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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第二部 祓い士編 第1章 邪奇醜
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嵐が来る

 部屋から飛び出した黒宮アキトは、この忌々しい屋敷の外へと一刻も早く出たかった。未だ収まる事の無い怒りは、顔の表情だけでなく、歩き方や足音にまで表れていた。


「兄様! 待ってください!」


 追いかけてきた西連寺マコトは黒宮アキトの前に立ち塞がり、怒りを鎮めようと試みる。しかし、自身に西連寺家の血が通っているからか、目を合わせようともしない。


「先程の両親の言動については、私が代わりに謝ります。しかし、あの方々も兄様を慕っております。久しぶりの再会に、思わず秘めた想いを口走ったのでしょう」


「それが間違ってると言うんだ!」


「ッ!?」


 怒号と共に向けられた黒宮アキトの瞳は、赤くなっていた。そんなちょっとした変化に、西連寺マコトは驚いた。黒宮アキトが本気で怒った所を見た事が無かった西連寺マコトにとって、今の黒宮アキトは知らない一面であった。


「ここは西連寺家の領地。ここに住む者は祓い士を含め、お前やお前の両親を慕い、尽くしてきた! 西連寺家が領地を持つようになったのは、住人達の忠誠心によって叶えられた事だ! それを奴らは、見向きもしないで……! とにかく、今は祓い士達に邪奇醜が一体だけでない事を話さないと。最悪の場合、ここも全滅する羽目になる!」


「……分かりました。なら、私もついていきます。その話を祓い士達に信じてもらうなら、私がいた方がいいでしょう?」


「確かにな……お前は、あんなのにはならないでくれよな……」


 黒宮アキトは西連寺マコトの横を通り過ぎる際に、ボソリと呟いた。自分の身内の所為で黒宮アキトの気を損ねてしまった事に、西連寺マコトは心を痛めながらも、黒宮アキトの足音が自身から離れていくのを耳にし、急いで後を追った。 

 二人が邪奇醜が現れた田んぼへと向かっていると、一人の祓い士が指示を出し、住民達を家の中に避難させていた。


「ほら、さっさと隠れろ! いつ現れるか分からんだ! 俺達が完全に息の根を止めるまで絶対に出てくるなよ! 急げ急げ急げ!」


「ハズレを引かされたな。避難指示なんて面倒な役目」


「……チッ! 馴れ馴れしく話しかけんじゃねぇ!」


「そうカッカするな。それに面倒とはいえ、現場から離れている分、死ぬ確率が減る。いつ邪奇醜が来るか分からんからな」


「なんだ? 俺が臆病者とでも言いたいのか!? てめぇこそ、その腕で行くつもりか? 誰もてめぇの事は助けてやんねぇぞ? 次こそ死ぬ。いや、いっその事今ここで殺してやるよ!」


 一触即発の雰囲気。目の前の祓い士から溢れ出す殺気を浴びて、変わらず特別扱いされていない事に黒宮アキトは安心する。

 そんな黒宮アキトとは裏腹に、西連寺マコトは呆気に取られていた。以前から嫌われていると聞かされていたが、殺気を出される程に嫌われているとは思いもよらなかった。


「他の祓い士達は、田んぼに集まっているのか?」


「ああ! 周りを囲んで、出てきたところを一網打尽さ! それがどうしたってんだ!」


「安直すぎやしないか?」


「ハッ! 邪奇醜共に知能は無ぇ! これくらい簡単な策でいいんだよ!」


「だが今度の奴らは少し違う。それに、現れるのが一体だけとは限らん」


「なんだと?」


「まぁ、詳しい事は彼女が話してくれる……おい、マコト。いつまで固まってるんだ。こんな時の為についてきたんだろ?」


「え? あ、はい……」


 西連寺マコトは【邪奇醜によって五つの家が滅ぼされた】事と【邪奇醜が徒党を組んでいる】事を簡略化して祓い士に説明する。祓い士は黒宮アキトの時の高圧的な態度とは違い、西連寺マコトが話す一言一言を聞き洩らさず頭に入れていた。

 そうして説明を終えた頃、祓い士の表情に明確な焦りが出始めていた。


「既に五つの家が……では、今回の邪奇醜は、そうやって家を滅ぼしてきた邪奇醜と同じ?」


「恐らく」


「なんてこった……何故当主様はその事を言ってくださらなかったんだ! 早く連中にこの事を伝えないと! マコト様も是非お力添えを!」


「もちろんです。兄様も力を貸してくれます」


「ありがとうございます……マコト様がこうおっしゃったんだ。無様な姿を晒すなよ?」


「フッ、どっちがだ」


「ぐっ!? ムカつく野郎だ!」


 祓い士は去り際に黒宮アキトに威嚇して、この事を他の祓い士達に知らせるべく走った。


「……予想以上の嫌われっぷりでしたね」


「お前が横にいたんだ。あれでも抑えてた方だ」


「えぇ……」


「そんな事よりも、この両腕の包帯代わりを外してくれないか?」


「え? でも、まだ完治していないのでは?」


「ギチギチに絞められてる所為で動きづらい。痛みはあると思うが、もう腕としての形に戻ってる」


「そう、ですか……では、外しますね」


 西連寺マコトは、黒宮アキトの両腕に施していた光の線で作った包帯を解いた。黒宮アキトは久しぶりに見る自分の両腕の使い心地と、力の入れ具合を確かめると、視線を田んぼの方へと向けた。 

 その頃、先に田んぼへと駆けつけた祓い士が、田んぼを囲んで邪奇醜が現れるのを今か今かと待ち望んでいる仲間達に叫んだ。


「気を付けろ!!! 今回の邪奇醜はいつものとは違う!!! 集団で来るぞぉぉぉ!!!」


 西連寺マコトから得た情報を他の祓い士にも共有し、狭まった視野の拡張と、周囲に対する警戒を強めようとした。

 しかし、既に手遅れであった。地下に潜んでいた邪奇醜が至る所から現れ、背後から祓い士へと襲い掛かった。

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