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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第2章 怪異探偵 神宿る稲
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元凶を絶つ

もしかしたら書き直しするかもしれません

 黒宮アキトが一歩足を進める毎に、村長を含めた村人達は後ろへと後退していく。黒宮アキトの眼光か、あるいはその手に握られた意思を持つ妖刀に恐れてか。いずれにせよ、村人達の戦意は喪失しまっている。

 

「……ここに戻ってくるまでに、いくつか僕の中で仮説を立ててみた。あーでもないこーでもないと言いながらな。で、最終的に一つにまとまった。まぁ、あんまり現実味が無いが。佐奈! お前は自分の出生を憶えているか?」


「……え?」


「村の連中もだ。誰か一人でも、自分の出生について憶えている奴はいるか?」


 田神村の住人達は誰一人として、黒宮アキトの問いに答えられなかった。皆、自分の記憶を遡っていくが、小さかった頃の思い出や両親の顔すら憶えていない。その事に今まで気付かずに過ごしていた村の住人達は、一つの疑問を抱いた。

 自分達は人間なのか、と。


「誰も答えられないのか? では次の質問だ。村の人間が死んだ所を見た事は? 逆に村の人間が増えたのを知った事は?」


 二つ目の質問も村の住人達は答えられない。皆、自分の名はおろか、他の者の名前も知らなかった。佐奈は自身の名前を三人に明かしたが、その名前は頭の中で浮かんだ偽りの名前であった。そして村の住人達は二つ目の疑問を抱く。

 自分と他の者に何の違いがあるのか、と。

 

「記憶も無く、名前も無い。他者を他者と認識出来ない。同じ日々をループするように生き続ける。お前達は人間じゃない。人の形で産まれたのは、人が一番適していたからだ。子を育てるだけなら動物にでも出来る。だが植物、稲を育てるには人でなければいけない。つまり、お前達はお前達が信仰する神によって作られた奴隷だ」


「それがどうしたと言うのですか!?」 


 黒宮アキトが淡々と話していると、村長が声を荒げながら前へと出てくる。


「我々は皆、イナミ様に捧げているのです! 作られた奴隷? 結構でございます! 我々が為すべき事はイナミ様への変わらぬ信仰! それに反する者は我々の―――」


「それだ! それを知りたかったんだ!」


「……なんですと?」


 黒宮アキトが立てた仮説には、一つの不安点があった。それは村の住人が信仰を捨てる事があるかどうか。

 だが、村長が言った【反する者】という言葉に、自身が立てた仮説が正しかった事が判明した。仮説が正しいと分かった今、これから行う行動を迷う事なく実行できると決心出来た。 


「怪異とは本来、強い負の感情、つまり人の心から生まれてくる。地位や金がある者、家族も友達もいない者。持つ者も持たざる者も関係ない。迷いの森を抜けた先で、ここの村の住人達の変死体があった。彼らは自分達が奴隷として扱われていた事に気付き、かつて信仰していた神への憎しみから怪異となった。だが、その力に体が耐え切れず、結局は死んでしまった」


「……フフフ……アッハハハ! それが、それがどうしたというのです!? そんな事、田神村とは関係の無い祓い士様が気にする事ではないでしょうに?」


「ああ、そうだ。お前らが死のうがどうだっていい。僕がここに来たのは怪異を祓う為だ。そして怪異となり得るお前達も、例外じゃない……まずは元凶を潰す!」


 黒宮アキトは妖刀に掛けていた封印を解き、田んぼの方に体を向け、抜刀した。刃は空を斬り、一見何も斬っていないように見えたが、黒宮アキトと妖刀だけは手応えを感じていた。


「良い腕前だ、アキトよ」


 黒宮アキトが妖刀を鞘に戻すと、広大に広がっていた田んぼの稲が、まるで思い出したかのように斬られていく。黒宮アキトはたった一振りだけで、田んぼの稲が全て斬った。斬られた稲はかつての黄金さが消え失せ、その身を黒く変色していき、やがて未完成の人の形となる。

 その光景を見た田神村の住人達は絶叫した。自分達は人間ではなく、自分達が育てていた稲から産まれたと知り。これまで絶対の信仰を貫いてきた村長でさえも、その光景を目の当たりにして唖然としていた。

 稲が人となる非現実的な光景に全員が驚く中、更に異変は起こった。晴れ渡っていた青空は暗い夜空へと変わり、地上を照らしていた太陽が位置していた所には満月が浮かぶ。時間が加速したのだ。

 稲から田神村の住人を作る仕組み、田神村の時間操作、それらの元凶である怪異が田んぼの土の中から姿を現した。

 その怪異は巨大な白い大蛇、イナミであった。イナミは黄金の瞳で田神村の住人に眼光を飛ばすと、田神村の住人達の体は黒く変色していき、やがて怪異と化す。そんな中、佐奈だけは人の形を留めたままであった。


「一気に怪異化させてきたな。村の住人は奴の思うままか」


「そのようだな、アキト。それで、どうする?」


「手間が省けて丁度いい。さっきの試し斬りで、お前に制御が効く事も知れたしな。もう一度斬らせてもらう!」


「是非とも! お主が望むままに斬ってみせよう!」


 黒宮アキトは妖刀に指輪の力を纏わせ、イナミと怪異化した村人達だけを斬るように妖刀に念じて抜刀する。その念に妖刀は応え、対象に刀身が届いていなくとも、【斬った】という事実が発生する。

 黒宮アキトが振るった一振りは、イナミと怪異化した村人達を切り裂き、刀に纏われた指輪の力で祓われていく。

 元凶であるイナミが祓われた事で、田神村の時間は本来の夕方に戻り、田神村の住人は佐奈を除いて消失していった。

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