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知らせ

年明け初投稿です。

 こっそりと部屋に戻ってきた私は誰とも会わなかったことに安堵する。


 (間に合ってよかった。でも思ったより時間があるわ。それならリヤが来るまで隣国へ行く計画を立てないと!)


 私の本来の目的を忘れてはならない。最近はパーティーの準備から昨日まで忙しかったからなかなか計画を立てられずにいた。


 さっそく紙とペンを持って机に座り、計画を立てようとした瞬間、ドアが勢いよく開いた。


 ――バンっ!


 何事かと思って振り向くと、開いたドアの前にはお父様が息を切らして立っていた。


 デジャヴ。


 「お父様?どうしたの?こんな朝早くからそんなに慌てて息を切らして」


 「ああ…すまなかった。いきなりで、驚いただろう。と、とにかくルビア、すぐに下に降りてきなさい。話したいことがある」


 それだけ伝えにきたお父様はすぐに去ってしまった。


 昨日からお父様様子が変だわ。勢いよくドアを開けて。昨日は殿下と会って話してないか心配だったみたいだけど。今日はどうしたのか。


 「ルビア様、おはようございます!」


 「あ、リヤ!お父様にすぐに降りてくるように言われたんだけど、何かあったの?お父様すごく焦ってたし、リヤ何か知ってる?」


 「いいえ?でも、ルビア様の部屋に来るときに旦那様、確かにすごく焦っておられました。私の挨拶にも気が付かなかったようですし…」


 やはり私の部屋を出たあとも焦っていたみたいね。とにかく話を聞いてみよう。


 「分かった。降りて聞いてみるわ」



**********



 下へ降りるとお父様だけではなく、隣にお母様も一緒に座っていた。

 2人の表情は対象的だった。深刻そうな顔をしたお父様は腕を組んで静かに座り、嬉しそうな顔をしたお母様は優雅に紅茶を飲んでいる。


 「お父様、お母様」


 呼びかけると、お父様は大事な話があるんだと言い、私を目の前の席へと促す。2人の対象的な態度に戸惑い、不思議に思いつつも大人しく席に座る。


 「どうしたの?こんなに朝早くから2人揃って改まって。何かあったの??」


 「ええ!すごいお知らせよ?ほら、黙ってないであなた」


 お母様は嬉々とした様子でお父様の発言を急かす。

 それを受けたお父様は少しの沈黙の後、意を決して重い口を開く。


 「ルビア、驚かないで、聞いてくれ」


 「……はい(ごくり)」


 お父様のあまりの深刻そうな表情に緊張が走る。


 「お前と…の…が決まったんだ」


 お父様は急に声が小さくなり、大事な部分が全然聞こえなかった気がする。もう、本当にお父様変だわ。


 「ちょっとあなた、しっかりして。声が小さくてルビアに全然伝わってないわ」


 「あ、ああ…」


 また少しの沈黙の後、ようやく決意したように口を開く。


 「ルビア、お前と……殿下の婚約が決まったんだ……」


 ………。ん?今、なんて言った??


 「お父様、今誰と誰の婚約が決まったって……言いました?」


 「だから、ルビアと殿下よ!殿下がルビアのこと気に入って下さったみたいね!うふふ」


 お母様……、うふふじゃないわよ。どうしよ、まさかこんなことになるなんて。だって、あの時少ししか会話をしていない。気にいる要素なんてどこにあったのだろうか。


 「朝早くに、城から遣いが来たんだ。手紙を持って。早急に読んで欲しいとのことだった。その手紙がこれだ。」


 お父様から受け取った手紙は、装飾の美しい封筒に入っており、中の紙も上質でそこには、綺麗な字が並んでいた。


 陛下からの手紙だ。



――親愛なるダンテ。昨日は休ませてしまって、すまなかった。でもそうでもしないとなかなかラースにルビア嬢を合わせてくれなかっただろう?ラースはルビア嬢に会いたがっていたんだ。お前もそろそろ娘離れしたらどうだ?昨日は本当にお前を休ませてよかったよ。ラースも話せたみたいだし。ルビア嬢のことをひどく気に入ったようだ。

――それでだ。ここからが本題だが、ラースがルビア嬢のことを婚約者に選んだ。お前にしてみれば、大事な娘だ。戸惑う気持ちも分かるが、私も大事な息子が気に入った彼女を離したくない。すまないな。これは決定事項だと思ってくれ。近いうちにラースをそちらに寄越す。

――それとビオレッタがローズ夫人に会いたいと言っていた。手紙だけでは寂しいと。近いうち会いに来てほしいと伝えてくれ。


 読み終えた私は、婚約が決定事項という話と近いうちに殿下がいらっしゃるという話に頭が混乱していた。


 え?これは、今すぐにでも逃げないといけないんじゃないの?婚約なんてしたら、隣国で犬と楽しく暮らす私の夢が…


 「ルビア、殿下と挨拶しかしていないんじゃなかったのか?」


 昨日の帰宅後、父に殿下に挨拶だけしたと言った事実をもう一度確かめられる。


 「あー…じ、実は、ね、普段お父様が笑顔を見せないとか、メイドのドレスのモデルになってる話は少しだけしたの……。で、でも!それだけ!話した時間は本当に短かったの!」


 「でも、実際はそれで殿下はお前を気に入ってしまったんだ。お前はもっと自分の魅力を自覚してくれ…。だから殿下とお前を合わせたくなかったんだ。まったくあいつ……!こんな手紙を出すとは!殿下も余計なことを喋ってくれた」


 お父様と陛下は幼馴染ゆえ、砕けた間柄だが、イライラしてるからって流石に陛下にあいつ呼ばわりは…。


 「私も早くビオレッタに会いたいわ…!このところ忙しそうにしていたみたいだけど、やっと落ち着いたのね」


 混乱する私とイラつくお父様の横で1人嬉々としてはしゃいでいるお母様。

 皇后様とお母様は1番に心を許せる仲で、よく手紙のやり取りをしている。


 「お父様、お母様、この婚約は決定事項なのですよね…?取り消したりは……」


 「そうねぇ。決定事項だけど、どうしたの?もしかして、嬉しくないの?」


 「ええ、正直嬉しくはないの。それに……」


 「それに?」


 「ううん。なんでもない。兎に角、婚約したくない気持ちが強いの」


 隣国で犬と暮らしたいから皇太子殿下との結婚が嫌なんて言えないわ!


 「ルビア!そうだよな!嫌だよな!私は今から取り消してもらうように陛下に会ってくる!」


 そう言ってお父様は勢いよく出て行ってしまった。

読んで下さりありがとうございます!

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