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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第3章 手錠で繋がれた縁
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ゾンビ映画

 呪いのビデオに録画されていた映画の中に吸い込まれてしまった黒宮アキトと西連寺マコト。二人が立っている場所は何処かの街。街は荒廃しており、崩れかけの建物や割れた道路の上に無人の車が放置されている。 


「あのビデオの力か」


「ええ。警戒を怠らないでくださいませ兄様。自らの世界を持つ怪異は、普通の怪異よりも力は強大です」


「分かってる……だから、いい加減離れてくれるか?」


 怪異に巻き込まれているにも関わらず、未だにコアラの親子のように黒宮アキトに抱き着いて離れない西連寺マコト。西連寺マコトは顔を上げればすぐ目の前にある黒宮アキトの顔を見上げると、頬を赤く染めて胸元に顔を埋めた。


「いや、だから離れてって」


「あと5分! もしくは10分でも構いません!」


「普通は短くするもんだろ! あー、もう! こんなんじゃ良い的だろ!?」


『アキト! アキト!』


 黒宮アキトが西連寺マコトを引き剥がそうと必死になっていると、どこからか宮本達也の声が聞こえてきたのを耳にする。 


「達也?」


『っ!? 聞こえてるのか、俺の声!?』


「ああ、聞こえている。お前達は無事か?」 


『俺も響も無事だ! それにしても、何だってテレビの中にいるんだ!?』


「怪異の仕業だ。さっき依頼の報せが―――」


 その時、二人が立っている場所から少し離れた先に、一人の女性が現れた。女性はボロボロの状態になっており、おぼついた足取りで歩いてくる。


「僕ら以外に取り込まれた人間か?」


 すると、今まで黒宮アキトから離れなかった西連寺マコトが自ら離れ、前方へ指輪を向けて女性の正体を探り出した。それを真似するかのように、黒宮アキトも自分の指輪で前方へ向ける。

  

「……ん? あの女、人間じゃないな」


「ですが、怪異でもないようです」


「人でも怪異でもない。異形という感じでもない。そもそも、気配を探れないな」


「状況を整理しましょう。私達が今立っている場所は、テレビの中。キッカケはあのビデオ」


「あれはビデオの中の人物か」


「おそらく。そして肝心の怪異の気配は全く感じられない。この世界の何処かに隠れているのでしょう。そして当然」


「僕らが来た事を知っているな。なら、さっさと捜し出して祓うとしよう」 


 状況を整理し、目的を決めた二人は、その場から立ち去ろうとする。


『アキト! マコトさん! 待った!』


 立ち去ろうとする足を止めるように叫んできた宮本達也の声に、二人は足を止めた。再び二人が後ろに振り返ると、先程まで一人の女性しかいなかった前方には、女性と同じくボロボロの状態の人間の集団が集まっていた。集団で集まっている所為か、先程は聞こえていなかった呻き声や、感じられていなかった不気味さが露わとなっていた。

 

「物乞いの集団でしょうか?」


「しまったな。あれだけの数の物資は持ち合わせに無いぞ」


『二人共! 逃げろ!』


「先程は、待て、とおっしゃったのに、逃げろ、ですか? あなたは私達の邪魔をしているのですか?」


『え、あ、いや……』


「あんまり達也を怖がらせるな。ああ見えて臆病なんだよ。で、どうしたんだ達也?」


『あ、ああ。俺の見間違いじゃなきゃ、あいつらゾンビだ!』


「「……ゾンビ?」」


 宮本達也は二人に危険を伝えようとするも、俗世の娯楽に疎い二人は【ゾンビ】という言葉自体を知らなかった。


『え、ゾンビ知らないの? あんなにメジャーなのに!?』


「知らん。なんだその、ゾンビってのは」


「えっと、作品によって設定は違うけど、死人が生きているように動く化け物だ! ゾンビに噛まれれば、噛まれた奴もゾンビになっちまう!』


「何故噛まれればゾンビになるのですか?」


「ええっと、それも作品によって設定が違うけど、噛まれた所にある血管内にゾンビウイルスが入り込むからだ!』


「その、ゾンビウイルスってのは?」


『えええっと、これも作品によって設定が―――』


「いえ、もう説明はいいです。要は、噛まれなければよろしい、という事で?」


『あ、はい……だ、だから! 今すぐそこから離れてください!』


 宮本達也は二人に逃げるように促すが、既に遅かった。悠長にゾンビについて説明を受けていた間に、二人はゾンビの群れに囲まれていた。その数は優に百を超えており、白く濁った瞳を二人に向けている。


「あら? 囲まれてしまいましたね、兄様」


「みたいだな」


『そんな呑気な事言ってる場合か!?』


「達也、ゾンビってのは強いのか?」 


『いや、頭を吹っ飛ばせば死ぬくらいには弱い。だが、奴らの恐ろしさは物量だ! 生きてる人間に大勢で襲い掛かってきて―――』


 宮本達也が説明をする最中、西連寺マコトは数体のゾンビの頭部を蹴りで刈り取っていた。素早い身のこなしから繰り出された西連寺マコトの蹴りは、刀匠によって砥がれた刀のような切れ味を持っており、達人の域を超えていた。

 

「あら、随分と脆いですね。綺麗に頭が刈り取れてしまいました」


「お前の蹴りが凄いからだろ。流石は西連寺家の一人娘。術だけでなく、体術も抜け目が無いか」


「ねぇ、兄様。ここは勝負を致しませんか? どちらが多く首を刈り取るか。勝った者は、負けた者の言う事を何でも聞く、とか?」


「何でも?」


「ええ。ええ、そうです! 何でもでございます! 私の体を好きに貪ってもよろしいですし、逆に私が兄様の体を貪ってもよろしいですよ!」


「流石に人の肉は食いたくないな……なぁ、ちょっとしゃがんでくれないか?」


「え? こうですか?」


 言われた通りに西連寺マコトがしゃがむと、その隙に黒宮アキトは指輪から妖刀を取り出す。周囲を斬るように妖刀を振り、再び妖刀を鞘に戻すと、周囲を囲んでいたゾンビの首が跳ね飛び、周囲にある建物まで崩れていく。

 黒宮アキトは妖刀を使った事に不服を持っている西連寺マコトを見下ろすと、ニヤリと笑った。


「兄様! それはズルです!」


「ズル? お前、武器は使うなと言ってなかったろ?」 


「っ!? で、ですが!」


「という事で、僕の勝ちだ。敗者は勝者の言う事を何でも聞くんだったよな? それなら、今後は僕の言う事に絶対服従を命ずる」


「それは横暴です! ずっとは無し!」


「勝者の言う事は?」


「ぐっ……絶対、服従……あ、でもこういうのも良いかもしれませんね。兄様に私が好き放題されてる感じがして!」


「うわぁ……お前の前向きな所、羨ましさを通り越してキモいよ……」


『……いや、二人共キモいよ……強過ぎて……』 

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