって……ッ!? こうしてる場合じゃない! 死ぬ前に兄様の居場所を聞かないと―――」


 西連寺マコトは連れ去られた黒宮アキトの居場所を聞こうと、西連寺リンが吹き飛ばされた方へ振り返った。

 そこで、理解し難い光景を目の当たりにする。燃える建物から出てくる人物がいた。折れ曲がった体、燃えている服や肌や髪、人形のような球体関節。それが誰か、そもそも人間なのかは分からない。

 だが、西連寺マコトは理解していた。西連寺マコトだからこそ、理解してしまった。


「母、様……?」


 幻術を巧みに扱う人形使いの西連寺リン。そんな彼女自身も、人形であった。 

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