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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第4章 別れの時は必然に
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思い出作りの旅行

 黒宮アキトが西連寺マコトにプロポーズをした翌日。四人は西連寺マコトが用意した旅館に来ていた。歴史ある古風な旅館に見えるが、四人以外に客はおらず、従業員の姿も見えない。広い空間だというのに足音一つも聴こえない所為か、旅館自体に不気味さが漂っている。

 そんな不気味な旅館の玄関で、宮本達也と斎藤響は眉をひそめながら立ち尽くしていた。


「ここ、本当に大丈夫か……?」


「いや、大丈夫じゃないでしょ……」


「何をしてますの二人共! さぁさ、早く上がってくださいませ! ささ、兄様! 私達のお部屋までご案内致します!」


 黒宮アキトが靴を脱ぐや否や、西連寺マコトは黒宮アキトの手を掴んで部屋へと連れて行った。宮本達也と斎藤響は周囲の気配や音に意識を集中させながら、二人の後を追う。

 西連寺マコトが案内した部屋は、まるで宴会場のように広く、障子を開くと外の景色を一望できるベランダがあった。


「広過ぎるだろ!!! 俺達は団体客か何かか!? こっちは四人だぞ!?」


「落ち着きなさい達也。言ってる事が無茶苦茶になってるわよ。でも、本当に広い部屋ね」


「意外だな。マコトなら、達也と響を別の部屋にすると思っていたが」


「二人きりの部屋なら、結婚した後でいくらでも用意出来ます。でも今回は私達の結婚祝い。そして、別れの会でもあります。短い間でしたが、共に同じ家に住んだ住人、家族である二人も一緒の部屋が良いと思いまして」


「そうか。偉いな、マコト」


 今まで自分以外の誰とも交流を拒んできた西連寺マコトの成長に感心し、黒宮アキトは西連寺マコトの頭を撫でた。子供扱いされている事に若干の不服さを抱いていた西連寺マコトであったが、満更ではない様子であった。

 

「それにしても、アキトとマコトさんが結婚か……そんな素振り、全然無かったけどね」


「二人が結婚したら、もうこんな風に気軽に会えなくなるな。二人は祓い士の村に戻って、俺達は朝ヶ丘町に残る。何だか寂しいな……あ、そうだ! 俺達もアキト達と一緒に祓い士の村に行こうぜ!」


「なに馬鹿言ってんの? 祓い士でもない私達が行ける訳ないでしょ?」


「そうですね。祓い士の村は祓い士以外の人間が足を踏み入れる事を良しとしていません。兄様のご友人と言っても、受け入れはしません」


「そ、そんな~……」


「どんな時でも別れの時は来るものよ。ほら、一番うるさいあんたが初めからそんなんじゃ暗いじゃない! さっさと気を取り戻す! ほら!」


 斎藤響は宮本達也の暗い気分を晴らそうと、背中を叩いた。しかし、思ったよりも力が入ったようで、背中に走った痛みに宮本達也は悶絶し、床を転げ回った。斎藤響が思っていたような結果では無かったが、目的のうるささが戻ったので、宮本達也を部屋の隅にまで蹴って転がしていく。

 

「あの二人、本当に仲が良いですね。喧嘩ばかりでも絶対に離れず、一緒にいるのが当たり前のよう……羨ましいです。兄様、私達もあんな風になれるでしょうか?」


「それは……」


「……フフ。申し訳ございません、兄様。そうですね、まだ私達は結婚の約束をしたばかり。簡単になれるとは思っていません。ですが、必ずや兄様とあの二人、いえ、あの二人以上の繋がりがある夫婦になってみせます!」


「……そうか」


「覚悟してくださいね、兄様! フフフ!」


 普段は大人びた様子の西連寺マコトだが、歳相応の少女らしい笑顔を黒宮アキトに向けた。その表情から、心の底から湧き上がる嬉しさと楽しさが表れていた。

 その純粋な笑顔は、今の黒宮アキトの心を深く突き刺す。突き刺さった心の穴から罪悪感が漏れ出し、それが表情に出る前に、黒宮アキトは西連寺マコトの傍から離れる。

 幸か不幸か、自分の傍から離れた黒宮アキトの行動を西連寺マコトは照れ隠しだと思った。

  

「意外と可愛らしい一面があるのですね……フフ。さて、持ってきた荷物を部屋にまとめておかないと」


 西連寺マコトは指輪の中に取り込んでいた荷物を部屋の中に置いていき、広いだけの何も無い部屋が、あっという間に娯楽用品まみれに変貌した。まるで子供が考えた理想の部屋へと。

 

 一行が部屋に来てから1時間が経とうとしていた。黒宮アキトと宮本達也は対戦ゲームで遊び、西連寺マコトと斎藤響はテーブルに敷き詰めた花嫁衣裳を特集した雑誌を読み漁っていた。

 

「よしよしよし!!! 勝てる! 今度こそ勝てるぞ俺は!!!」


「……」


「こいつでトドメだ!!!」


「はい」


「あ」


「僕の勝ち。これで54連勝か……まだ、やるか?」


「やるに決まってるだろ!? 勝つまでやるぞ!? というか何で俺達は旅館に来てまでゲームばっかやってんだ!?」


「さっきからうるさい達也!!!」  


「だっておかしいだろ!? 旅館だぜ!? 旅行だぜ!? なのにいつまでも部屋の中で閉じこもってゲームやら雑誌やらばっかで! これじゃあ家と変わんねぇよ!」


「……なら、ここを探検してみますか?」


「探検? いいじゃん、面白そう!」


「いいんですか? その、怒られたり……」


「大丈夫です。ここは忌み嫌われて捨てられた廃旅館。誰も文句など言いませんよ」


 何気なく放った西連寺マコトの言葉に、宮本達也と斎藤響に衝撃を受けた。  


「……ここ、廃旅館なんですか?」


「ええ」


「……いわくつき、とかですか?」


「いわくつきです」


「「……なんでそんな場所を選んだんですか!?」」


 いわくつきの場所にいる事を理解すると、宮本達也は黒宮アキト背中にしがみつき、斎藤響は向かい側に座っている西連寺マコトの隣に移動する。西連寺マコトは斎藤響を落ち着かせる為に背中をさすり、黒宮アキトはしがみつく宮本達也を床に投げ飛ばした。

 

「まぁ、いいじゃないか。怪異が潜む旅館……僕達らしい宿泊地だ。だが今日は最後の思い出を作る旅行。最高の思い出を作る為にも、早いとこ怪異を祓うとしようか。怪異探偵、最後の活動だ」


 黒宮アキトの言葉に、三人は頷き、部屋から出ていく黒宮アキトの後ろ姿を追っていった。

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