帰宅後の嵐
今回は、ルビアの父ダンテとの初会話シーンが少しあります!
馬車に戻った私は、そこで待機していたフィンと一緒に家に帰る。
「ただいま」
「ルビア様ー!お帰りなさいっ!どうでした?」
私の帰りにいち早く飛び込んできたリヤが期待に満ちた顔で早速今日の感想を聞いてくる。
まったく…私が今日のパーティー嫌がってたの知ってるでしょうに。
「んー、いつも通りね」
ちょっとした仕返しのつもりで、つまらない答えを返してみた。
「えーーー、殿下と何もなかったんですか?」
リヤは私が皇太子の婚約者に選ばれることを願っているから、私と殿下とのロマンチックな出会いを期待していたのだろう。でも、実は殿下に話しかけられただなんて言えない。どこから噂が広まるか。みんな噂好きだから一瞬で屋敷中に広まるだろう。それがお父様の耳に入るとなると…。
「別に何もないよ。挨拶くらいはしたけど。殿下も他の令嬢たちに囲まれてたし。私は今回もいつも通り食事を楽しんできただけ」
「ぶーぶー、つまらないですー、せっかく気合いを入れて準備したのに。ルビア様も食べることが好きなのは分かりますが、その美しい美貌を生かしてもっと恋を楽しんで下さい。このままだと結婚できませんよ?」
正直、結婚願望は強くない。というか、別に結婚しなくてもいいと思ってる。そもそも私の幸せは、犬と暮らすことだから。そこに誰かとの結婚は必要ない。将来、行き遅れた令嬢と言われても気にしない。
私の頭の中を知らないリヤは、心配しているみたいだけど。
「ふふっ」
「もー!何笑ってるんですか!私真剣なんですよ?ルビア様に幸せになって欲しいんですから!」
「うん。ありがとう。でも私はリヤといるだけで今十分幸せだよ?」
「…ルビア様……ずるいです」
私の言葉を聞いたリヤは、涙目で私を睨んでくる。そんな顔しても可愛いだけなのに。
―――バンっ!
心の中でリヤを愛でていたら、私の部屋のドアが誰かによって勢いよく開けられた。
「――え?お、お父様?」
皇帝の最側近であるお父様は、なぜ家にいるのか。特に今日は重大なパーティーだったから、一日皇帝の元に付いていると思っていたのだけど…。
「どうして…お城にいるんじゃ…?」
「今日は私もパーティーに出席する予定だったのだが、休まされたんだ。そんなことよりルビア、どうだったんだ?ま、まさか、殿下と話してなんかいないだろうな?」
ギクッ。話しかけられちゃったよ…。というかそれ、元はと言えばお父様のせいなんだからね!
…なんてことは言えず、リヤに対してと同様に嘘を吐いてしまう。
「もー、大丈夫よ、お父様。そんなに心配しないで?殿下に迷惑かけたりなんかしないから。挨拶くらいはしたげど、別に話してないし、それに私殿下と結婚したいだなんて思ってないから」
「…そ、そうか。挨拶はしたのか………」
急に黙ってしまった。怒っているような何かを考え込んでいる様子だけど…。
「お父様…??」
「ん?ああ………。じゃあ、私は戻る。今日はもう疲れただろう、ゆっくり休みなさい」
そう言って、お父様はまだ何かを考えた様子のまま部屋を出て行ってしまった。
いきなり勢いよく来て、ぼーっとするように考えた様子で出て行ったけど大丈夫かな…?挨拶しただけとは言ったけど…。挨拶すらだめだった?それか、もしかして嘘ついたってバレてる…??
でもまあ、何も言ってこないから大丈夫だろう。
今日は殿下に話しかけられてびっくりしたけど、とにかくなんとかやり過ごせたかな。
リヤとお父様には嘘ついちゃったけど、どうせもう殿下とかかわることもないし。そんなに気にすることじゃないよね。
「ふぁ。もう眠い。今日はもう寝るわ。リヤも戻っていいよ」
リヤが部屋を出て行くのを見て、やっと1日が終わったと実感した瞬間、疲れがどっと押し寄せる。
私はだんだんと意識が途切れるように、ベッドに突っ伏して眠ってしまった。
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チュンチュン。
「ん〜」
起きた私は、両腕を上げて伸びをする。
小鳥の囀りで起きるとは、なんて優雅な朝だろう。
昨日は、大変な1日だったから今日はのんびり過ごしたい。
図書館で犬についての情報収集でもしようか。いや、まずは久しぶりにフィンの自主練でも見に行きたい。
最近は、パーティーのことがあったから忙しくて疲れていて稽古も朝練も見に行けなかった。
フィンはいつも早朝に自主練をしている。本人は、誰にも気がつかれていないと思っているのだろう。
チッチッチッ。甘いわ。
私はもう何年も前からフィンが1人で朝練をしていることを知っているんだから!
寝起きがいい私の朝はいつも早く、メイドが来る前にこっそり木の陰に隠れてフィンの朝練を覗き見る。そこで、美男子と剣を振るう勇ましさとのギャップを拝む。
(そうとなれば早速ね!見に行って戻るのが遅いと私がどこかに行ってたってリヤにバレちゃうからね)
読んで下さりありがとうございます。
ルビアは、よくメイドの目を盗んで行動します。