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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第2章 怪異探偵 神宿る稲
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謎と謎

 宮本達也と斎藤響、そして世話役である佐奈もまだ眠り続けている中、黒宮アキトは家から出ていった。外はまだ暗いが、山のてっぺんから陽の光が今にも顔を出そうとしている。黒宮アキトは右手の中指に指輪が着けられているかを確認すると、怪異が潜伏していると疑われる迷いの森へと向かっていく。

 迷いの森の前にまで辿り着くと、そこは田神村に来る前に怪異に追われていた森だと知る。薄暗い森の中は静寂に包まれており、明かりも無しに入っていくのは危険であった。

 黒宮アキトは指輪から緑色に光る球を自身の傍に浮かばせ、迷いの森の中へと足を踏み入れた。


「あ、そうだ」


 黒宮アキトは指輪から妖刀を取り出した。指輪から出れた妖刀はすぐに暴れようとするが、封印の所為で鞘から抜け出せず、何も出来なかった。


「アキトよ、遂に我の出番なのか?」


「そうだ。お前に相応しい出番だぞ」


「そうか! 何を斬る!? 怪異か!? それともこの森そのものか!? 我の役目は何だ!?」


「道しるべだ」


「……なんだと?」


 与えられた役目を理解出来ずに困惑する妖刀。そんな妖刀の気持ちを気にもせず、黒宮アキトは妖刀を木の棒に見立て、地面に線を引きながら森の奥へと進んでいく。それは刀としての本来の扱い方とは全く違う役目であった。

 しかし、今までマトモに自身を握ってくれる事が無かったので、理由はどうあれ、妖刀は自分が扱われている事自体を喜ぶ事にした。

 

 黒宮アキトが迷いの森を真っ直ぐ進んでから、およそ10分程経った。肝心の怪異の影はおろか、気配する感じられない。違和感を覚えた黒宮アキトは、妖刀にとある提案をする。


「なぁ、お前に指輪の力を付与する事は出来るのか?」


「安心しろ。以前までの我ならともかく、今は刀だ。無論出来よう。しかし、アキトよ。何をするつもりなのだ?」


「うーむ……木でいいか」


 黒宮アキトは妖刀に指輪の力を纏わせ、傍にあった木に振りかぶった。刀の鞘と木がぶつかった時に発生した音は、静寂に包まれた森の中を駆け巡っていく。


「っ!? アキトよ!? いくらなんでも扱い方が酷過ぎるぞ!? 我は斧ではない! 刀だ!」


「……おかしい」


「そうだ! お主おかしいぞ!?」


「そうじゃない。怪異を察知出来なかったんだ。これだけ静かな森の中なら、音はどこまでも響いてく……だが、何も反応が無かった」


 黒宮アキトが妖刀を木にぶつけたのは、イタズラや腹いせではない。発生した音に指輪の力を乗せ、響き渡っていく音が怪異に触れると、当たった感触が術者である黒宮アキトに感じられる。つまりは、探知器のような使い方をした。

 しかし、森の隅から隅まで響き渡っていく音が怪異に触れる事は無かった。


「ここに怪異がいるとは思えない。だが、田神村の周辺で隠れられる所といったら、この森しか……」


 黒宮アキトは疑問に思いながら、再び足を進めた。田神村の村長の話では、満月の夜にイナミ様が現れ、怪異をこの森の中へと追い払った。その話が本当であれば、怪異は必ず森の中に潜んでいる。

 だが、怪異の反応は一切無かった。


「じゃあ一体、どこに隠れてるんだ……?」


 黒宮アキトは眉間を指で突きながら、怪異の所在を考え込んでいると、足元に自分の影が見えた。特におかしな点ではなかったが、見れば見る程に、影が見えるのはおかしかった。

 俯いていた顔を真正面に向けると、壮大な草原の光景が目に飛び込んできた。


「……ハ、ハハ……なんで、何も無いんだよ……」


 本来であれば、森を抜けた先には老朽化した無人駅がある。だが、まるで初めから無かったかのように、無人駅は存在していなかった。


「おい妖刀野郎。お前は何か感じるか?」


「いや、何も感じん。進む先を間違えただけではないか?」


「いいや、それにしても何も無さ過ぎる。それに、あの森を抜けるのも随分と早かった。行きはどこまでも続いてるかのようだったのに」


「……考えうるは」


「ああ。あの怪異の力だ。以前のお前のような、自分の世界へ引きずり込む怪異だ」


「いや、それはありえん」


「何故だ?」


「確かに我のように自身の世界を創造し、その世界へ引きずり込む怪異は存在するだろう。だがそれでいけば、お主達は今も森の中だ。あの森の中で、妙な感覚に陥ったであろう?」


「……じゃあ、僕らが今いるこの場所は何だ?」 


 祓い士の黒宮アキトも、怪異であった妖刀も、この不可思議な現象を理解出来ずにいた。理解するには、何かが足りない。まるで、パズルの最後のピースように。

 呆然と立ち尽くす中、草原を揺らす穏やかな風が吹き、黒宮アキトの体を撫でていく。その風から微かに感じた異臭に、黒宮アキトは首を傾げた。周囲を見渡していくと、風で揺れる草原の中に、何かがあるのを目にした。黒宮アキトは目にした何かへ警戒しながら近付いていく。


「……どう思う?」


「どうも何も、お主が見た通りだ」


 草原の中に見えた物。黒宮アキトの足元にあるそれは、人間の死体であった。肌は黒く変色しており、肉の無い体には骨が浮き出ている。普通の死体とは違う変死体。その変死体の姿で黒宮アキトが気になったのは、田神村の住人達が着ているような古い服を着ていた事であった。

 すると、今度は強い突風が吹き、草原を倒していく。さっきよりも草原の中が露わとなり、そこらかしこに黒宮アキトの足元にある死体と同じような死体が転がっていた。


「これは……どう思う、アキトよ」


「……フッ。どうも何も、お前が見た通りだ。あのババア、何か隠してやがるな」


 新たな謎と深まる謎の二つを手に入れた黒宮アキトは、田神村の村長に話を聞く為に、再び森の中へと戻っていった。

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