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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第2章 怪異探偵 神宿る稲
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縁で繋がる

 田神村の異変の元凶である怪異を祓い、請負人としての仕事を完了した三人。佐奈は三人を見送ろうと、一緒に迷いの森を歩いていく。道中で他愛のない話を交わしながら森の奥へと進んでいくと、先頭を歩いていた黒宮アキトが立ち止まった。


「ん? どうしたアキト?」


「……佐奈。見送りはここまでいい」


「ここまでって、まだ出口も見えてないぞ?」


「響、達也を連れて先に行ってくれ」


「……はぁ、分かった。佐奈さん、お元気で。ほら、行くわよ達也。」


「え? ちょっ!? 引っ張んなよ! あー、佐奈さーん! またいつか会いましょうねー!」


 斎藤響が宮本達也の腕を掴んで先へ進んでいくと、突然目の前から姿を消した。その光景を目の当たりにした佐奈は心配になり、後を追おうとする。

 しかし、その行く手を黒宮アキトは阻んだ。


「アキトさん、見ましたよね今の!? 何かあったんですよ、二人の身に!」


「大丈夫だ。あいつらは一足先に元の時間軸に帰ったんだ」


「え……?」


「佐奈。君と僕達は、違う時を生きているんだ。つまり、僕らはこの時代よりも未来から来た」


「え……えぇ……?」


 黒宮アキトの言葉を佐奈は理解出来ずにいた。怪異や田神村が跡形も無く消失した非現実的な光景を目にしても、未来から来たという話は突飛であった。


「僕らは田神村に着く前に、森の中で怪異と遭遇していた。姿を見ていなかったが、あの怪異の正体は……佐奈、君だと思うんだ」


「私が、怪異に……?」


「ああ。君は怪異となって得た力を使って、君が怪異になる前の時間軸に僕らを呼び寄せた。自分が怪異にならないよう救ってもらう為に」


「……それじゃあ、あの二人は無事なの?」


「ああ」


「……正直、アキトさんの言っている事はよく分からない……でも、あの二人が無事だと知れてホッとしました。それだけで、十分です」


「僕も僕自身が言った事をよく理解出来ていない。時間が逆行するなんて、初めての経験だしね。だから僕が立てた仮説が正しいかどうかが分かるように、この森を抜けた所に目印を付けて欲しい。確かにここに君がいた証を残して欲しいんだ」


「……分かりました」


「ありがとう。それじゃあ、僕も行くよ」


 黒宮アキトは佐奈から背を向け、先に行った二人の後を追おうとする。


「待って!」


 元の時間軸に戻れる境界線に足を踏み入れる直前、黒宮アキトは佐奈に呼び止められた。佐奈にはどうしても知りたかった事があった。


「どうして、私は消えなかったの?」


 佐奈が疑問に思っていた事は、田神村の住人の中で自分だけが消えなかった事であった。イナミの信仰は捨てたが、自身も他の村の者と同じく稲から生まれた存在。そして稲はイナミが生み出した物だ。イナミが消えれば、イナミが生み出した稲も消える。実際、村の住人達はイナミと共に消えていった。

 しかし、どういう訳か自分だけは消えなかった。その謎の答えを佐奈は黒宮アキトに尋ねた。 

 

「友達が出来たからさ」


 長くて分かりにくい答えを佐奈は覚悟していたが、黒宮アキトはたった一言で答えを済ませた。佐奈が答えに納得していない様子を見て、黒宮アキトは自分が言った意味の説明を始めた。


「縁だよ。君や田神村の住人達はイナミとの縁があった。でも、君は達也と響と友達になった。君自身の意思でね。そして君は信仰を捨てる事を選び、イナミとの縁を切ったんだ。信仰は縁を結ぶのは容易いが、切るのはもっと容易い。それに対して人との縁は強固だ。どれだけ相手の事を嫌いになる事が起きても、その縁はずっと続く。君が死んだ後も、あの二人との縁は繋がったままだ」


「私が死んだ後も、縁は続く……」


「そうだ。この先、君はあの二人以上の友達を作るかもしれない。結婚をして、我が子にも恵まれるかもしれない。でも忘れないでほしい。君が今、人として生きていられるのは、あの二人との縁のおかげだと。フッ、押しつけがましいがね」


「いえ、そんな事ありません!」


 佐奈は自身の胸に手を当て、宮本達也と斎藤響、そして黒宮アキトを強く想う。心臓に杭を打ち込むように、三人との縁を忘れないように。


「……私、あなた方との縁を大事にします! 短かったけど、あなた達と過ごした時間を決して忘れません!」


 佐奈は涙を流しながら強く決心した。その言葉を受け止めた黒宮アキトは微笑むと、自身の時間軸へと続く境界線を跨いだ。

 境界線を越えた先には、あの無人駅があった。しかし、最初に来た時に見たよりも、無人駅は老朽化しておらず、所々に修繕をしている箇所がある。

 ふと、後ろに振り向くと、そこには【田神村】と書かれた看板が地面に刺さっていた。人の手によって整備された道が村まで続いており、その道の先から一台の軽トラが走ってくる。

 

「……ハハ。家庭どころか、村まで作ったか。大した証だよ、佐奈」


「おーい! アキトー! 電車来ちまうぞー! 早く来いよー!」


「ああ、すぐ行く!」


 佐奈がいた時代が三人の時代とどれだけ離れているのかは定かではない。きっと二度と三人が佐奈と再会する事は無いだろう。

 だが、時代や場所が違っても、三人と佐奈の縁は繋がっている。これから先も、ずっと。

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