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専属は強し

夜投稿になってしまった!

 「あれからもう10年が経つのね。結局一度もアルと会えなかったなぁ」


 疲れて寝ちゃってたからいつアルがいなくなったのか知らない。もう一度会えたらいいな。その時は、沢山のお礼と気持ちを込めて美味しいものを食べさせてあげたい。



 私があの夜、森の中でなんとか生きられたのはアルのお陰だった。アルには感謝しかない。


 この経験があったから私は犬を好きになったんだよね。


 でも、犬を未だに脅威として扱うこの国では飼えない。悲しいことにね。当時もお父様に飼いたいとお願いしたが許可は下りなかった。………がしかし、そんなことで私の犬に対する熱意は消えなかった。

 そして私は最近耳寄りな情報を得た。


 それは、とあるパーティーに参加した時のことだった。

 みんなが他国の服や食べ物などをはじめとした文化について情報交換しているのをぼーっと聞いていた時、1人の侯爵令嬢が隣国タリマンについての話題に触れてきた。タリマンもクラウェールと同様に資源に恵まれ、平民の生活も潤っていて非常に栄えている国だ。そこで有益な情報を耳にする。


 タリマンは犬を愛玩対象としている。それも皇族は犬の愛護を謳い3匹以上も飼っていて、貴族も平民も1家に1匹は飼っているんだとか。


 今まで他国にあまり興味を示してこなかった私には衝撃的な話だった。

 国を挙げて犬を愛するなんて羨ましい。隣国タリマンに対する強い憧れを抱いた。


 私はこの事実を聞き、すぐにピンときた。この国で飼うことがダメなら、犬を愛玩対象としているタリマンに行けばいいんじゃない?誰に反対されようともタリマンに行って犬を飼う夢を叶えたい。


 つまるところ、帝国を守る未来を託されている皇太子の婚約者になるということは、隣国へ行って犬を飼う夢が閉ざされることを意味する。そんなの嫌。皇太子妃にはなりたくない!だから、婚約者を決めるパーティーが開催される前に隣国へ向かう必要があった。


 でも、耳寄りな情報を得たあとすぐにタリマンへ行く計画を立てようと思った矢先に皇太子の婚約者を決めるパーティー日が決まったという知らせが届いたため、パーティー前に隣国へ渡ることは不可能となった。

 それからというもの、パーティーの準備で忙しくなり、計画を立てる時間はどんどん無くなった。

 もう、こうなったら目立たずパーティーをやり過ごした後にタリマンへ行くしかない。


 *******


 フィンの稽古見学の後、図書館にきた私は窓辺に座り、外に広がる空を見上げながらパーティー後にタリマンに行くための計画を練る。


 すると、図書館にドアが開かれ、奥にいる私の方に向かってバタバタと走ってくる足音が聞こえる。


 あ、逃げなきゃ………と思った頃には時すでに遅し。


 「見つけましたよ!ルビア様!」


 ズンズンと目の前まできた私の専属メイドのリヤは、腰に手を当てて、ぷんすかと怒っている。

 リヤは2年前に捨てられていたところを私が拾ってノースレッド公爵家にやってきた。


 「フィン様の稽古見学が終わったら、戻ってくるって約束してくれたじゃないですかぁ!探したんですよ?!」


 そう、実は稽古見学前に、来週に控えている帝国主催のパーティーに着ていくドレスをリヤや他のメイドたちと選んでいたのだが、あまりの試着の多さとリヤの熱意に恐怖を感じて稽古見学を口実に逃げてきたのだ。しかもこのところはもうパーティーが近いということもあって毎日毎日ドレスだの装飾品だの美しく着飾るための準備に追われている。いい加減疲れてきてしまっていた。


 リヤはいつも元気で私を癒してくれている。でも、パーティーの前はドレス選びが好きなのか熱が入りすぎてパワフルに拍車がかかる。いや、かかりすぎる。特に今回は皇太子の婚約者を決めるパーティーだ。尚更気合いが入っているみたい。

 私を美しくしてくれようとする気持ちは有難いよ?でも、皇太子になる可能性を低めたい私にはいらない準備だ。なんだったら、1番地味なドレスでお願いしたい。


 ん?っていうか、なぜリヤは私の居場所が分かったのだろうか。私がいるこの図書館内の奥の窓辺は、そうそう見つかりにくいはず。


 「リヤ、何で私がここにいるって分かったの?」


 まだノースレッド公爵家に来て2年しか経っていないリヤがなぜあまり人が来ない図書館に私が逃げ込んだと分かったのか。図書館は嫌なことから逃げる最適な場所なのに。知られたくなかった…。リヤより長くいる他のメイドだって私の逃げ場所が図書館であることを知らないはず…。だって、バレないように気を付けて来ているのだから。


 「フィン様が教えてくれたんですよ。ルビア様はおそらく図書館の窓辺に座ってるって。どこを探してもなかなか見つからなかったので、15年も一緒にいるフィン様なら分かるかもしれないと思って聞いたんです。本当にフィン様はルビア様のことなんでも知ってますよね。私も見習わないと!」


 嘘?!まさか今まで私の逃げ場所がフィンに知られてたなんて初耳。それも図書館にいることが知られているだけじゃなく、窓辺に座っていることまで…。15年も一緒にいるフィンには何でも知られているのね。嬉しいような、嬉しくないような…複雑な気分……。


 「さあ!ルビア様!試着がまだです!行きましょう!」


 「リヤ、ドレスは地味なので適当に選んでおいてくれない?」


 リヤには悪いけど、今回は絶対に目立つわけにはいかない。

 しかし、ドレス選びに消極的な私の態度を見たリヤは私に背を向けて泣き出す。


 「………。うっ、ううっ、ひっく、せっかくルビア様の綺麗な姿が見たくてっ……頑張って用意してるのに…」


 「ゔっ。ご、ごめんリヤ。あなたの気持ちはすごく嬉しいの」


 「じゃあ、ぐすっ、…ドレスの試着…してくれますか…?」


 普段元気なリヤの涙には弱い。


 「えっ、あー、ゔー…、わ、分かったから。もう泣かないで?試着するよ」


 すると、リヤは私の方に振り返って、したり顔。


 だ、騙された………。


 「リヤ…全然泣いてないじゃない……」


 「えへへっ。ルビア様言いましたね?」


 「い、今のは言葉の綾で…」


 「そんなの知りませんっ!行くって言ったら行くんですっ!」


 リヤに腕を引っ張られ連れられていく。意外にも力が強い…。


 「あぁー…助けてぇぇ……」


 誰に向けたのかも分からない訴えはむなしく空へと消えていった…。


読んで頂きありがとうございます。

今回は専属メイドのリヤが出てきました。フィンもリヤも専属は強いんです笑

ルビアの夢の話が思ったよりも長くなってしまいました…。すみません…。

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