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盗賊、現る

ガラガラガラガラガラガラ





「ん?」


 コンを肩に乗せて歩いていると、遥か後方から何かの音が近づいて来るのを感じた。


「あれは……馬車かな?」


 何気なく見てみると、二頭の馬を繋いだ馬車が、猛スピードでこちらに向かってきていた。


(なんであんなに急いで……ん? 馬車の後ろに何かいる?)


 馬車の陰になっていてよく見えなかったが、近づくにつれて急いでいる理由がわかった。

猛スピードで駆け抜ける馬車の後ろには10頭ぐらいの馬がいて、それぞれにガラの悪い男たちが乗っていたのである。それぞれ、剣や斧を持っている者や、弓を構えている者までいる。


(あー盗賊に襲われてるのか。ご愁傷さまです)


 ルークには、見ず知らずの馬車を助ける等という考えは無い。

赤の他人を助けるために、十人もの盗賊を一人で相手取る等、普通なら自己犠牲に酔っているか、ただの馬鹿か、相当なお人好しか……とにかく、ルークはどれでもないのである。


「おい君! 盗賊に襲われとるんじゃ! 早く逃げなさい!」


 他人事のように考えていると、馬車の御者らしきお爺さんがこちらに気づき、声をかけてきた。

黒い髪に黒いひげを蓄え、座っているから正確には判断できないが身長が百八十センチはありそうで、肩幅も広い。

しばらく眺めているうちに、馬車が目と鼻の先まで迫ってきており、こちらが逃げないことに気づいたのか、お爺さんは慌てた顔で手を伸ばしてきた。


「掴まれぇ! 殺されてしまうぞ! ……て、な、何しとるんじゃあ!!」


 ルークを馬車に乗せるため、必死の形相で手を伸ばし、腕を掴もうとしてくる。

ルークはその手をサッと避けると、御者のお爺さんに向かって手を振り、肩に乗っているコンは尻尾を振っていた。その様子に、走り抜けてしまったお爺さんの顔は真っ青である。


「自分も盗賊に殺されそうなのに人の心配が出来るのか。これを『人間ができている』って言うのかな? な?コン」


 自ら手を拒んだ少年に対して、お爺さんは馬車を止めて少年を乗せようかと考えていた。だが、少年を見捨てたくはないが、ここで引き返せば盗賊に追いつかれてしまう。心苦しいが、そのまま逃げ続けるしかないのである。


(王都の名物って何だろうか……)


 コンの喉元をくすぐりながら、ルークは再び歩き出す。盗賊がこちらを無視して通り過ぎていけば関わることもないので、特に気にしたりはしない。


 そもそも、盗賊が追っているのは馬車である。ルークはギフト【倉庫】によって手ぶらである。何も持っていない。

何を積んでいるのかは知らないが、大して荷物を持たずに歩いている少年一人を襲うより、馬車を追いかけた方が実入りも大きいだろう。ルークを襲っている間、馬車は待っていてくれるはずもない。ルークを襲って馬車を逃がす等、大損もいいところだ。ならば、ルークを無視して馬車を追いかけるのが賢い選択である。

それらの考えにより、特に慌てることなく再び歩みを進める。


「頭ァ見て下せェ。ガキがいますぜ」

「あぁ。ただ横を通るってのも失礼な話だ。通り過ぎざまに一発プレゼントでもしてやれや」

「さすがお頭だ!お優しいこった」

「俺にヤらせてくれェ!」


 辺りに一帯に、盗賊たちの笑い声が響き渡る。

所詮は盗賊。何も論理的な考えは持ち合わせていない。ただ楽しいから殺し、奪い、犯す。

どこまでも自分達の都合や快楽を優先し、他者の尊厳を踏みにじって生きてきた連中だ。


 だが、今まで上手くいったからと言って、これから先も上手くいくとは限らない。

盗賊団の最後が、刻一刻と近づいていることを、まだ盗賊団の誰も知らない。


 少年まであと少しというところで、盗賊は剣を振りかぶる。馬の走る勢いも追加され、少年の首が飛ぶかへし折れるか、どちらにせよただでは済まないだろう。


「あ~ばよ! ……あ?」


 それが、ただの少年であるならばの話だが。


 盗賊は剣を振りぬいた。だが、手ごたえは無く、剣の重みを感じなくなった。それどころか、腕の重みすらも感じない。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 盗賊の腕が、本来あるべき場所には無かった。


「頭ァ! 腕が! 俺のッ! 腕がァ!」


 少年の首を切り落とし、高笑いをしながら再び馬車を追う。そんな未来を誰も疑わなかった。

仲間の腕が無い? 何故だ? 誰がやりやがった?

振り返って先程の少年を見ると、足元には剣を持った腕が落ちているのが見えた。剣を振ろうとした仲間の物だと、すぐにわかった。


 流石は荒くれ者どもをまとめる頭というべきか。原因がわかった瞬間、即座に引き返し。少年へと馬を走らせる。

そこには、何事もなかったかのように歩き続ける少年と、その肩では小さな狐があくびをしていたので、頭の怒りはとどまる所を知らない。


「野郎どもあのガキだ!ぶっ殺してる!」


 頭の言葉で振り返り、仲間の状態と少年の足元に落ちている腕を確認した盗賊たちも、事態を把握したのか、頭に続いて馬を走らせる。


(おーおー……なんかこっちに来たな)


 怒りに染まった形相で剣を振りかぶりながら、盗賊達がこちらに向かってくる。

その向こうの方では、相変わらず真っ青な顔色のお爺さんが、こちらを心配そうに見ている。


(今のうちに逃げればいいのになあ)


 そんなことを考えているうちに、盗賊の頭が振りかぶった剣が、ルークの顔面へと迫る。


「死ねぇぇぇぇ!」





パソコンのスペックが低すぎて重い……

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