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僕の青春は怪異と共に  作者: 夢乃間
第2章 怪異探偵 神宿る稲
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田神村

 広大に広がる田んぼを横目に、三人は田神村の集落を目指していた。やがて空が夕焼けに変わり、田んぼの稲が夕陽に照らされ、黄金に輝き出す。その光景は、この世のものとは思えない程に幻想的であった。


「本当に綺麗……田んぼなんて田舎臭くて、あんまり魅力を感じてなかったけど、ここのは凄く魅力的」


「まるで絵画みたいだよな」


「……見えたぞ」


 黒宮アキトが指差す方へ二人が視線を向けると、そこには人間が住んでいると思われる集落が存在していた。今の時代とは違う、古い木造の家が建ち並び、集落の中心部には塔のような背の高い建物が建っている。

 三人が集落に辿り着くと、村人達がそれぞれの生活を送っていた。その様子を見た斎藤響は、村人達の着ている服や髪も、この集落の建物と同じ古い時代のものだと思った。


「なんだか、みんな今の人とは思えない感じね……」


「田神村は外の世界と繋がりを断っているからな。古臭いって言葉より、歴史があるって言った方が良い」


「それ、どっちも同じ意味じゃない?」


「言い方の問題だよ。古臭いって、なんだか悪口みたいだろ?」


「あー、確かに……で? 私達はいつまで隠れてるの?」


 明らかに外の人間の装いをしている三人は、集落の中に入るのを迷っていた。このまま集落に入れば、混乱が起きるのは避けられない。

 村人達を混乱させずに集落の中へ入れる方法を黒宮アキトと斎藤響が考えていると、二人の肩に手が置かれた。二人が振り向くと、宮本達也が自信に溢れた表情を浮かべていた。


「俺に任せとけ。ようは警戒されなければいいんだろ?」


「まぁ、そうだけど……あんた、何か考えがあるの?」


「おう! とっておきのがな!」


「……私の経験上、あんたが自信に溢れてると、大抵が最悪な事になってるんだけど」


「響、ここは達也に任せてみよう」


「えぇー……」


「というわけで、達也。見せてもらうぞ、お前の策を」


 斎藤響の心配をよそに、黒宮アキトは宮本達也を送り出した。


「本当に一人で行っちゃった。ねぇ、アキト。あいつに任せて大丈夫かしら?」


「まぁ、駄目だろうな」


「だよねー」


 失敗する未来を予感しつつ、二人は隠れたまま宮本達也の動向を見守る。そんな二人の気持ちなど知る由もなく、宮本達也は集落へと入っていく。

 宮本達也が集落に入るや否や、村人達は突然現れた見知らぬ人物の存在に困惑していた。危機を予感して家の中へ避難する者がいれば、武器になりそうな物を手に取る者もいた。

 どんどん危険な状況へと移り変わっていく中、宮本達也は自身が考えていた策を実行する。


「やあやあ皆さん! 俺は各地を転々とする旅芸人だ! 夢は天下の大芸人! 是非、お見知りおきを!」


 堂々と嘘を並べながら高らかに宣言する宮本達也の姿に、斎藤響は笑い死にそうになり、黒宮アキトは頭を抱えていた。 

 そして当然、村人達からは更に疑いの目を向けられていた。ただでさえ怪しく見えていたのが、旅芸人という素性の分からなさで、信用の無さが絶対に変わっていた。手ごたえを感じていた宮本達也だったが、村人達は敵意のある目で襲い掛かってくる。

 

「え? あ、いやちょっと待って!? プラン変更だー!!!」


 両手を上げながら宮本達也が叫ぶと、宮本達也に襲い掛かろうとしていた二人の村人を黒宮アキトが一蹴する。一足遅れて駆けつけた斎藤響は、倒れた村人から棒を拾い上げ、宮本達也の盾になるように前へ立ち塞がった。

 

「まったく! だから自信に溢れたあんたは信用出来ないのよ!」


「旅芸人ってロマンがあるだろ!?」


「それだけの理由で信用が勝ち取れると思ってたの!?」


「二人共、喧嘩は後だ。来るぞ」


 村人達は三人を敵と判断し、集団で襲い掛かってくる。黒宮アキトは持ち前の体術で村人達を無力化させていく。手も足も出ない事を悟った村人達は、三人の中で一番弱そうな宮本達也へと標的を変える。

 しかし、宮本達也の盾となっている斎藤響がそれを許さなかった。斎藤響は剣道で鍛え上げた剣術で、次々と襲い掛かってくる村人達を倒し、意識が二人にいっているのを隙に、黒宮アキトが後ろから村人達を無力化していく。

 そうして僅か数分。三人の足元には数十人の村人達が倒れている光景が出来上がった。


「これで終わりか?」


「そうみたい。他はそれぞれの家に隠れてる」


「……お前ら、本当に俺と同じ人間か?」


 二人の強さに宮田達也が若干引いていると、仮面で顔を隠した5人の集団に守られた老婆が三人の前に現れた。斎藤響は再び棒を構えるが、彼らに敵意が無い事を察した黒宮アキトが棒を下ろさせた。


「旅の方々。突然の無礼をお許し願います。私は神田村の村長です」


「僕は祓い士の黒宮アキト。西連寺家の請負人として参上した」


「西連寺家の方でしたか……! そうですかそうですか! 私の願いがようやく届いたのですか!」


「まず先に言っておくが、僕らに敵意は無い。この惨状も、正当防衛の結果だ」


「もちろんでございますとも。そうですか、ようやく……ここでお話を始めるより、私の家で依頼のお話をしましょう。お連れの方は、空き家へご案内させていただきます」


 そう言うと、村長の周りを囲っていた集団の一人が前に出て、宮本達也と斎藤響を手招いた。


「こっちに来い……って事か?」


「従っていいのかな……?」


「大丈夫だろう。僕は村長に話を聞いてくる。二人は待っててくれ」


「「分かった」」


 三人はここで別れ、宮本達也と斎藤響は仮面を着けた人物についていき、黒宮アキトは村長の後をついていった。

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