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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第二部 祓い士編 第1章 邪奇醜
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鬼神の如く

 カエル頭の邪鬼集を待ち構えていた祓い士達であったが、邪奇醜が複数体いるという情報を持っていなかった為、逆に邪奇醜の奇襲に遭ってしまう。奇襲により、二人の祓い士の頭部が、邪奇醜の丸太のように太い腕によって吹き飛んだ。     

 早々に二人の死者が出てしまった祓い士達であったが、誰一人として仲間の死を悲しむ様子は無かった。むしろ、ますます闘争心を剥き出しにし、邪奇醜へと駆け出す。

 

「武器使え! 殴り合いじゃ吹き飛ばれちまうぞ!」


 誰かが言ったその一言をキッカケに、祓い士達は自身の破邪の指輪から短い鉄の棒を取り出し、その棒を長く伸ばして、邪奇醜と一定の距離を保ちながら棒術で邪奇醜を攻撃し始める。奇襲に遭ったとはいえ、彼らも死線を潜り抜けてきたベテラン。言葉を交わさず、抜群のコンビネーションで邪奇醜を滅多打ちにしていく。

 しかし、邪奇醜は体をのけぞるばかりで、あまり効いてはいなかった。更には祓い士が放つ奇術でさえも、邪奇醜の体を覆う膜によって防がれてしまう。

 そして、徐々に祓い士達の動きに邪奇醜が慣れ始め、巨体からは想像も出来ない軽快な動きで祓い士の攻撃を避けていく。

 すると、同じ見た目の邪奇醜が土の中から地上へと飛び出してきた。次々と新手が現れ、邪奇醜の数が祓い士達よりも上回ると、祓い士達の表情から余裕が消え去っていた。必死になって奮闘するも、次々と現れる邪奇醜によって一人、また一人と数を減らされていく。


「くそっ!? キリがねぇ!!!」


 徒党を組んだ邪奇醜に為す術もなく数を減らされていく中、黒宮アキトと西連寺マコトが遅れて加勢に来た。黒宮アキトは一目見ただけで祓い士側が押されていると理解すると、西連寺マコトに指示を出した。


「僕を空に上げろ!!!」


 西連寺マコトは指輪から光の線を飛ばし、進行方向にある左右の建物の壁を繋ぐ一本の線を作る。その線に向かって走っていった黒宮アキトは、線の上に飛び乗り、線を跳ね返らせて空へと跳んだ。

 空へ跳んだ黒宮アキトは、体を回転させながら降下していき、落下地点に立っている邪奇醜の頭部に回転を加えた踵落としを放った。踵落としを喰らった邪奇醜は顔から地面へ激突し、衝撃のあまりに体が跳ね上がった。跳ね上がった邪奇醜が落ち始める瞬間に、黒宮アキトは邪奇醜の顎に向かって蹴りを放つ。

 すると、明らかな手応えがあった。今まではのけぞるだけで済んでいた邪奇醜であったが、黒宮アキトの二度の蹴りによって、首の骨が砕け、頭部が背中にくっついてしまう。


「貴様ッ!?」


「言いたい事は後で聞く!!! 今はコイツらの数を減らすぞ!!!」


 黒宮アキトは祓い士の亡骸から棒を拾い、次の邪奇醜へと向かっていく。向かってくる黒宮アキトに対し、邪奇醜はカエルの跳び方で黒宮アキトへと飛びかかった。 

 自分の三倍もの巨体が迫る中、黒宮アキトは尚も真っ直ぐ突っ込み、邪奇醜の大きく開いている口の中に棒を突っ込んだ。


「ウゥォォォォォ!!!」


 邪鬼集の口の中に棒を突っ込んだまま、黒宮アキトは力ずくで邪奇醜を押し倒し、膜が覆われていない目や鼻の穴に棒を突き刺し続けた。黒宮アキトの全身が邪奇醜の目や口から噴き出した血によって彩られると、邪奇醜は絶命した。


「次!!!」


 黒宮アキトは力と勢いを武器とし、邪奇醜を次々と相手にしていく。怒涛の勢いで邪奇醜を殺していく黒宮アキトを目にしていた祓い士達は皆、同じ事を口にした。

 

「……鬼神……!」


 死を恐れず、目に映る者を殺戮していく存在【鬼神】。それは、祓い士の村に伝わる伝説の化け物。黒宮アキトは、その伝説の化け物に勝るとも劣らない戦い方であった。

 その姿を見て、悔しさと頼もしさを胸に抱いた祓い士達の士気は上がった。再び棒を握りしめた祓い士達は、闇雲に攻撃を当てるのではなく、膜が張っていない部分を集中的に攻撃していく。

 すると今度は、祓い士側が邪奇醜を一体、また一体と殺すようになった。形成は逆転しつつあり、真に形勢逆転とさせた一手は、西連寺マコトの光の線による拘束であった。西連寺マコトは地中に伸ばしていた光の線で邪奇醜の体を拘束し、身動きを封じている間に祓い士達が邪奇醜を殺していく。

 

 そうして時間は流れ、夕陽が青空を赤に焦がす頃、地面には邪奇醜の死体で埋め尽くされていた。休む間もなく何時間も戦い続けてた祓い士達は疲労によって動けなくなり、残り一体の邪奇醜の相手をしていたのは黒宮アキトと西連寺マコトの二人だけとなっていた。

 二人は息の合ったコンビネーションで邪奇醜を袋叩きにし、黒宮アキトが僅かに破けていた首回りの膜を完全に破き、無防備となった首回りに西連寺マコトが光の線で絞め、そのまま首を絞め千切った。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


「……これで、最後……でしょうか?」


「はぁ……知るか! あー、疲れた!」


 抑え込んでいた疲労感が一気に押し寄せ、黒宮アキトは大の字に横になった。


「被害は、どれくらいだ?」


「祓い士が数名……おそらく、9名」


「20人の内、9人……か」


「最小限で抑えられたと考えましょう。実際、ここより先で隠れている住民に邪奇醜を近付かせなかったのですから」


「逆に、殺した邪奇醜はどれくらい?」


「……さぁ。この地面でハエがたかってるのを一々数えたくありません」


「なるほど。沢山殺したって訳か」


「そうですね。沢山殺しましたね」


 西連寺マコトは大の字になっている黒宮アキトに手を差し出し、黒宮アキトはその手を取って立ち上がった。

 二人が祓い士達のもとへ行くと、祓い士達は疲れ切った顔をしており、皆どこかしらに重傷を負っていた。


「無傷……と言える者は流石にいませんよね。ですが、何とか出来ましたね、兄様」


「……安心するのは、まだ早いと思うがな」


「というと?」


「……腑に落ちないんだ。話に聞いた通り、邪奇醜は徒党を組んで襲い掛かってきた。だが戦ってみて、普通の邪奇醜と同じだと分かった」


「つまり、何者かが邪奇醜を操っていると?」


「さぁな。僕もまだ今の祓い士の村について分からない事ばかりだ……ただ、嫌な予感がする」


 黒宮アキトが邪奇醜の死体を見下ろすと、血走っていたはずの邪奇醜の目が正常に戻っていた。

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