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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第4章 別れの時は必然に
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ヤバいスープ

 部屋の窓から夕陽が差し込む頃、西連寺マコトを除いた三人は部屋の中で食事の準備をしていた。主に準備をしていた斎藤響が西連寺マコトが持ってきた土鍋をガスコンロの上に置き、水と共に市販の鍋の素を入れようとすると、黒宮アキトが待ったをかけた。    


「待て。それはマコトが持ってきた鍋か?」


「え? ええ」


「じゃあ何も入れるな」


「いや、何も入れなきゃ土鍋が熱くなるだけだよ?」


「いいから待ってろ。お前達にとっては、面白いものが見れるぞ」


 黒宮アキトの言う通りに待ち続けていると、熱せられた土鍋から湯気が沸き立った。すると、何も無いはずの土鍋の底から黄金のスープが湧いてくる。


「おぉ~!」


「これは普通の土鍋じゃない。僕達祓い士は、日数を掛けて怪異を祓う。祓い士と言っても所詮は人間、腹は減る。だからどんな環境下でも食事をとれるように、奇術を施された物が作られるんだ。大抵は粗悪品で、これよりもっと小さな物で味は最悪なスープが出来るが……家の名を持つ祓い士の物なら話は別だ」


「奇術が施されてるって……私らが食べて大丈夫なものなの?」


「お前らだって祓い士みたいなものだ。食っても誰も文句は言わないよ」


「いや、そういう意味じゃなくて……」


「さて。実は僕もこれ程色の良いスープを口にした事は無い。一度は飲んでみたかったスープで鍋が食べられる贅沢だ。早く具材を入れてくれ。僕は鍋の具材の入れ方にこだわりが無いから、じゃんじゃん入れてくれ」


 黄金のスープで満たされた土鍋を前にしてテンションが上がり、二人を急かす黒宮アキト。未だ抵抗感のある斎藤響の代わりに、宮本達也が具材を一気に土鍋の中にぶち込んだ。敷き詰められた野菜と肉を黄金のスープが包み込み、言葉で言い表せぬ食欲を煽る匂いが湯気に乗ってくる。その匂いを嗅いだ黒宮アキトと宮本達也はもちろんの事、あれだけ抵抗していた斎藤響でさえ、目の前にある鍋に目を奪われていた。

 野菜と肉に色が付く頃、今か今かと待ちわびていた宮本達也と斎藤響は箸とレンゲを手に、具材とスープを自身の器に盛っていく。


「こ、これが、あの黄金のスープで作った鍋……!」


「なんか、普通の鍋よりも輝いて見えるわ……!」


「とりあえず、食ってみようぜ!」


「ええ! いただきます!」


 二人はまず初めに、黄金のスープの味を確かめた。恐る恐る口に含んだスープには味が無かったが、体の底から力が湧き立つような熱が体中を駆け巡る。

 続けて具材を口の中に放り込むと、先程の無味のスープと違い、今まで食べた事の無い味が脳を刺激し、箸が止まらなくなった。


「美味しい……? いや、でも美味しい気がする!」


「味が分かんないけど、でも美味いと感じる!」


「そっか、美味いのか。僕も一口食べたいな」


「響! 次々鍋に具材入れてけ!」


「もう入れてるわよ!」


「あの……僕も食べたい……」


「この際、野菜とか肉じゃなくていいや! 食べ物と言える物入れてけ!」


 両腕が動かせない黒宮アキトは小鳥のように待ち続けていた。いつか必ず、どっちかが自分に食べさせてくれる事を信じて。

 しかし、現実は非情である。二人は黒宮アキトの事を忘れ、一心不乱に食べ続けていた。その様は狂気的とも言え、まるで憑りつかれたように食べ続けている。


「ただいま戻りました……すみません、予想よりも怪異が多くて―――」


 最珍露に潜んでいた何百もの怪異を祓ってきた西連寺マコト。長期的な戦いで疲労していた西連寺マコトは、今見えている光景が疲れからの幻だと思いたかった。

 しかし、一心不乱に食べ続けている宮本達也と斎藤響が箸を伸ばしている先に、自身が持ってきた土鍋がある事を目にし、頭を抱えた。


「はぁ……一難去って、また一難ですか……」


「マコト。全部祓えたか?」


「ええ、なんとか。それよりその土鍋、私が持ってきた物ですよね?」


「え? ああ」


「……その土鍋は特殊な物でして。活力を蘇らせるスープ【黄金水】が湧き立つ物なのですが……些か強力でして、満身創痍でなければ毒ともなり得るスープなのです」


「毒?」


「器に水を注ぎ続ければ零れますよね? あれと同じです。飲み続ければ体が黄金水で満たされ、強過ぎる生命力が故に死にます」


「……どうすんだよ」


「まぁ、こうなってしまえば止める方法は一つ」


 西連寺マコトは宮本達也と斎藤響を殴って気絶させ、意識を失っている間に二人を土鍋から遠ざける。そうまでしなければ止められない黄金水のスープの恐ろしさに、黒宮アキトは自らの意思で土鍋から距離をとった。


「あら? 兄様、召し上がらないのですか? 怪我を負っている兄様こそ、必要な物だと思うのですが」


「僕は食事をしたかったんだ。怪我を治す為に食うのと、腹を満たす為に食べる事はまるで違う。あれを食べるなら、生野菜をかじった方がマシだ」


「まぁまぁそう言わず!」


 嫌がる黒宮アキトを西連寺マコトは光の線で拘束し、黄金水のスープを身動きが取れなくなった黒宮アキトのもとへ運んでいく。

 黒宮アキトは顔を動かして飲まないようにするが、西連寺マコトに顔を掴まれて、無理矢理飲まされてしまった。

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