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帝国のパーティーと皇太子

 折角、フィンの稽古姿を見てパーティーのことを忘れていたのに。思い出したくなかった。


 私が来週参加するクラウェール帝国主催のパーティーは、年に1回開催される一大イベントだ。

 年に1回の国を挙げたパーティーということもあって、貴族たちが定期的に主催するパーティーとはわけが違う。

 各国からの王族や重鎮たちが参加するため、国同士の友好関係を見せつける場となっている。貴族たちも国を超えた交流が可能となることから、家具や雑貨、衣服など自国にはない珍しい品々の取引も多くされる。


 また、帝国主催のパーティーだけあって、クラウェール中の貴族や他国の王族と重鎮たちが多く参加するため、クラウェールの貴族たちは、結婚相手探しにも必死になる。


 でも、私は珍しい品々よりも結婚相手よりもパーティーの料理に注目すべきだと思う。


 大量に出された料理は、豪勢で且つ凄く美味しい。魚料理に肉料理、野菜をメインにした料理もあって種類が豊富だ。私は特に魚料理が気に入っている。

 お城の料理は、皇族以外はこのパーティーでしか食べられない。滅多にない貴重な機会だ。私は参加する度に、まずは必ず料理に手を付ける。というか、ずっと食べてる。だって、美味しいんだもん。仕方がない。この機会を逃したら次に食べられるのは来年だよ?


 さらに、帝国主催のパーティーは、正式な社交界デビューをする場でもある。貴族たちが開くパーティーには、15歳から参加できる。しかし、正式には17歳になったら帝国主催のパーティーでデビューすることになっている。

 私は20歳だから、3年前に正式デビューしたばかりだ。


 だから、3年前にお城の料理の味を知ってしまった時は感動した。それからは、正式社交界デビューの2年目も3年目も料理を食べる目的で参加することが楽しかった。


 帝国主催のパーティーだからといって、皇族が全員毎年参加しているわけではない。皇帝陛下と皇后様は毎年参加されているようだが、ラース皇太子の姿を私は一度も見たことがない。それもそのはず、私がデビューした3年前から皇太子はパーティーに参加することをパタリとやめてしまったらしい。その理由について、多くの憶測や噂が飛び回っている。政務が忙しいだとか、女性が苦手になっただとか…。噂好きの貴族たちによる話題の展開や噂の広まりは早い。


 皇太子の容姿について、彼を見たことがある令嬢たちの話によると、帝国一の美形らしい。多くの令嬢たちは、パーティーで登場してきた彼を囲み各々自分の魅力をアピールしていたとか。


 皇太子も大変ね。美形だと尚更。パーティーに参加することが嫌になるのも頷ける。


 ある伯爵の話では、「ルビア様付きのフィン様も素敵だけど、やっぱり皇太子殿下の輝きと言ったらそれはもう凄いのです」と。

 深く青い髪は海のように冷たく、新緑色の瞳は皇族直系だけが生まれ持つもので、多くの令嬢が一度はその瞳に映りたいのだとか。


 そんな皇太子は今年22歳。


 ………。


 これが実は私にとって大問題となっている。


 皇族は22歳になる年、帝国主催のパーティーで婚約者を決める。そのため、クラウェール中の貴族令嬢は全員参加が求められる。


 ラース皇太子は今年22歳…。


 つまり、交流の場として楽しまれるいつものパーティーとは違い、来週開かれるパーティーは、皇太子の婚約者を決める帝国最重要となるイベントだということ。

 そこで、ラース皇太子は4年ぶりにパーティーに参加することが決まっている。それに伴い、令嬢たちは皇太子妃になれるチャンスを逃すまいと衣装選びやら肌のお手入れやらいつもより一層気合を入れて参加に臨むだろう。


 この国の筆頭公爵令嬢である私の参加は、ほぼ強制的である。

 ノースレッド公爵家のメイドたちも来週のパーティーへ向けて、いつも以上に私の衣装選びと肌のお手入れに力を入れ、慌ただしく過ごしている。毎日が本当に大変…。既に疲れてる。


 「はぁぁ…」


 改めてパーティーのことを考えるとため息が出る。


 正直今回のパーティーには、参加したくない。

 いつも以上にパーティーへ向けた準備を一生懸命頑張るメイドたちには申し訳ないけど、参加に後ろ向きな私にはいらない準備だ。

 しかし、筆頭公爵令嬢であるため参加は免れない。ならば、せめて地味で目立たないドレスにしてほしい。



 料理も美味しいし、皇子妃になれるチャンスがあるパーティーになぜ私が参加したくないのかって?


 そんなのは決まっている。


 皇太子妃になりたくないからだ。


 だって私には夢がある。それを叶えるためには、皇太子妃になるわけにはいかない。


読んで頂き嬉しいです。ありがとうございます。

次回はルビアの夢の話になります。

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