表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第4章 別れの時は必然に
41/95

二面性

 圧倒的な力の差、ロン・リーフェンからの強烈な一撃。それらが黒宮アキトにある種のスイッチを入れてしまい、黒宮アキトの失われた過去の片鱗が現れた。姿も口調も別人と化した黒宮アキトの力はロン・リーフェンと同等にまで達し、不動のロン・リーフェンに有効打を与える程にまでなった。 

 自身との力の差をあっという間に縮めてきた黒宮アキトの変化に、ロン・リーフェンは純粋な驚きと、一つの疑問を浮かべていた。


(髪と瞳の色が変化した? 口調も先程と比べて高圧的に……二面性、というタイプか。いずれにせよ、あの変化による力の増幅は厄介だ。下手をすれば、ここにいる彼ら彼女らに被害が及ぶ)


 ロン・リーフェンは手の平を合わせ、手を三角の形にして、三角の穴から黒宮アキトの姿を捉える。

 すると、三角の穴に捉えられていた黒宮アキトの体に異常が起きた。体が石になったかのように動かず、瞬きすら出来ない。ロン・リーフェンの技【静止】の力による異常である。


「あなたの動きを止めさせていただきました。呼吸は出来ますので、ご安心を」


「……」


「このまま大人しく止まっていてください。今、もう一人のお客様がここへ至る試練を順当に進んでこちらに向かってきています。腕の良い祓い士のようです。はっきり言って、あなたには重大な問題があると見受けられます。私では力不足でも、祓い士であれば―――」


「……何を呑気にベラベラと」


「ッ!?」


「ハッ!」


 黒宮アキトは自身に掛けられていた静止の技を強引に振り解いた。静止の技はただ体を動けなくするのではなく、体の動かし方すらも忘れさせる技であった。

 それなのに、黒宮アキトは強引に体を動かせるようにして、静止の技を振り解いてみせた。ロン・リーフェンにとって、二度目の技を破られた瞬間である。 


「……どうやって、私の技を」


「動かせなくなったなら、動かすようにするまでだ。単純だろ?」


「……単純だけで片付く話ではないのですがね」


「それにしてもテメェ、デカい図体のわりに卑怯な手を使うな? じゃあ、こっちも使うか」


 黒宮アキトはそう言うと、静止している客人に標的を変え、襲い掛かろうとする。大事な客人に危害を加えようとしているのを見て、ロン・リーフェンは慌てて黒宮アキトと客人の間に割って入った。

 しかし、その黒宮アキトの行動は、ロン・リーフェンが身を挺して客人を守ろうとする行動を利用した手であった。守る事に固執してしまったロン・リーフェンに、黒宮アキトの攻撃を防ぐ術など無い。黒宮アキトが放つ強烈な連撃が、無防備なロン・リーフェンの体を痛めつけていく。


「どうした! そんなんじゃ身が持たねぇぞ!!!」


「ぐっ!?」


「ほぉら、今度はこっちだ!!!」


「ッ!?」


 黒宮アキトは標的を不規則に変えていき、その度に身を挺して守ろうとするロン・リーフェンの体に強烈な打撃を加えていく。最早、勝負とは言えない光景と化していた。 

 しかし、いつまでも黒宮アキトにやられたままのロン・リーフェンではなかった。次に黒宮アキトが標的にする客人を直感で選び、カウンターの一撃で流れを自分に向けさせようとする。

 だが、客人を何よりも大事にするロン・リーフェンにとって、その策は打ちたくない策であった。


(皆様、申し訳ございません……あなた方の命運、賭けさせてもらいます……!)


 心の中でこの空間に集まっている客人達に謝罪をしながら、一か八かの賭けに乗じた。その賭けは、ロン・リーフェンの勝ちという結果となる。

 見事先読みして黒宮アキトよりも先に動けたロン・リーフェンは、向かってくる黒宮アキトのミゾオチに拳を当て、黒宮アキトが怯んでいる隙に、自らの巨体で黒宮アキトを覆い隠すように力強く抱きしめた。まるでプレス機のように絞めつけてくるロン・リーフェンの力は、黒宮アキトの骨をいとも容易く粉砕し、圧縮させていく。


「ぐぅぅあぁぁぁぁ!!!」


「このまま、大人しく……!」


「こ、この野郎……!?」


 黒宮アキトは辛うじて動かせる足で、ロン・リーフェンの腹や股間に蹴りを入れて抵抗する。その黒宮アキトの抵抗をロン・リーフェンは歯を喰いしばって耐え、黒宮アキトの体を絞め続ける。

 骨が折れる音と、肉が潰れる音。お互い一歩も引けない意地と意地の戦い。その勝敗は僅差であるが、ロン・リーフェンに軍配が上がっていた。

 しかし、第三者の手によって、その軍配は反転する事になった。二人がいる空間へと続く道筋を順当に解いて来た西連寺マコトが、指輪から伸ばした光の線でロン・リーフェンの首を絞め上げた。

 首に光の線が喰い込む程にまで絞めつけられたロン・リーフェンは、黒宮アキトの体を絞める力が弱まり、その隙に黒宮アキトは脱出した。


「兄様!!!」


「終わりだぁ!!!」


 黒宮アキトはその場で高く跳躍し、ロン・リーフェンの顔面にドロップキックを放つ。そのタイミングに合わせ、西連寺マコトはロン・リーフェンの首を絞めつけていた光の線を思いっきり引っ張った。

 二人の合わせ技により、ロン・リーフェンの首は折れ、後頭部が背中にくっついてしまう。ロン・リーフェンの頭がプラプラと揺れながら、膝から崩れ落ちていき、床に倒れ込んでいった。

 死の直前、ロン・リーフェンが最期に見た光景は、静止の技の効力が解け、止まっていた時間が一気に押し寄せて老朽していく客人達の姿であった。


「……そうか……死を止める術は……時間に……あらず……」


 死を免れる新たな方法を悟りながら、ロン・リーフェンの体は消失していった。


「へへッ……オレの、勝ちだ……」


 ロン・リーフェンが消失したのを見届けた後、意識を失った黒宮アキトは前のめりに倒れていった。


「兄様!?」


 倒れた黒宮アキトのもとへ駆け込む西連寺マコト。うつ伏せになっている体を仰向けにし、怪我を負っている箇所と潰れた両腕に指輪から伸ばした光の線を巻き、応急処置を施す。


「見える部分の応急処置はこれで大丈夫。見えない部分の痛みは、兄様が起きてからにしよう……申し訳ございません、兄様。私がもう少し早く来ていれば、こんな事には……!」


 西連寺マコトは抱きかかえた黒宮アキトの頬に手を当て、親指で唇をなぞる。親指に触れる微かな呼吸を感じると、西連寺マコトは安堵と後悔の涙を流し、黒宮アキトを優しく抱きしめた。

 

 幸か不幸か、黒宮アキトの姿は、西連寺マコトが知る黒宮アキトの姿へと戻っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ