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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第4章 別れの時は必然に
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愛する人に幸あれ

宮本達也視点です

 アキトとマコトさん。二人の結婚を祝う旅行は、初っ端から最悪な状況になった。避難していた俺と響が再び部屋に戻ると、布団で横になっているアキトと、その横で紙に文字を書き続けるマコトさんの姿があった。掛け布団で肩から下は隠れているが、見えている所だけでも傷や痣が多い。 

 何があったのか……なんて、俺には聞けなかった。響も俺と同じ気持ちだっただろう。しばらく二人を呆然と見ていると、マコトさんは書いていた複数枚の紙を手に持ち「兄様を見ていてください」とだけ言い残し、部屋から出ていった。人の気持ちを察するのが苦手な俺でも、マコトさんが悲しんでいたのは、その表情から察せた。

 それから時間は流れ、俺達はマコトさんの言われた通りにアキトの看病をしている。看病と言っても、知識の無い俺達が出来る事なんて無く、無事に目覚めてくれる事を願いながら、ただ見守る事しか出来ない。


「……ねぇ、達也。祓い士って、いつまで戦い続けるんだろう……?」


 アキトの前髪を分けながら、響が唐突に聞いてきた。


「怪異がいる限り、だろうな」


「……怪異って、悪意や負の感情で変異するものでしょ? それってつまり、人がいる限り、戦いは終わらないって事でしょ?」


 響に言われて、俺はハッと気が付いた。祓い士は怪異を祓う者。そして怪異は人が変異した存在。怪異は人に害を為し、それを防ぐ為に祓い士は戦う。まるでアニメや漫画の中の話のようだ。

 だが、創作の話と一つ違うのは、解決方法が存在しない。つまり、人が怪異に変異しなくなる事は無いという事。

 だって、人という生き物は、悪意や負の感情を抱えてしまうからだ。どれだけ明るい人でも、どれだけ人から好かれる人気者でも、その心に闇は存在する。それは心を持った生き物の枷だ。

 アキトやマコトさん、他の祓い士がどれだけ祓っても、人がいる限り、人に心がある限り、怪異はいなくならない。

  

「こんなにボロボロになっても、目が覚めたら次の怪異を祓いに行かなきゃいけない。自分の夢や趣味を捨てて、ひたすら戦い続ける……アキトもマコトさんも、まだ子供なのに」


「お前、アキトを嫌ってなかったか?」


「嫌いよ。私達を祓い士の事情に巻き込んだもの。嫌いにもなるわよ……でも、祓い士じゃないアキトは好き。一緒に遊んで、一緒にご飯を食べて、私達と同じ普通の人として暮らしているアキトは好きよ」


「……でも、アキトは」


「そうね。マコトさんと結婚すれば、もう普通の暮らしなんて出来ないと思う。マコトさんも好きよ? 私達より年下なのにしっかりしてて、たまに怖い時もあるけど優しいし、間違った選択は絶対にしない。だから、マコトさんとアキトの結婚は祝福したい……でも、それで二人が普通の暮らしが出来なくなる事が、私は嫌なの。二人には、普通の暮らしをして、一年でも長く生きててほしい」


「俺も同じ気持ちだ。でも、二人は祓い士として生まれたんだ。俺達と、根本から違う」


「じゃあ、達也は二人が死んでも構わないって言うの?」


「そうは言ってない! 俺達の普通と、二人の普通は違うんだよ! 学校に行って、仕事に就いて、家庭を築く俺達の普通の人生。怪異を祓う為に鍛錬して、怪異を祓い続ける祓い士の普通の人生。俺達が辿る道と、アキト達が辿る道は別々なんだよ」


「……でも、アキトは普通の人生を歩もうとしてたんだよ……ちょっと、外の空気吸ってくる」


 そう言い残し、響は部屋から出ていった。響が言ったように、俺もアキトには普通の人生を歩んでほしいと思っている。俺もアキトが好きだ。今まで仲良くしていた知り合いはいたが、嘘偽りなく接する事が出来るのは、幼馴染の響を除けば、アキトだけだった。

 俺が好きな人には幸せに生きていてほしい。不自由の無い暮らし。愛する人が傍にいる環境。ハッピーエンドを迎えたアニメや漫画のように、幸せが終わる事の無い人生を歩んでほしい。

 でも、アキトは祓い士だ。怪異と対峙する時のアキトは、俺達と遊んでいる時よりも生き生きとしている。認めたくはないが、今まで見てきたアキトが楽しそうに戦っている姿が記憶に焼き付いている。 

 

「……なぁ、アキト。俺達は……俺は、お前にとって邪魔な存在なのか? 俺と過ごす日常より、怪異と戦う方が、お前にとって幸せなのか?」


 聞こえていない事をいい事に、未だ眠り続けているアキトに言った。


「……怪我人の傍で、気持ち悪い事言うんじゃねぇよ」


「悪かった……ん? え!? 起きた!?」


「起きた、じゃねぇよ。僕をキッカケに響と喧嘩してさ。仲直りは自分でやれよ」


 響と喧嘩って事は、だいぶ前から起きてたのか。なんだか、恥ずかしいな。俺も響も、アキトが寝ていると思って言ってた事をバッチリ聞いてたと知ると。


「うぅ……くそっ! 悪いが達也、手を貸してくれ。自分じゃ起き上がれない」


「あ、ああ! そんじゃ、掛け布団を―――ッ!?」


 掛け布団をめくると、アキトの両腕に緑色に光る線が巻き付いていた。記憶にあるアキトの腕よりも、ずっと細く見える。巻き付いている光の線の下は、多分……。


「ん? どうした、達也?」


「……いや、何でもない。それじゃ! 起こすぞ!」


 腕に触れないように気を付けながら、アキトが体を起こすのを手伝った。足は不自由なく動かせるようで、立ち上がったアキトは首の骨を鳴らした。 


「う~ん、体が固まったな。少し寝ただけだってのに。そういえば、マコトは?」


「マコトさんは、何か文字が書かれた紙を持って何処かに行ったぞ?」


「文字……ああ、なるほど。じゃあ、この旅館にいる怪異共は祓われたと言ってもいいだろう」


「え? あれって、何かの武器なのか?」


「武器、というよりも、罠だな。文字に書き手の意思を宿して、人が集団でいると怪異に錯覚させる。例えとしては少し違うかもしれないが、虫が光に寄ってくるようなものだ。それで集まってきた所を一気に祓うつもりだろう。集団戦はマコトが一番得意とする戦いだ。すぐに片付けて戻ってくるよ……それより、何か食い物ないか?」


「食い物か! 確か持ってきた中にすぐ食べれる物があったはずだから、少し待ってろ!」


 持ってきた荷物から、菓子と飲み物を大量に持ち出し、それをテーブルの上に置いた。手が動かせないアキトの代わりに俺が封を開け、菓子や飲み物を次々とアキトの口に運んでいく。


「うん、腹が満たされていく。もっとくれ」


「そうか! そりゃ良かった! じゃんじゃん食わせてやるからな!」

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