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僕の彼女は静かで優しい女の子だった  作者: ルイ シノダ
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クリスマスは皆色々ある


柏原桃子の場合


 今日水森君も私も塾は七時半に終わる。少し遅いけどこれから夕飯を彼と一緒に食べに行く事にしている。


 本当は洋服とかお化粧とかしっかりしたかったけど、大学で授業を聞いて、塾でバイトしてでは、それも叶わない。でも塾のトイレにある洗面台で少しお化粧し直した。


 講師控室で待っていると彼が今日の授業レポートを塾長に出し終わった。

「水森君行こうか」

「あっ、はい」

「あら、二人で今日はデート」

 塾長が冗談で私達に言った。


「いえ、ちょっとだけ夕飯を一緒に」

 本当はデートと言いたいのだけど。彼は我関せずの無表情。なんか反応して欲しい。


「水森君、近くのレストラン予約してあるんだ」

「そうなんですか。すみませんね」

「ふふっ、いいの。二人でゆっくりと夕飯食べたいから」

 いつもファミレスやカウンタの食堂では寂しいから、今日は思い切ってレストランを予約した。


 予約したレストランに着くと

「へえ、素敵な洋食屋さんですね。イタリアンですか?」

「うん、何食べようか?」


「俺はこのミックスピザ食べます。あとこっちのサラダも」

「私は、ホタルイカのペペロンチーノとこのサラダ」


 注文を終えると

「嬉しいな。水森君とこういうお店で食べて見たかったんだ」

「そうなんですか。確かに普段は入れないですね。俺も嬉しいですよ」

一応社交辞令を言っておく。


「…………」

「どうしたんですか。柏原さん?」

「あの水森君お願いがあるの。聞いてくれるかな?」

「まあ、出来る事なら」

「じゃあ、今このレストランに居る時だけで良いから…。私の事桃子って呼んで」

「へっ?!い、いやいや恥ずかしいですよ」

「お願い。今だけでいいから。それ言ってくれたら今年のクリスマス一人でも過ごせる。お願い」

 顔の前に手を合わせて彼にお願いした。


 どうすればいいんだ。柏原さんを名前でも読んでも紗耶香に悪い事していないよな。一応帰ったら言っておけばいいか。

 でもこれ言ったら今年のクリスマス一人で過ごせるって…。柏原さん友達いないのかな。俺なんかより人付き合い美味そうなんだけど。でも本人がそう言うなら。



「良いですよ。桃子さん」

「…。嬉しい明人」

「えっ?!」

「だって、名前呼びして貰えるんだから、私も名前呼び」

 そういう事。やられた。もう遅いか。


 少し名前呼びしながら話が出来た。注文の品が運ばれて来てとても美味しく感じた。


 水森君から名前呼びされている。ペペロンチーノが超一級品の味に感じる。


 あっという間に二時間が過ぎた。


「あの明人。あなたともう少しお話したいんだけど」

「良いですけど」

何も考えずに返事した。


「じゃ、じゃあ。私のアパートに来る?」

「えっ、それは」

「遠慮しなくていいの。もう少し話したいけど、この時間じゃ他のお店も無いし。アルコール私達飲めないでしょ」


「いや、でも」

「明人、分かっている。一条さんの事を考えているんでしょ。でも今日だけ私を見てくれない?」

「…………」

 もう一押しで私の部屋に来て貰える。


「お願いします」

「あの、話したければこのお店でも」

「ここ二時間制なんだ。これ以上いれない」

「そうなんですか…。取敢えず出ましょうか」

「うん」

 同意してくれたのかな?


 無言のまま、私のアパートがある駅まで着いた。

「明人、降りよ」

「はい」


 彼と並んで歩いている。なるべくゆっくりと歩いた。手が偶に触れるとドキッとする。手を握ったら嫌がられるかもしれないけど…。やっぱり出来ない。仕方ないか。


 アパートの側まで来た。

「部屋、三階なんだ」

「あの柏原さん。ここまでにします。ここからは一人で帰れますよね」

「えっ!なんで?」


「ごめんなさい。柏原さんとずっと友達で居たいから」

「友達だって言っても…。一条さんに言わなければ」

「そういう事じゃないんです。気持ちは嬉しいです。でもこれからも友達で居て下さい。じゃあ俺帰ります」

「待って、明人本当にだめ。言わなければ分からないよ。お願い」

「柏原さん、ごめんなさい」


 水森君の後姿が歪んで見えた。なんで、なんで。私そんなに魅力ないの。


 そのままエレベータに乗って部屋に入った。玄関に入り後ろ手で鍵を閉めると涙が溢れ出て来た。

 

 私じゃ、駄目なのかなあ。そんなに魅力ないのかな。……水森君。


そのまま玄関を上がり寝室にあるベッドに横になった。



 柏原さんと俺のアパートのある駅は隣、直ぐにアパートに着いた。何となくだけど彼女が俺に好意を抱いているのは分かる。彼女の事は別に嫌いとかって訳じゃない。真面目だし。


 でも彼女の気持ちは受け取れない。彼女には俺なんかよりもっと相応しい人がいい。こんないい加減な男より。


 

 風呂に入ろうとするとスマホが震えた。開けて見ると京子さんからだ。


『はい』

『私京子。今部屋に居るの?』

『そうです。今から風呂に入ろうと思っていました』

『そう…。ねえ、明日会えない。遅くても良いから』

『いいですよ。でも塾があるから遅くなります。八時半位になりますけど』

『構わないわ。塾が終わったらすぐに電話して』

『分かりました』


 これは近さの特権。明人と一条さんの間で何を話されたか知らないけど、彼女の思い通りにはさせないわ。


―――――

 

 柏原さん。可哀想ですが仕方ないですね。


次回をお楽しみに

 

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 柏原はこれで終わりか。まだ何もやってないから一番平穏な気もする。
[気になる点] 何で、明人はこんなにモテるんだ?小説だからか(笑) [一言] 友達以上になるつもりはないと意思表示をしっかりしたところはよいですね。
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